目次
1.登記しなければならない理由
(1)「資産の総額」が登記事項
組合等登記令(昭和三十九年政令第二十九号)
(適用範囲)
第一条
別表の名称の欄に掲げる法人(以下「組合等」という。)の登記については、他の法令に別段の定めがある場合を除くほか、この政令の定めるところによる。
別表(第一条、第二条、第六条、第七条の二、第八条、第十四条、第十七条、第二十条、第二十一条の三関係)
名称 | 根拠法 | 登記事項 |
・・・ | ・・・ | ・・・ |
医療法人 | 医療法(昭和二十三年法律第二百五号) | 資産の総額 医療法第四十六条の三の六において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第四十七条の二に規定する電子提供措置をとる旨の定めがあるときは、その定め |
上記「組合等」に医療法人が含まれる。組合等登記令の別表の2段目を参照。
さらに同表で、医療法人における追加的登記事項として「資産の総額」が明記。
(2)決算確定による登記事項の変更
各年度における決算の確定により、登記事項に変更が生じることとなるから。
組合等登記令(昭和三十九年三月二十三日政令第二十九号)
第三条
組合等において前条第二項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その主たる事務所の所在地において、変更の登記をしなければならない。
(・・・)
3 第一項の規定にかかわらず、資産の総額の変更の登記は、毎事業年度末日現在により、当該末日から三月以内にすれば足りる。
決算は、総会での承認で確定すると考え、1項の規定どおりで良いのではないかと思っていたのですが、変更日は事業年度末日となるので3項の規定が必要なのでしょうか。
「資産の総額」の定義については先例あり(昭和39年8月15日民事甲2860「資産から負債を差引いた純資産」)。
また、つぎのような先例も参照。
【金額がマイナスの時】
昭和54年2月10日民四第838号回答「金0円(債務超過額金○○円)」
2.資産の総額の変更を証する書面
財産目録または貸借対照表が該当する。
財産目録とは、具体的には、医療法51条に規定される「事業報告書等」の一書類。
「事業報告書等」は、最終的に都道府県知事(または政令指定都市の長)に提出される。
医療法(昭和二十三年七月三十日法律第二百五号)
第五十一条
医療法人は、毎会計年度終了後二月以内に、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書その他厚生労働省令で定める書類(以下「事業報告書等」という。)を作成しなければならない。
2 理事は、事業報告書等を監事に提出しなければならない。
第五十二条
医療法人は、厚生労働省令で定めるところにより、毎会計年度終了後三月以内に、次に掲げる書類を都道府県知事に届け出なければならない。
一 事業報告書等
二 監事の監査報告書
三 第五十一条第三項の社会医療法人にあつては、公認会計士等の監査報告書
であれば、必ず財産目録は作成されているはずで、これを添付書類にすれば良いと思うのですが、千円単位で作成されている場合があり、その場合には利用できない。
参照:静岡県の医療法人における財産目録の記載例(「(様式2)財産目録」を参照)
http://www2.pref.shizuoka.jp/all/sinsei.nsf/04.html/03AEE3E88626B73D49256A0100423A69
(千円単位になっています)
なお、財産目録または貸借対照表のいずれについても、理事長あるいは監事の原本証明が必要。
監事で良しとされるのは、医療法51条において提出を受けるからか。
3.決算承認の議事録が必要?
(1)不要だと思うが・・
「Q&A 法人登記の実務 医療法人」(第2版)P122には、決算承認がなされた社員総会議事録が必要と記載されている。普段、添付していないのだが。。。
法務局の記載例をみてみると、役員変更と一緒に記載例が掲載されており、そうなると当然、社員総会議事録も添付されており。。。
ちなみに社会福祉法人については、資産の総額の変更のみの記載例が掲載されており、こちらはやはり、社員総会議事録の添付は求められていなかった。
実体的に考えると、決算確定は承認をもってということになるのだろうが、理事長あるいは監事のみの証明でも充分といえるような気がしないでもない。
(2)法務局掲載の書式例
医療法人(理事長の重任/資産の総額の変更)
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html#6-14
社会福祉法人(資産の総額)
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html#6-7
厚生労働省HPの定款例
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000135127.pdf
第 12 条
本社団の決算については、事業報告書、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下「事業報告書等」という。)を作成し、監事の監査、理事会の承認及び社員総会の承認を受けなければならない。
ちなみに
会社法(平成十七年七月二十六日法律第八十六号)第四百三十八条
次の各号に掲げる株式会社においては、取締役は、当該各号に定める計算書類及び事業報告を定時株主総会に提出し、又は提供しなければならない。
(・・・)
2 前項の規定により提出され、又は提供された計算書類は、定時株主総会の承認を受けなければならない。