住宅金融支援機構に関する登記先例

1.独立行政法人住宅金融支援機構について

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以下では、独立行政法人住宅金融支援機構に関連して参照することの多い登記先例を確認していく。

2.独立行政法人住宅金融支援機構に関する登記先例

(1)平成19年3月28日民二第788号通知

住宅金融公庫及び財団法人公庫住宅融資保証協会から独立行政法人住宅金融公庫への権利及び義務の承継に伴う不動産登記事務の取扱いについて。

大量の登記が発生することになるため、事務を簡素化しようというもの。

参照条文

独立行政法人住宅金融支援機構法(平成十七年法律第八十二号)

附則
(公庫の解散並びに権利及び義務の承継等)
第三条 
住宅金融公庫(以下「公庫」という。)は、機構の成立の時において解散するものとし、その一切の権利及び義務は、次項の規定により国が承継する資産を除き、その時において機構が承継する。
2 機構の成立の際現に公庫が有する権利のうち、機構がその業務を確実に実施するために必要な資産以外の資産は、機構の成立の時において国が承継する。
3 前項の規定により国が承継する資産の範囲その他当該資産の国への承継に関し必要な事項は、政令で定める。
(・・・)

掲題先例における通知事項を一部だけ抜粋すると、つぎのとおり。

  • 担保権の移転登記申請時に必要となる登記原因証明情報は、上記附則3条1項により明らかであるから添付不要。
  • 上記申請につき、理事長の資格証明情報は、任命につき官報公告されるため、添付不要。
  • 公庫名義の担保権抹消にあたり、代理人への代理権限証書については、公庫の代理権限証書でも機構の代理権限証書でも、どちらでもOK。

本筋とは関係ないが、移転に伴う登録免許税については、つぎのとおり。

参照条文

租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)

(独立行政法人等の権利又は資産の承継に伴う登記等の免税)
第八十四条の三 
独立行政法人住宅金融支援機構が独立行政法人住宅金融支援機構法附則第三条第一項及び第六条第三項の規定により権利を承継する場合又は資産を承継する場合におけるこれらの承継に伴う権利又は資産に係る登記又は登録については、登録免許税を課さない。
(・・・)

(2)平成21年11月2日民二第2641号通知

こちらも大量の登記を処理するために大変だからというもの。
それにしても、凄まじい件数である。

【上記先例の一部を要約】

(機構からの照会)
機構が保有する債権は平成21年7月末現在で約293万件あり、担保権抹消登記だけでも年間約30万件という膨大な量となるため、登記関係書類すべてに押印を行うのは事務手続上困難を極めるところです。
そこで、原則として、機構が作成する不動産登記申請関係書類への代表者印又は代理人印の押印に代えて、当該印鑑の印影を機構が業務上使用する電子計算機に登録し、この印影を当該不動産登記申請関係書類に印刷したものを提出させていただきたい。

⇒(法務局からの回答)いいよ。

印影をプリントしたもので良いというもの。
押印の意味について考えさせられる通達であった。

(3)令和4年6月17日民二第639号通知

事務効率化の観点から、保険代位又は代位弁済を原因とする「金融機関から機構への抵当権の一部移転登記の申請」について、委任状を書面作成から電磁的記録作成(理事長が電子署名)に変更する旨。

この点もさることながら、下記についても注目。

【上記先例の一部を要約】

(機構からの照会)
本件委任状は登記原因が発生する前にあらかじめ機構で作成し金融機関に送付する必要があることから、その委任状に記載する作成日については、登記の原因日付よりも前となる電子署名を行う日としたい。
このように登記原因日付よりも前の日付で作成されたとしても、その委任内容が具体性・特定性に欠けるものでないと解される場合には、委任状として有効と考えてよいか?

⇒(法務局からの回答)いいよ。

本件通知については登記研究893号111頁に解説付きで掲載されているが、「3検討(1)不動産登記における委任日について」は非常に参考となる。

3.(おまけ)登記原因日付より前の日付での委任状について

(1)登記原因日付より前の日付での委任

上記2(3)のとおり可。

(2)登記原因日付が特定できていない状況での前日付での委任の可否【未検討】

不動産売買において、決済日(所有権移転の日)は確定していないけれど、その他の登記事項は確定している。
在外等の理由で事前に委任状を作成しなければならないケースで、登記原因日付を特定していない委任が可能であるか?

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