商業・法人登記における原本還付

2023年4月1日

1.条文

(1)商業登記規則と参考のための不動産登記規則

参照条文

商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)

(添付書類の還付)
第四十九条 
登記の申請人は、申請書に添付した書類の還付を請求することができる。
2 書類の還付を請求するには、登記の申請書に当該書類と相違がない旨を記載した謄本をも添付しなければならない。ただし、登記の申請が却下された場合において、書類の還付を請求するには、還付請求書に当該書類と相違がない旨を記載した謄本を添付し、これを登記所に提出しなければならない。
3 登記官は、書類を還付したときは、その謄本、登記の申請書又は還付請求書に原本還付の旨を記載して押印しなければならない。
4 代理人によつて第一項の請求をするには、申請書にその権限を証する書面を添付しなければならない。
5 第九条の四第四項から第六項までの規定は、第一項の規定による添付書類の還付の請求に準用する。

(印鑑カードの交付の請求等)
第九条の四
(・・・)
4 第一項の規定により印鑑カードの交付を請求する場合において、その送付を求めるときは、送付に要する費用を納付しなければならない。
5 前項の場合においては、送付に要する費用は、郵便切手又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者(以下「信書便事業者」と総称する。)による同条第二項に規定する信書便(以下「信書便」という。)の役務に関する料金の支払のために使用することができる証票であつて法務大臣の指定するもので納付しなければならない。
6 前項の指定は、告示してしなければならない。

参照条文

不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)

(添付書面の原本の還付請求)
第五十五条 
書面申請をした申請人は、申請書の添付書面(磁気ディスクを除く。)の原本の還付を請求することができる。ただし、令第十六条第二項、第十八条第二項若しくは第十九条第二項又はこの省令第四十八条第三号(第五十条第二項において準用する場合を含む。)若しくは第四十九条第二項第三号の印鑑に関する証明書及び当該申請のためにのみ作成された委任状その他の書面については、この限りでない。
2 前項本文の規定により原本の還付を請求する申請人は、原本と相違ない旨を記載した謄本を提出しなければならない。
3 登記官は、第一項本文の規定による請求があった場合には、調査完了後、当該請求に係る書面の原本を還付しなければならない。この場合には、前項の謄本と当該請求に係る書面の原本を照合し、これらの内容が同一であることを確認した上、同項の謄本に原本還付の旨を記載し、これに登記官印を押印しなければならない。
4 前項後段の規定により登記官印を押印した第二項の謄本は、登記完了後、申請書類つづり込み帳につづり込むものとする。
5 第三項前段の規定にかかわらず、登記官は、偽造された書面その他の不正な登記の申請のために用いられた疑いがある書面については、これを還付することができない。
6 第三項の規定による原本の還付は、申請人の申出により、原本を送付する方法によることができる。この場合においては、申請人は、送付先の住所をも申し出なければならない。
7 前項の場合における書面の送付は、同項の住所に宛てて、書留郵便又は信書便の役務であって信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うものによってするものとする。
8 前項の送付に要する費用は、郵便切手又は信書便の役務に関する料金の支払のために使用することができる証票であって法務大臣が指定するものを提出する方法により納付しなければならない。
9 前項の指定は、告示してしなければならない。

(2)原本還付の方法

「申請書に添付した書類」は全て還付することができる。

  • 登記の申請書に、原本と一緒に「当該書類と相違がない旨を記載した謄本(コピー)」を添付して提出する。
  • 代理人により原本還付するときには、その権限を証する書面の添付が必要(登記委任状に記載すれば良く、通常はそのようにする。)
  • 不動産登記と異なり、送付の方法による原本還付を求めるときに「送付先の住所をも申し出」る必要はない。

細かなところで、不動産登記と違う(なぜだろう・・)。

2.先例

(1)先例

昭和24年12月26日民事甲第3027号回答の要旨

申請書受付登記完了後左記のような場合は該申請書の附属書類の交換ができますか?

(回答)
登記完了後は交換ダメ!

昭和52年11月4日民四第5546号回答

商業法人登記申請書に添付すべき議事録の還付を請求する場合においては、当該書類と相違がない旨を記載した謄本を添付しなければならないこととされておりますが、申請人の負担の軽減及び事務合理化の見地から、右謄本に代え、当該登記申請に不必要な部分の謄写を省略した抄本を添付した場合でも、便宜原本還付の取扱いをしても差し支えないと考えますがいかがでしようか?

(回答)
貴見のとおり!

昭和35年9月26日民事甲第1110号

会社の新株発行による変更登記申請書に、申請人たる代表取締役が認証した左のような抜すいした定款の一部を添付して申請があつた場合、受理してさしつかえないか。
【「左のように」は記載省略】

(回答)
受理できない!

(2)「定款か議事録か」「定款か、それ以外か」

2つめの先例(謄本ではなく、当該登記申請に不必要な部分の謄写を省略した抄本でもOK!)については、これを「議事録」に限定する考え方と、添付書類一般の原則とする考え方(筧 康生他:詳解商業登記【全訂第3版】(きんざい)P222は原則OK派?)があるように思う。

定款については、3つめの先例がバッチリくるので、原本還付にあたっては謄本を提出すべし。
(なお、登記研究794号35頁参照。神﨑先生の反対(?)意見。)

3.認可書はどうすれば?

認可書は、一般的に大部なものが多く、原本還付にあたり抄本の提出でOKとしてもらいたい!

上記2の先例(昭和35年と昭和52年)の読み方によるのか。
とりあえず、「詳解商業登記」を添付して提出してみようか・・。

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