家事事件手続法と不動産登記の単独申請

2016年5月31日

1.共同申請の原則

まずは大原則。

不動産登記法

第六十条

権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。 

第六十三条

第六十条(・・・)の規定にかかわらず、これらの規定により申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる。 

不動産登記令(平成十六年十二月一日政令第三百七十九号)

第七条

登記の申請をする場合には、次に掲げる情報をその申請情報と併せて登記所に提供しなければならない。

五  権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる情報

ロ 登記原因を証する情報。(・・・)。

(1)

法第六十三条第一項 に規定する確定判決による登記を申請するとき

執行力のある確定判決の判決書の正本(執行力のある確定判決と同一の効力を有するものの正本を含む。以下同じ。) 

権利に関する登記は、共同申請(登記官に対して「特定の登記を求める意思表示」をすること)が原則。

相手方が、登記申請に協力しない場合には、強制的に申請させる。

登記申請の意思の表示は、「意思表示をすべきことを債務者に命ずる判決その他の裁判が確定」したことによりなされる。

従って、その正本を、自らが単独で行う登記申請に添える(登記官への意思表示)ことで、両名の申請が揃う。

=実質的には共同申請とさして変わらない。

(本来相手方が為すべき、登記申請意思が判決等で正しく表現されている必要がある。そのため、判決による登記に関する、ややこしい、いろいろな論点が生まれてくる。。。)

2.本日の本題

前記でいうところの「登記手続をすべきことを命ずる確定判決」は具体的に何を指すのかというところ。

これも前記不動産登記令にて、その意味は「執行力のある確定判決と同一の効力を有するものの正本を含む」と拡張されています。

家事事件手続法では、このような記載ぶりに。

家事事件手続法(平成二十三年五月二十五日法律第五十二号)

第七十五条

金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずる審判は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。 

第二百六十八条

調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、確定判決(・・・)と同一の効力を有する。 

「確定判決と同一の効力」と記載されていれば、文言としてつながるのだが。。。

審判と判決の違いに起因するということでしょうか(このあたりは勉強不足、確認不足。)。

債務名義については、次の条文を参照。

民事執行法(昭和五十四年三月三十日法律第四号)

第百七十四条

意思表示をすべきことを債務者に命ずる判決その他の裁判が確定し、又は和解、認諾、調停若しくは労働審判に係る債務名義が成立したときは、債務者は、その確定又は成立の時に意思表示をしたものとみなす。ただし、債務者の意思表示が、債権者の証明すべき事実の到来に係るとき(・・・)執行文が付与された時に意思表示をしたものとみなす。

 参考までに、

民事執行法(昭和五十四年三月三十日法律第四号)

第二十二条

強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。

五  金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)