1.条文
(1)条文
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(監査役の資格等)
第三百三十五条
第三百三十一条第一項及び第二項並びに第三百三十一条の二の規定は、監査役について準用する。
2 監査役は、株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役を兼ねることができない。
3 監査役会設置会社においては、監査役は、三人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならない。
(取締役の資格等)
第三百三十一条
次に掲げる者は、取締役となることができない。
一 法人
二 削除
三 この法律若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)の規定に違反し、(・・・)、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
四 前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
2 株式会社は、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができない。ただし、公開会社でない株式会社においては、この限りでない。
第三百三十一条の二
成年被後見人が取締役に就任するには、その成年後見人が、成年被後見人の同意(後見監督人がある場合にあっては、成年被後見人及び後見監督人の同意)を得た上で、成年被後見人に代わって就任の承諾をしなければならない。
2 被保佐人が取締役に就任するには、その保佐人の同意を得なければならない。
3 第一項の規定は、保佐人が民法第八百七十六条の四第一項の代理権を付与する旨の審判に基づき被保佐人に代わって就任の承諾をする場合について準用する。この場合において、第一項中「成年被後見人の同意(後見監督人がある場合にあっては、成年被後見人及び後見監督人の同意)」とあるのは、「被保佐人の同意」と読み替えるものとする。
4 成年被後見人又は被保佐人がした取締役の資格に基づく行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。
(会計参与の資格等)
第三百三十三条
(・・・)
3 次に掲げる者は、会計参与となることができない。
一 株式会社又はその子会社の取締役、監査役若しくは執行役又は支配人その他の使用人
二 業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者
三 税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)第四十三条の規定により同法第二条第二項に規定する税理士業務を行うことができない者
条文タイトルは「資格等」になっている。
- 1項:資格や欠格事由について
- 2項:兼任の禁止
(2)兼任の禁止について
「監査役は、株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(・・・)若しくは執行役を兼ねることができない。」という箇所。
監査する者と監査される者が同一であっては、監査の意味をなさないので。
この点については、判例がでている。
詳細は、次項を参照。
- 監査役に選任された者が就任を承諾したときは、監査役との兼任が禁止される従前の地位を辞任したものと解すべき。
- 仮に従前の地位を辞任しなかったとしても、監査役の任務懈怠となるにとどまり、監査役選任決議の効力に影響を及ぼすものではない。
2.兼任の禁止に関連する判例
(1)最判平成元年9月19日
以下抜粋
株式会社の監査役は会社又は子会社の取締役又は支配人その他の使用人を兼ねることができないものとされているが(商法二七六条)、監査役に選任される者が兼任の禁止される従前の地位を辞任することは、株主総会の監査役選任決議の効力発生要件ではない。(・・・)監査役に選任された者が就任を承諾したときは、監査役との兼任が禁止される従前の地位を辞任したものと解すべきであるが、仮に監査役就任を承諾した者が事実上従前の地位を辞さなかったとしても、そのことは、監査役の任務懈怠による責任(商法二七七条、二八〇条一項、二六六条ノ三第一項)の原因となりうるのは格別、総会の選任決議の効力に影響を及ぼすものではない
(2)最判昭和62年4月21日
原審の判断を是認。
東京高判昭和61年6月26日では、筆者の勝手な要約ではあるが、次のように判断している。
【要約】
自己監査(いままで自身が取締役や使用人として行ってきた業務を、今度は、監査役として監査すること。)が望ましいものとはいえない。とはいえ、条文上は、この程度は許容されているものと解すべきであり、自己監査の有無も含めて、株主総会が当該候補者が監査役に適任であるかを判断することになる。
横滑り選任の場合には、タイミングによっては、新たに就任した監査役が「いままで自身が取締役として行っていた業務」をチェックする役割につくことになる。
「監査する者と監査される者が同一であっては監査の意味をなさない」というのが兼任禁止規定の趣旨であるから、横滑りもダメなのではないかと考えられる。
「そうはいってもね」というのが、上記裁判例。
