宗教法人と所有権移転登記(旧宗教法人)

2017年6月2日

1.旧宗教法人とは

(1)この法律施行の際現に存する宗教法人令の規定による宗教法人

参照条文

宗教法人法(昭和二十六年四月三日法律第百二十六号)

附則

3  この法律施行の際現に存する宗教法人令の規定による宗教法人は、この法律施行後も、同令の規定による宗教法人として存続することができる。

4  第二項に掲げる命令の規定は、前項の宗教法人(以下「旧宗教法人」という。)については、この法律施行後も、なおその効力を有する。(・・・)。

5  旧宗教法人は、この法律中の宗教法人の設立に関する規定(・・・)に従い、規則を作成し、その規則について所轄庁の認証を受け、設立の登記をすることに因つて、この法律の規定による宗教法人(以下「新宗教法人」という。)となることができる。

 なお宗教法人法は、附則第1条より「公布の日から施行」となっており、昭和26年4月3日が施行日である。

(2)旧宗教法人から新宗教法人への変更

「変更」という表現が正しくないかもしれないが、旧宗教法人が、新宗教法人となる要件は、つぎのとおり。

  1. 宗教法人法に従った規則の作成
  2. 所轄庁(文部科学大臣or都道府県知事)の認証
  3. 設立の登記

規則の作成については、つぎの条文を参照。

参照条文

宗教法人法(昭和二十六年法律第百二十六号)

(設立の手続)
第十二条 
宗教法人を設立しようとする者は、左に掲げる事項を記載した規則を作成し、その規則について所轄庁の認証を受けなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 設立しようとする宗教法人を包括する宗教団体がある場合には、その名称及び宗教法人非宗教法人の別
五 代表役員、責任役員、代務者、仮代表役員及び仮責任役員の呼称、資格及び任免並びに代表役員についてはその任期及び職務権限、責任役員についてはその員数、任期及び職務権限、代務者についてはその職務権限に関する事項
六 前号に掲げるものの外、議決、諮問、監査その他の機関がある場合には、その機関に関する事項
七 第六条の規定による事業を行う場合には、その種類及び管理運営(同条第二項の規定による事業を行う場合には、収益処分の方法を含む。)に関する事項
八 基本財産、宝物その他の財産の設定、管理及び処分(第二十三条但書の規定の適用を受ける場合に関する事項を定めた場合には、その事項を含む。)、予算、決算及び会計その他の財務に関する事項
九 規則の変更に関する事項
十 解散の事由、清算人の選任及び残余財産の帰属に関する事項を定めた場合には、その事項
十一 公告の方法
十二 第五号から前号までに掲げる事項について、他の宗教団体を制約し、又は他の宗教団体によつて制約される事項を定めた場合には、その事項
十三 前各号に掲げる事項に関連する事項を定めた場合には、その事項
2 宗教法人の公告は、新聞紙又は当該宗教法人の機関紙に掲載し、当該宗教法人の事務所の掲示場に掲示し、その他当該宗教法人の信者その他の利害関係人に周知させるに適当な方法でするものとする。
3 宗教法人を設立しようとする者は、第十三条の規定による認証申請の少くとも一月前に、信者その他の利害関係人に対し、規則の案の要旨を示して宗教法人を設立しようとする旨を前項に規定する方法により公告しなければならない。

(成立の時期)
第十五条 
宗教法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることに因つて成立する。

2.旧宗教法人から新宗教法人への包括承継

(1)包括承継

参照条文

宗教法人法

附則

18  旧宗教法人が第五項又は第六項の規定により新宗教法人となつたときは、その設立の登記をした日において、当該旧宗教法人は解散し、その権利義務(・・・)は、新宗教法人が承継する。(・・・)。

というわけで、合併同様に、権利義務が旧宗教法人から新宗教法人に包括承継される。

宗教法人が所有する不動産については、次の点をチェックする必要があるのか?

  • 宗教法人が所有権を取得した日
  • 昭和26年4月3日との前後関係
  • 宗教法人の「設立」の日

(2)所有権移転登記(登記原因:~権利承継)

不動産を所有していた場合には、登記原因「年月日宗教法人法附則第18項の権利承継」として所有権移転登記をおこなうことに。

(手元にある登記情報だと、単に「承継」となっている。。。)

(3)登録免許税

カウンター相談が存在する(登記研究572号81頁『カウンター相談(61)』)。
内容は原本確認のこと。

なお関連条文はつぎのとおり。

参照条文

登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)

(公共法人等が受ける登記等の非課税)
第四条 
国及び別表第二に掲げる者が自己のために受ける登記等については、登録免許税を課さない。
2 別表第三の第一欄に掲げる者が自己のために受けるそれぞれ同表の第三欄に掲げる登記等(同表の第四欄に財務省令で定める書類の添附があるものに限る旨の規定がある登記等にあつては、当該書類を添附して受けるものに限る。)については、登録免許税を課さない。

別表第三 非課税の登記等の表(第四条関係)

名称根拠法非課税の登記等備考
十二 宗教法人宗教法人法(昭和二十六年法律第百二十六号)一 専ら自己又はその包括する宗教法人の宗教の用に供する宗教法人法第三条【境内建物及び境内地の定義】に規定する境内建物の所有権の取得登記又は同条に規定する境内地の権利の取得登記
二 自己の設置運営する学校(学校教育法第一条(学校の範囲)に規定する幼稚園に限る。)の校舎等の所有権の取得登記又は当該校舎等の敷地、当該学校の運動場、実習用地その他の直接に保育若しくは教育の用に供する土地の権利の取得登記
三 自己の設置運営する保育所若しくは家庭的保育事業等の用に供する建物の所有権の取得登記又は当該建物の敷地その他の直接に保育の用に供する土地の権利の取得登記
四 自己の設置運営する認定こども園の用に供する建物の所有権の取得登記又は当該建物の敷地その他の直接に保育若しくは教育の用に供する土地の権利の取得登記
第三欄の第一号から第四号までのいずれかの登記に該当するものであることを証する財務省令で定める書類の添付があるものに限る。
参照条文

登録免許税法施行規則(昭和四十二年大蔵省令第三十七号)

第四条 
法別表第三の十二の項の第四欄に規定する財務省令で定める書類は、次の各号に掲げる登記の区分に応じ当該各号に定める書類とする。
一 法別表第三の十二の項の第三欄の第一号に掲げる登記 その登記に係る不動産が同号に規定する不動産に該当する旨を証する当該不動産の所在地を管轄する都道府県知事(地方自治法第二百五十二条の十七の二第一項(条例による事務処理の特例)の規定により宗教法人に係る事務を市町村が処理する場合にあつては、当該市町村の長)の書類
二 法別表第三の十二の項の第三欄の第二号に掲げる登記 その登記に係る不動産が同号に規定する不動産に該当する旨を証する当該不動産に係る同号に規定する学校を所管する都道府県知事(地方自治法第二百五十二条の十七の二第一項の規定により当該学校に係る事務を市町村が処理する場合にあつては、当該市町村の長)の書類
三 法別表第三の十二の項の第三欄の第三号に掲げる登記 次に掲げる登記の区分に応じそれぞれ次に定める書類
イ 保育所の用に供する不動産に係る登記 第二条第二号イに定める書類
ロ 家庭的保育事業等の用に供する不動産に係る登記 第二条第二号ロに定める書類
四 法別表第三の十二の項の第三欄の第四号に掲げる登記 第二条第三号に定める書類

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