夫婦の間で居住用の不動産を贈与すること(配偶者控除の利用について)

2016年8月4日

1.概要

贈与税の課税の際に、

(1)婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、(2)居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、(3)基礎控除110万円のほかに(4)最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。

この特例の適用を受けるためには、贈与税の申告をすることが必要となります。

詳細は、下記の国税庁HPをご参照。

No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|贈与税|国税庁

2.必要な書類

(1)の事実を証明するために、戸籍が必要となります。

なお戸籍は、「財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後」に作成されたものである必要があります。

そのため、贈与をした年の翌年に行う、贈与税申告の際に取得すればOKということになります。

(2)の事実を証明するために、戸籍の附票住民票の写しが必要となります。

戸籍の附票については、戸籍同様に、「財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後」に作成されたものである必要があります。

住民票の写しについては、居住用不動産に住んだ日以後に作成されたものである必要があります。

さらに、居住用不動産の登記事項証明書固定資産評価証明書(金銭贈与の場合は不要。)も必要です。

詳細は、下記の国税庁HPをご参照。

No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|贈与税|国税庁

3.留意点

(1)不動産取得税について

この特例により控除を受けることができるのは「贈与税」です。

一方で、不動産の贈与を行った際には「不動産取得税」がかかることとなります。

居住用不動産については、不動産取得税についても軽減特例がありますが、課税関係を忘れずにチェックする必要があります。

(ちなみに、相続による取得の場合は不動産取得税は非課税です。)

(2)登録免許税について

登記の名義を配偶者名義に変更するために、登録免許税が必要となります。

贈与については、不動産の固定資産税評価額の2%となります。

(ちなみに、贈与ではなく相続の場合は0.4%となります。)

(3)相続制度を利用した方が優位?

以上の通り、税金の面から見ると、贈与ではなく相続を利用したほうが一見有利にみえます。

とはいえ、税金上も贈与した方が良いケースもありますし、税金のことはさておき現段階で贈与すべきケースもあります。

結論としては、配偶者控除を利用して生前に贈与するか、あるいは相続制度を利用するかを検討する必要があります。

ポイントは、

贈与の仕組み、または相続の仕組みを利用した場合に、全体としてどれほどの税金がかかるのかを比較すること。

①を検討した上で、現段階で贈与してしまうか、相続の際に名義を移してOKとするかを決めること。

もちろん、相続の際に対応するとした場合には、遺言等の手当を追加で検討することも忘れてはなりません。