目次
1.道路運送法について
(1)法律の目的
道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)
(目的)
第一条
この法律は、貨物自動車運送事業法(平成元年法律第八十三号)と相まつて、道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものとし、並びに道路運送の分野における利用者の需要の多様化及び高度化に的確に対応したサービスの円滑かつ確実な提供を促進することにより、輸送の安全を確保し、道路運送の利用者の利益の保護及びその利便の増進を図るとともに、道路運送の総合的な発達を図り、もつて公共の福祉を増進することを目的とする。
貨物自動車運送事業法とセットとなって、道路運送事業の適正化を図る。
運送に関する規定のみかと思ったら「自動車道事業」に関する規定も含まれている。
(2)定義
道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)
第二条
この法律で「道路運送事業」とは、旅客自動車運送事業、貨物自動車運送事業及び自動車道事業をいう。
2 この法律で「自動車運送事業」とは、旅客自動車運送事業及び貨物自動車運送事業をいう。
3 この法律で「旅客自動車運送事業」とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して旅客を運送する事業であつて、次条に掲げるものをいう。
4 この法律で「貨物自動車運送事業」とは、貨物自動車運送事業法による貨物自動車運送事業をいう。
5 この法律で「自動車道事業」とは、一般自動車道を専ら自動車の交通の用に供する事業をいう。
6 この法律で「自動車」とは、道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)による自動車をいう。
7 この法律で「道路」とは、道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路及びその他の一般交通の用に供する場所並びに自動車道をいう。
8 この法律で「自動車道」とは、専ら自動車の交通の用に供することを目的として設けられた道で道路法による道路以外のものをいい、「一般自動車道」とは、専用自動車道以外の自動車道をいい、「専用自動車道」とは、自動車運送事業者(自動車運送事業を経営する者をいう。以下同じ。)が専らその事業用自動車(自動車運送事業者がその自動車運送事業の用に供する自動車をいう。以下同じ。)の交通の用に供することを目的として設けた道をいう。
自動車運送事業 | (1)旅客自動車運送事業 | 他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して旅客を運送する事業 |
(2)貨物自動車運送事業 | 貨物自動車運送事業法による貨物自動車運送事業 【参考:貨物自動車運送事業法2条4項:他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車に限る。)を使用して貨物を運送する事業】 |
道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)
(種類)
第三条
旅客自動車運送事業の種類は、次に掲げるものとする。
一 一般旅客自動車運送事業(特定旅客自動車運送事業以外の旅客自動車運送事業)
イ 一般乗合旅客自動車運送事業(乗合旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)
ロ 一般貸切旅客自動車運送事業(一個の契約により国土交通省令で定める乗車定員以上の自動車を貸し切つて旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)
ハ 一般乗用旅客自動車運送事業(一個の契約によりロの国土交通省令で定める乗車定員未満の自動車を貸し切つて旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)
二 特定旅客自動車運送事業(特定の者の需要に応じ、一定の範囲の旅客を運送する旅客自動車運送事業)
旅客自動車運送事業 | 一般旅客自動車運送事業 | 一般乗合旅客自動車運送事業 |
一般貸切旅客自動車運送事業 【道路運送法施行規則第三条の二:法第三条第一号ロの国土交通省令で定める乗車定員は、11人とする。】 | ||
一般乗用旅客自動車運送事業 【上記により、定員10人未満の自動車】 | ||
特定旅客自動車運送事業 | 特定の者の需要に応じ、一定の範囲の旅客を運送する旅客自動車運送事業 |
(3)事業の許可
道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)
(一般旅客自動車運送事業の許可)
第四条
一般旅客自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。
2 一般旅客自動車運送事業の許可は、一般旅客自動車運送事業の種別(前条第一号イからハまでに掲げる一般旅客自動車運送事業の別をいう。以下同じ。)について行う。
2.一般旅客自動車運送事業と合併・分割に関する規定
(1)条文
道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)
(事業の譲渡及び譲受等)
第三十六条
一般旅客自動車運送事業の譲渡及び譲受は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 一般旅客自動車運送事業者たる法人の合併及び分割は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。ただし、一般旅客自動車運送事業者たる法人と一般旅客自動車運送事業を経営しない法人が合併する場合において一般旅客自動車運送事業者たる法人が存続するとき又は一般旅客自動車運送事業者たる法人が分割をする場合において一般旅客自動車運送事業を承継させないときは、この限りでない。
3 第六条の規定は、前二項の認可について準用する。
4 一般旅客自動車運送事業者たる法人の合併又は分割があつたときは、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人又は分割により一般旅客自動車運送事業を承継した法人は、許可に基づく権利義務を承継する。
(2)整理
認可が効力要件となっている!!
【原則】
一般旅客自動車運送事業者たる法人の合併及び分割は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
【例外:認可不要のケース】
- 一般旅客自動車運送事業者たる法人と一般旅客自動車運送事業を経営しない法人が合併する場合において一般旅客自動車運送事業者たる法人が存続するとき。
- 一般旅客自動車運送事業者たる法人が分割をする場合において一般旅客自動車運送事業を承継させないとき。
(3)特定旅客自動車運送事業の場合
道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)
(特定旅客自動車運送事業)
第四十三条
特定旅客自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。
(・・・)
9 特定旅客自動車運送事業の譲渡又は特定旅客自動車運送事業者について合併、分割(当該事業を承継させるものに限る。)若しくは相続があつたときは、当該事業を譲り受けた者又は合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人、分割により当該事業を承継した法人若しくは相続人は、第一項の許可に基づく権利義務を承継する。
10 前項の規定により第一項の許可に基づく権利義務を承継した者は、その承継の日から三十日以内に、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。
3.登記との関係
(1)先例(一般貨物自動車運送事業について)
平成5年8月20日民四第5554号通知
【要旨】
合併登記申請の際には、認可書又は「認可を要しない旨の証明書」のいずれかを添付させる。
ただし、登記情報上当該事業を目的としている法人と当該事業を目的としていない法人が合併する場合において、当該事業を目的とする法人が存続するときには、認可書又は「認可を要しない旨の証明書」の添付は要しない。
貨物自動車運送事業法(平成元年法律第八十三号)
(事業の譲渡し及び譲受け等)
第三十条
一般貨物自動車運送事業の譲渡し及び譲受けは、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 一般貨物自動車運送事業者たる法人の合併及び分割は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。ただし、一般貨物自動車運送事業者たる法人と一般貨物自動車運送事業を経営しない法人が合併する場合において一般貨物自動車運送事業者たる法人が存続するとき又は一般貨物自動車運送事業者たる法人が分割をする場合において一般貨物自動車運送事業を承継させないときは、この限りでない。
3 第五条及び第六条の規定は、前二項の認可について準用する。
4 第一項の認可を受けて一般貨物自動車運送事業を譲り受けた者又は第二項の認可を受けて一般貨物自動車運送事業者たる法人が合併若しくは分割をした場合における合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人若しくは分割により一般貨物自動車運送事業を承継した法人は、第三条の許可に基づく権利義務を承継する。
(2)整理
合併消滅会社が、事業許可を受けている法人の場合には、認可書が必要となる。
合併消滅会社が、事業目的への記載はあるが事業許可を受けていない法人(実際に事業を行っていない法人)の場合には、「認可を要しない旨の証明書」を添付する。
(3)おまけ
なお、現在削除されている道路運送法39条は、道路運送法制定当時、次のような規定であった。
「 (法人の解散)
第四十二条 自動車運送事業者たる法人の解散の決議又は総社員の同意は、運輸大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 前条【事業の休止及び廃止】第二項及び第四項の規定は、前項の認可について準用する。」
おそろしい話である・・・。
なお参考として銀行法。
銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)
(廃業及び解散等の認可)
第三十七条
次に掲げる事項は、内閣総理大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
一 銀行業の廃止に係る定款の変更についての株主総会の決議
二 銀行を全部又は一部の当事者とする合併(第三十条第一項に規定する合併及び金融機関の合併及び転換に関する法律第三条(合併)の規定による合併に該当するものを除く。)
三 銀行の解散についての株主総会の決議
(・・・)