目次
1.株式会社の解散
(1)条文
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(解散の事由)
第四百七十一条
株式会社は、次に掲げる事由によって解散する。
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 株主総会の決議
四 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 第八百二十四条第一項又は第八百三十三条第一項の規定による解散を命ずる裁判
(清算の開始原因)
第四百七十五条
株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。
一 解散した場合(第四百七十一条第四号に掲げる事由によって解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)
二 設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合
三 株式移転の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合
(清算株式会社の能力)
第四百七十六条
前条の規定により清算をする株式会社(以下「清算株式会社」という。)は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。
(2)解散の登記
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(解散の登記)
第九百二十六条
第四百七十一条第一号から第三号まで又は第六百四十一条【持分会社について】第一号から第四号までの規定により会社が解散したときは、二週間以内に、その本店の所在地において、解散の登記をしなければならない。
「第四百七十一条第一号から第三号」というのは、あらためて確認すると、つぎのとおり。
- 一 定款で定めた存続期間の満了
- 二 定款で定めた解散の事由の発生
- 三 株主総会の決議
なお471条5号については、破産法に次のとおり定めがある。
破産法(平成十六年法律第七十五号)
(法人の破産手続に関する登記の嘱託等)
第二百五十七条
法人である債務者について破産手続開始の決定があったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、破産手続開始の登記を当該破産者の本店又は主たる事務所の所在地を管轄する登記所に嘱託しなければならない。(・・・)
2 前項の登記には、破産管財人の氏名又は名称及び住所、破産管財人がそれぞれ単独にその職務を行うことについて第七十六条第一項ただし書の許可があったときはその旨並びに破産管財人が職務を分掌することについて同項ただし書の許可があったときはその旨及び各破産管財人が分掌する職務の内容をも登記しなければならない。
2.解散の登記と登記記録の抹消
(1)解散に関する商業登記法の規定を確認
商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)
(解散の登記)
第七十一条
解散の登記において登記すべき事項は、解散の旨並びにその事由及び年月日とする。
2 定款で定めた解散の事由の発生による解散の登記の申請書には、その事由の発生を証する書面を添付しなければならない。
(・・・)
(2)抹消を記録すべき事項
商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)
(解散等の登記)
第七十二条
会社法第四百七十一条(第四号及び第五号を除く。)又は第四百七十二条【休眠会社のみなし解散】第一項本文の規定による解散の登記をしたときは、次に掲げる登記を抹消する記号を記録しなければならない。
一 取締役会設置会社である旨の登記並びに取締役、代表取締役及び社外取締役に関する登記
二 特別取締役による議決の定めがある旨の登記及び特別取締役に関する登記
三 会計参与設置会社である旨の登記及び会計参与に関する登記
四 会計監査人設置会社である旨の登記及び会計監査人に関する登記
五 監査等委員会設置会社である旨の登記、監査等委員である取締役に関する登記及び重要な業務執行の決定の取締役への委任についての定款の定めがある旨の登記
六 指名委員会等設置会社である旨の登記並びに委員、執行役及び代表執行役に関する登記
2 前項の規定は、設立の無効又は株式移転の無効の登記をした場合について準用する。
営利事業を遂行するための機関については、解散の登記と同時に抹消記号が記録される。
なお、監査役等に関する登記については、抹消記号は記録されない。
解散前に監査役設置会社であった場合には、解散前の監査役が清算手続き中も監査役になるとされる【参照:ハンドブック4版P.522】。
清算株式会社の機関設計については、つぎのとおり。
会社法(平成十七年法律第八十六号)
第一目 株主総会以外の機関の設置
第四百七十七条
清算株式会社には、一人又は二人以上の清算人を置かなければならない。
2 清算株式会社は、定款の定めによって、清算人会、監査役又は監査役会を置くことができる。
3 監査役会を置く旨の定款の定めがある清算株式会社は、清算人会を置かなければならない。
4 第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった時において公開会社又は大会社であった清算株式会社は、監査役を置かなければならない。
5 第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった時において監査等委員会設置会社であった清算株式会社であって、前項の規定の適用があるものにおいては、監査等委員である取締役が監査役となる。
6 第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった時において指名委員会等設置会社であった清算株式会社であって、第四項の規定の適用があるものにおいては、監査委員が監査役となる。
7 第四章第二節【株主総会以外の機関の設置】の規定は、清算株式会社については、適用しない。
3.株式譲渡制限規定との関係(取締役会の承認)
(1)譲渡制限規定
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(株式の内容についての特別の定め)
第百七条
株式会社は、その発行する全部の株式の内容として次に掲げる事項を定めることができる。
一 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。
二 当該株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。
三 当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。
2 株式会社は、全部の株式の内容として次の各号に掲げる事項を定めるときは、当該各号に定める事項を定款で定めなければならない。
一 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること 次に掲げる事項
イ 当該株式を譲渡により取得することについて当該株式会社の承認を要する旨
ロ 一定の場合においては株式会社が第百三十六条【株主からの承認の請求】又は第百三十七条【株式取得者からの承認の請求】第一項の承認をしたものとみなすときは、その旨及び当該一定の場合
(・・・)
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(株式会社の設立の登記)
第九百十一条
株式会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければならない。
一 第四十六条第一項の規定による調査が終了した日(設立しようとする株式会社が指名委員会等設置会社である場合にあっては、設立時代表執行役が同条第三項の規定による通知を受けた日)
二 発起人が定めた日
(・・・)
3 第一項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
(・・・)
七 発行する株式の内容(種類株式発行会社にあっては、発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容)
(・・・)
ただし、譲渡制限規定については「発行する株式の内容」欄ではなく「株式の譲渡制限に関する規定」欄に記録される。
(2)譲渡承認機関が「取締役会」のときに同時に登記しなくても良いの?
頻出(?)論点である。
「解散登記」が記録される場合、「取締役会設置会社である旨の登記」には抹消記号が職権により記録される。
そうであるならば、解散の登記申請と同時に、譲渡制限規定の変更を登記(前提として変更決議)しなければいけないのではないか?
この点については、参考文献の引用も含め、つぎが参考になる。
【参考:神﨑満治郎 (編集), 金子登志雄 (編集), 鈴木龍介 (編集)『商業・法人登記500問』テイハン (2023/7/7)P.370】
なお、上記において言及されている登記情報541号26頁については「Q5」(p.28とりわけ(注)4)の箇所を参考に。
また、ハンドブック4版においてはp.520及びp.381。