目次
1.商号変更による通常の株式会社への移行
(1)特例有限会社に対する会社法の制約
会社法の施行にともない、旧有限会社法は廃止となった。
旧有限会社法の規定による有限会社については、会社法施行後は、会社法の規定による株式会社として存続することになった。
ただし、この有限会社については、例として次のような制限が「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」によって設けられている。
- 有限会社という文字を用いなければならない(株式会社という文字は使用不可)【整備法3条】
- 株式の譲渡制限の定めに関する特則につき、整備法9条1項の定めと異なる内容の定めを設ける定款変更ができない。【整備法9条】
- 特別決議の要件が加重(総株主の半数以上、かつ議決権の4分の3以上。)【整備法14条3項】
- 吸収合併存続会社や吸収分割承継会社になれない。【整備法37条】
(2)商号変更により通常の「株式会社」へ!
有限会社が通常の株式会社となるためには、「商号中に株式会社という文字を用いる商号の変更」という定款変更の手続きをすればよい。
会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第八十七号)
(株式会社への商号変更)
第四十五条
特例有限会社は、第三条第一項の規定にかかわらず、定款を変更してその商号中に株式会社という文字を用いる商号の変更をすることができる。
2 前項の規定による定款の変更は、次条の登記(本店の所在地におけるものに限る。)をすることによって、その効力を生ずる。
なお、この変更の効力は、整備法46条の登記をすることで発生する。
定款変更であるから特別決議となる。
そして有限会社の特別決議の要件については、つぎのとおり。
会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第八十七号)
(株主総会に関する特則)
第十四条
(・・・)
3 特例有限会社の株主総会の決議については、会社法第三百九条第二項中「当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二」とあるのは、「総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の四分の三」とする。
2.商号変更による移行の手続き
(1)手続きの流れ
通常の株式会社への移行は、商号変更の手続きではあるものの、登記手続き上は次のような手続きを行う。
会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第八十七号)
(特例有限会社の通常の株式会社への移行の登記)
第四十六条
特例有限会社が前条第一項の規定による定款の変更をする株主総会の決議をしたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、当該特例有限会社については解散の登記をし、同項の商号の変更後の株式会社については設立の登記をしなければならない。この場合においては、会社法第九百十五条【変更の登記】第一項の規定は、適用しない。
- 特例有限会社については解散の登記
- 商号の変更後の株式会社については設立の登記
たんに商号変更をするのではなく、解散と設立の登記を申請する必要がある。
(2)移行による登記と取締役の任期について
(3)移行による登記の添付書類
【解散の登記】
- 登記の事由:商号変更による解散
- 登録免許税:3万円
- 添付書類:不要
【設立の登記】
- 登記の事由:年月日【変更決議の日】商号変更による設立
- 登録免許税:資本金の額の1000分の1.5(商号変更前の資本金の額を超過する部分については1000分の7)。これが3万円に満たない場合には、3万円。
- 添付書類:以下のとおり。
- 定款
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 委任状
- (このほか、商号以外の事項につき変更をする場合、各変更に伴う添付書類が必要となる。)
(たとえば取締役の選任・退任がある場合には、辞任届・就任承諾書などなど。)
3.移行による変化
(1)株式会社としての義務の発生
- 取締役等の任期に関する規定が適用される。
- 決算公告の義務付けがなされる。
- 休眠会社のみなし解散に関する規定が適用される。
(2)登記事項の変化
特例有限会社の場合、取締役1名の場合には、代表取締役の登記はなされない。
株式会社に移行することで、取締役1名の場合であっても、重ねて代表取締役としての登記がなされることになる。