目次
1.条文の確認
不動産登記規則(平成十七年二月十八日法務省令第十八号)
(添付情報の省略等)
第三十七条
同一の登記所に対して同時に二以上の申請をする場合において、各申請に共通する添付情報があるときは、当該添付情報は、一の申請の申請情報と併せて提供することで足りる。
2 前項の場合においては、当該添付情報を当該一の申請の申請情報と併せて提供した旨を他の申請の申請情報の内容としなければならない。
(登記研究716・135以下が詳しい。しかも、読みやすく、わかりやすい。)
2.要件を整理
(1)満たすべき要件
- 同一の登記所
- 同時に二以上の申請
- 各申請に共通する添付情報
- 併せて提供した旨を他の申請の申請情報の内容
その趣旨は、
(1)登記官にとっては、一つの添付情報があれば内容を確認出来る。
(2)申請者にとっては、同一内容の添付情報を複数添付する手間が省ける。
という点にある。
一方、「同時の申請であること」を要件として、
(1)登記官にとっては、円滑かつ迅速に添付情報を確認出来るようにする(あっちこっち探さなくても良い)。
(2)申請者にとっては、意図しないところで添付情報が援用されることを防ぐ。
としている。
(2)「同時の(・・・)申請」
「同時の(・・・)申請」は、同一番号での申請の意味であるのか?
連件申請ではダメなのか?
↓
厳密に考えると、「同一番号」に限るようにも読めるが、そんなことはない。
連件申請についてみとめても、条文の趣旨にも「同時申請」を要求した理由にも反するものではないから。
(むしろ同時に申請して同一番号ってどんなケースがあるのだろう?)
(3)同一の申請人でなければならない?
【1】AからBへの所有権移転登記と、AからCへの所有権移転登記を同時(連件)で申請する場合にAの印鑑証明書を援用することの可否
「申請人が同一」であることを要件とすると、援用は不可となるが、先例上「可」とされている。
昭和35年1月22日民事三発81号
照会:不動産登記申請書の添付書類の援用について例えば印鑑証明書又は資格を証する書面を甲、乙間の売買登記の申請書に添付のものを、甲、丙又は甲、丁間の売買登記申請書あるいは抵当権設定登記申請書に援用することの可否
回答:同時に申請する場合にかぎり援用してさしつかえない
【2】Aの住所変更とBの住所変更を連件で申請する場合で、AとBが同一世帯であるときに、世帯全員の住民票を一方の申請に添付して別件では援用することの可否
不可とされている(登記研究514・193)。
とはいえ、登記研究716・135以下では、私見との断りがあるものの、可としている。
【3】同一の遺産分割協議書で、相続人Aと相続人Bがそれぞれ別の不動産を承継する場合に、A申請の相続登記とB申請の相続登記を連件で申請する際、遺産分割協議書等(相続を証する書面)を一方の申請に添付して別件では援用することの可否
可とされている(登記研究209・67)。【2】との相違としては、相続を証する書面が大部となることを考慮し、特に要件を緩やかにしたものとされている。
3.同じ役割の添付情報でなければならない?
印鑑証明書については、印鑑証明書として添付することはもちろん、住所証明情報として添付することも認められている。
このように、ある書面が、各申請で異なる役割をはたす(添付根拠が異なる)ときに、添付省略して援用することができるか?
上記条文の趣旨から考えると、援用可であると思えますし、登記研究716・135以下の解説も積極的なように読めますが、実務的には消極(コピーをつけて原本還付。還付不可であれば不可。)であると感じています。
同時申請とされた理由である「登記官にとっては、円滑かつ迅速に添付情報を確認出来るようにする」を重視しているということでしょうか。
(1)所有権移転登記に添付した印鑑証明書を、住所変更または更正登記の住所証明書として援用することの可否
昭和48年1月29日民三817にて可。
なお昭和32年6月27日民事甲1220(所有権保存登記に添付した印鑑証明書を、後件の抵当権設定登記の印鑑証明書として援用することを不可とするもの)については、登記研究716・138以下の解説を参照。
「前提登記」と「終局登記」という考え方も参考となる。
(2)保存登記の住所証明情報を、住所変更登記の登記原因証明情報として援用することの可否
先例は確認出来なかった。