以下、条文は特段表記がない限り、会社法(平成十七年七月二十六日法律第八十六号)。
1.基本(会社法の条文はどうなっているのか)
(1)会社法336条
第三百三十六条
監査役の任期は、選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2 前項の規定は、公開会社でない株式会社において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない
3 第一項の規定は、定款によって、任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとすることを妨げない。
4 (・・・)
第三百三十二条
取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
2 前項の規定は、公開会社でない株式会社(・・・)において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない
(・・・)
(2)原則として短縮は不可。ただし・・・
2項記載のとおり、任期を短縮することはできない(取締役との比較)。
取締役の場合には「ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。」とされている。
ただし、短縮禁止の例外として3項は、補欠監査役(「任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役」)の任期を、前任監査役の任期満了予定まで短縮することを認めている。
2.補欠監査役
「補欠監査役」という言葉は、「任期満了前に退任した者の後任者(広義の補欠)」という意味と、「前任者の残存任期に任期が短縮される後任者(狭義の補欠)」という意味で利用される(ハンドブックP438参照)。
本稿では狭義の補欠の意味で利用し、また予選についても検討対象外。
というわけで、任期満了前に退任する監査役が発生し、その後任を選任する場面を念頭に置く。
以上の前提で、「補欠監査役」となる要件は、
(1)定款の定め
(2)前任者の補欠として選任されること
(3)補欠として選任されたことが株主総会(議事録)で明示されていること。
なお、登記申請の際、選任時において定款添付は不要であり、退任時も総会議事録に「任期満了」と記載されていれば任期を証するために選任時の総会議事録を添付する必要はない(ハンドブックP452注のなお書きも参照)。
3.会社法以前の取扱い
これが本題。従前は次の先例に従って考えられていた。
昭和36年8月14日民事甲2016号回答
質問 取締役、監査役全員が辞任した場合、新たに取締役および監査役を選任してこれらを補充することも補欠選挙と解し、新任取締役および監査役の任期は前任取締役および監査役の残存期間として、取り扱って差し支えないか。
会社の定款には「取締役の任期は2年、監査役の任期は1年とする。ただし、補充または増員により就任したる取締役および監査役の任期は前任者の残存期間とする。」と定められている。
回答 新任者の任期間は前任者の残存任期間とみるべきでない。
ほかの参考文献を直接確認出来なかったが、補欠規定は、あくまで「監査役同士の任期を揃えるため」のものと考えられていたようだ。
そのため、1名の監査役が任期途中で退任した場合や、複数の監査役全員が同時に任期途中で退任した場合には、監査役同士の任期調整をする必要がないため補欠規定の適用が否定されていた(役員全員の任期調整という視点はなかった。。)、とのこと。
ちなみに旧商法の規定はこちら。
第二百七十三条
3 前二項ノ規定ハ定款ヲ以テ任期ノ満了前ニ退任シタル監査役ノ補欠トシテ選任セラレタル監査役ノ任期ヲ退任シタル監査役ノ任期ノ満了スベキ時迄ト為スコトヲ妨ゲズ