目次
1.株式会社の解散
(1)解散事由
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(解散の事由)
第四百七十一条
株式会社は、次に掲げる事由によって解散する。
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 株主総会の決議
四 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 第八百二十四条第一項又は第八百三十三条第一項の規定による解散を命ずる裁判
一般的には、「株主総会の決議」による解散が多いと思う。
(2)将来の一定期日において解散する旨の株主総会決議の可否
令和5年3月30日開催の株主総会決議において、令和5年4月30日付にて解散することを決議することは可能なのだろうか?
昭和34年10月29日民事甲第2371号民事局長回答
【要旨】
株式会社が株主総会において即時の解散をなさず、その期日を総会開催の日から「3日後」とする期限付きの解散決議をした。
当該決議に基づく解散登記申請の受理の可否。
⇒受理して良いよ!
(登記の猶予期間が2週間だから、それくらいなら期限付きの解散決議を認めても弊害はないでしょ。)
2.始期付解散決議に反対する意見
「存続期間」や「解散の事由」については、定款でこれを定め、かつ登記事由とされている。
にもかかわらず、期限付きの解散決議を認めてしまっては、「存続期間」や「解散の事由」を定款記載事項かつ登記事項とした法の趣旨を破る(「脱法行為だ!」)というのが、反対意見。
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(株式会社の設立の登記)
第九百十一条
株式会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければならない。
(・・・)
3 第一項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
(・・・)
四 株式会社の存続期間又は解散の事由についての定款の定めがあるときは、その定め
(・・・)
3.始期付解散決議に賛成する意見(ただし合理的な期間内)
一方で、株主総会の決議は、法令・定款に違反しない限り、期限や条件を付すことができる。
そして、解散決議についても、合理的な期間であれば、そうした決議を認めても良いというのが賛成意見。
最判 昭和37年3月8日(民集第16巻3号473頁)
株主総会の決議の効力の発生を条件または期限にかからしめることは、法律の規定、趣旨または条理に反しない限り、原則として許されると解すべき
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=56207
個人的には、株主総会決議が整えば会社は「突然」に解散してしまうものなのだから、公示にこだわる必要がないような気もするのですが(債権者保護手続きもあるわけだし。)。
4.改めて先例を確認すると(2週間以内?)
先例では、登記の猶予期間が2週間だから、それくらいなら期限付きの解散決議を認めても良いとの見解。
なお、取締役の予選については、つぎのような先例がある。
(なお、予選取締役による代表取締役の予選の可否については触れない。)
昭和41年1月20日民事甲第271号民事局長回答
【要旨】
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=56207
昭和40年6月開催の定時株主総会において取締役全員を予選(任期満了は昭和40年8月)し、予選取締役全員が重任を承諾した。
予選日の同日に、取締役会を開催し、代表取締役を予選し、予選代表取締役が重任を承諾した。
以上の前提で、取締役・代表取締役の重任登記の申請があったが受理されるのか?
⇒
株主総会については、その招集期間を考慮すると2ヶ月くらいの期間を設けることはOK。
取締役会については、常時開催が原則という性格から考えて、1カ月くらいならOKかな。
(詳細は登記研究 221号46頁以下の解説を読むべし!)
なお、今回は始期付解散決議について検討したが、条件付解散決議はダメなのかなと、検討している中で感じた。
いつ解散時期が到来するかわからないし、それこそ「解散事由」を定めていると考えるため。