登記の際の漢字(外字・異体字)について【その2】

1.前の記事の内容

  1. 正字・外字・異体字(正しい漢字とは?)
  2. 「康煕字典」の役割

【前の記事:登記の際の漢字(外字・異体字)について【その1】】

2.コンピューター化と正字・異体字・外字

(1)戸籍のコンピューター化と漢字

こうした漢字の字体に関する混乱は、主としてコンピューター化の際に問題になったと認識しています。

コンピューター化に際しては、あらゆる文字を文字コードで表現しなければなりません。
当然ながら、漢字も文字コードで表現しなければなりません。

ある漢字に文字コードを割り当てる際に、字形が微妙に異なる漢字があったら、どうすれば良いのでしょうか?

(2)一例として「埼」

こうした疑問への答えとして「埼」という漢字を確認してみます。

「崎」と「﨑」は似ていますが、前者は「戸籍統一文字番号:059360」「Unicode(JIS2004) :57FC」、後者は「戸籍統一文字番号:094190」「Unicode(JIS2004):FA11」で全く別の文字として認識されています。

そして戸籍統一文字番号を確認することができる下記「検索条件入力」ページ(戸籍統一文字情報)では、「﨑」のページにおいて「崎」が親字・正字とされています。

なお、上記「使い方」のページでは用語説明がなされていますが、「親字」(なぜか「正字」の説明はされていない)の説明として「漢和辞典等で見出しとして掲げる字。」と記載されています。

「漢和辞典等」の「等」が何を指し示すのかは不明です。

(3)文字コードの割振りとジレンマ

ある漢字が「正字」であれば、その漢字には文字コードを割り振るべきだと思われます。
ある漢字が「誤字」であれば、その漢字に文字コードを割り振る必要はなく、「正字」に置き換えて考えれば良いと思われます。

しかしながら「正字か否か」という課題は、ここまで確認してきた「正しい字をどのように確認すれば良いのか」という問題に直面することになります。

では、「異体字」のときにはどうでしょうか?
すべて「正字」に置き換えるべきでしょうか?

でも、コンピューター化によって、これまで利用されてきた字体を否定して良いのでしょうか?

それって、歴史や文化の否定ではないのでしょうか?
とはいえ、すべての漢字に文字コードを振ることも困難・・・。

同じような問題意識は「常用漢字」のように、漢字の規格化をする際に起こっていたように思います。

参考記事(外部リンク)
国語施策について掲載しています。
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3.登記申請において

(1)登記情報システム

登記情報は、すでに電子情報化が行われています。

紙媒体で保管されてきた登記記録は、現在は登記情報として電子化され保管されています。

(さまざまな事情によって電子化されていない、電子化できていない登記記録もあります。)
(参照記事:改製不適合物件の登記簿(いわゆる事故簿)について)

(2)戸籍統一文字情報

登記申請の際に利用する漢字は「登記統一文字」として規格化されています。

登記統一文字情報は公開されていませんが、ほぼ同じ内容となっている戸籍統一文字情報は検索可能です。
(なぜ公開されていないのか?)

ちなみに、下記の法務省のサイトでは、「子の名に使える漢字」も確認することができます!

文字コードにも様々なものがありますが、一覧で確認するには、つぎのページが便利。

参考記事(外部リンク)
文字情報基盤のデータベース検索および情報取得を行うウェブサイトです。

4.登記業務における外字の使い方

(1)外字登録をする

一般的なパソコンで使用する文字集合に収録されている漢字は、登記統一文字情報に収録されている漢字よりも少ないです。
そのためパソコンで登記申請書等(委任状や登記原因証明情報など)を作成するにあたっては、利用したい漢字を「外字登録」する必要があります。

外字登録とは、自身が利用するパソコンに文字コードが搭載されていない文字を利用するために、当該パソコンに字形と文字コードを登録することをいいます。

文字集合の規格には、外字登録するための空きスペースが用意されており、この空きスペースを利用して、任意の字形を登録することで、何度でも利用できるようになります。
(ただし「外字入力」による入力が必要)。

(2)外字を利用する際の注意点!

あくまで自身のPCにおいてのみ利用可能な文字であるため、自身のPC以外で利用した場合には「空白」が表示されたり、最悪の場合、全く違い文字が表示されることもあります
(恐怖!)。
(複数のパソコンで利用したい場合には、外字登録を共有して対応します。)

なお、外字登録に際しては、後日の申請のことも考えて「登記統一文字」または「戸籍統一文字」における文字コードを確認し記録しておくべきです。

そうした意味では、文字情報基盤検索システムが一番利用しやすいように思います。
(ただし、正字等の判断は、戸籍統一文字情報サイトのほうが便利!)

(3)最終的には戸籍統一文字に置き換える必要がある

登記情報システムは「登記統一文字情報」に収録されている文字でないと対応できません。

外字登録して使用していた文字も、最終的には、オンラインで登記申請を行う際に登記統一文字情報の文字コードにおきかえる必要があります。

登記統一文字情報の文字コードの確認は、繰り返し紹介している「戸籍統一文字情報サイト」「文字情報基盤検索システム」が便利です。

(おまけ)文字コードからの変換

Unicodeの「7BC9」や、シフトJISの「927A」について、それぞれ文字コードを入力し、入力した文字コードを選択した状態でF5キーを押すと、コードから文字に変換することができます。

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