1.区分所有法の確認
区分所有者は、規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。
しかも、この債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人(さいたる例が、売買による買主。)に対しても請求することができる。
建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年四月四日法律第六十九号)
(先取特権)
第七条
区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。
2 前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。
3 民法第三百十九条の規定は、第一項の先取特権に準用する。
(選任及び解任)
第二十五条
区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。
2 管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。
(権限)
第二十六条
管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
2 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
3 管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
4 管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
5 管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。
(成立等)
第四十七条
第三条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる。
2 前項の規定による法人は、管理組合法人と称する。
3 この法律に規定するもののほか、管理組合法人の登記に関して必要な事項は、政令で定める。
4 管理組合法人に関して登記すべき事項は、登記した後でなければ、第三者に対抗することができない。
5 管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生ずる。
6 管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
7 管理組合法人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
(・・・)
(区分所有者の団体)
第三条
区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。
民法(明治二十九年法律第八十九号)
(先取特権の内容)
第三百三条
先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
(一般の先取特権)
第三百六条
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
一 共益の費用
二 雇用関係
三 葬式の費用
四 日用品の供給
(共益費用の先取特権)
第三百七条
共益の費用の先取特権は、各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の保存、清算又は配当に関する費用について存在する。
2 前項の費用のうちすべての債権者に有益でなかったものについては、先取特権は、その費用によって利益を受けた債権者に対してのみ存在する。
(即時取得の規定の準用)
第三百十九条
第百九十二条【即時取得】から第百九十五条までの規定は、第三百十二条から前条までの規定による先取特権について準用する。
2.管理費や修繕積立金の位置づけ
国土交通省がHP上で掲載しているマンション管理規約をみればわかるように、管理費や修繕積立金は、規約上で、区分所有者に管理組合に対する納入が義務づけられています。
従って、管理費及び修繕積立金は前記区分所有法第7条の債権に該当します。
これにより、規約第26条の有無にかかわらず、区分所有法第8条から、区分所有者に対する債権(管理費・修繕積立金)を、特定承継人に対して請求することができるのです。
マンション管理について(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html
マンション標準管理規約(単棟型)
第25条
区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなければならない。
一 管理費
二 修繕積立金第26条
管理組合が管理費等について有する債権は、区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。
建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)
(特定承継人の責任)
第八条
前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。
3.買主Aが売主Bの管理費滞納を知らなかった場合
Aが売買によりマンションをBから購入した。
その際、Bが管理費等を滞納していた事実をAは知らず、入居後、マンション管理組合より滞納されていた管理費等の支払いを求められた。
上記のケースでは、すでに確認した1と2より、AはBの滞納した管理費の支払い義務を承継することとなります。
もちろん、仮にAが滞納したBの管理費等を支払った場合、Bに対して求償できるのですが、Bから回収できるかどうかは不透明です(むしろ滞納者からの回収は困難であるケースが多いでしょう。)。
Aについては、そんな不測の事態におちいることのないよう、売主あるいは仲介業者から説明をうけることが重要です(Aがマンション管理組合に直接照会しても、組合が回答することは不可であるように思います。)。
とくに仲介業者に対しては重要事項説明において、滞納状況について説明すべき義務がかされています。
(国交省から発出された下記通達を参照。)
宅地建物取引業法(昭和二十七年六月十日法律第百七十六号)
(重要事項の説明等)
第三十五条 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
(・・・)
六 当該建物が建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)第二条第一項に規定する区分所有権の目的であるものであるときは、当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容、同条第四項に規定する共用部分に関する規約の定めその他の一棟の建物又はその敷地(一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又はこれに関する権利がそれらの建物の所有者の共有に属する場合には、その土地を含む。)に関する権利及びこれらの管理又は使用に関する事項で契約内容の別に応じて国土交通省令・内閣府令で定めるもの
宅地建物取引業法施行規則(昭和三十二年建設省令第十二号)
(法第三十五条第一項第六号の国土交通省令・内閣府令で定める事項)
第十六条の二
法第三十五条第一項第六号の国土交通省令・内閣府令で定める事項は、建物の貸借の契約以外の契約にあつては次に掲げるもの、建物の貸借の契約にあつては第三号及び第八号に掲げるものとする。
一 当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容
二 建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号。以下この条、第十六条の四の三、第十六条の四の六及び第十九条の二の五において「区分所有法」という。)第二条第四項に規定する共用部分に関する規約の定め(その案を含む。次号において同じ。)があるときは、その内容
三 区分所有法第二条第三項に規定する専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めがあるときは、その内容
四 当該一棟の建物又はその敷地の一部を特定の者にのみ使用を許す旨の規約(これに類するものを含む。次号及び第六号において同じ。)の定め(その案を含む。次号及び第六号において同じ。)があるときは、その内容
五 当該一棟の建物の計画的な維持修繕のための費用、通常の管理費用その他の当該建物の所有者が負担しなければならない費用を特定の者にのみ減免する旨の規約の定めがあるときは、その内容
六 当該一棟の建物の計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う旨の規約の定めがあるときは、その内容及び既に積み立てられている額
七 当該建物の所有者が負担しなければならない通常の管理費用の額
八 当該一棟の建物及びその敷地の管理が委託されているときは、その委託を受けている者の氏名(法人にあつては、その商号又は名称)及び住所(法人にあつては、その主たる事務所の所在地)
九 当該一棟の建物の維持修繕の実施状況が記録されているときは、その内容
宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方
(平成13年1月6日付け国土交通省総合政策局不動産業課長から各地方支分部局主管部長あて通達)6 修繕積立金等について(規則第16条の2第6号関係)
規則第16条の2第6号は、いわゆる大規模修繕積立金、計画修繕積立金等の定めに関するものであり、一般の管理費でまかなわれる通常の維持修繕はその対象とはされないこととする。
また、当該区分所有建物に関し修繕積立金等についての滞納があるときはその額を告げることとする。ここでいう修繕積立金等については、当該一棟の建物に係る修繕積立金積立総額及び売買の対象となる専有部分に係る修繕積立金等を指すものとする。
なお、この積立て額は時間の経緯とともに変動するので、できる限り直近の数値(直前の決算期における額等)を時点を明示して記載することとする。7 管理費用について(規則第16条の2第7号関係)
「通常の管理費用」とは、共用部分に係る共益費等に充当するため区分所有者が月々負担する経常的経費をいい、規則第16条の2第6号の修繕積立金等に充当される経費は含まれないものとする。
また、管理費用についての滞納があればその額を告げることとする。
なお、この「管理費用の額」も人件費、諸物価等の変動に伴い変動するものと考えられるので、できる限り直近の数値を時点を明示して記載することとする。
