目次
1.社会福祉法人の登記
(1)社会福祉法
社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)
(定義)
第二十二条
この法律において「社会福祉法人」とは、社会福祉事業を行うことを目的として、この法律の定めるところにより設立された法人をいう。
(名称)
第二十三条 社会福祉法人以外の者は、その名称中に、「社会福祉法人」又はこれに紛らわしい文字を用いてはならない。
社会福祉法人は「社会福祉事業」を行うことを目的とした法人。
社会福祉事業とは、法2条において定義されている。
本旨からは外れるので、一部のみ抜粋すると、つぎのとおり。
- 「社会福祉事業」とは、第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業をいう
- 第一種社会福祉事業
たとえば老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)に規定する養護老人ホーム、特別養護老人ホーム又は軽費老人ホームを経営する事業 - 第二種社会福祉事業
たとえば老人福祉法に規定する老人居宅介護等事業、老人デイサービス事業、老人短期入所事業、小規模多機能型居宅介護事業、認知症対応型老人共同生活援助事業又は複合型サービス福祉事業及び同法に規定する老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、老人福祉センター又は老人介護支援センターを経営する事業
- 第一種社会福祉事業
(2)組合等登記令
組合等登記令(昭和三十九年政令第二十九号)
(適用範囲)
第一条 別表の名称の欄に掲げる法人(以下「組合等」という。)の登記については、他の法令に別段の定めがある場合を除くほか、この政令の定めるところによる。
名称 | 根拠法 | 登記事項 |
社会福祉法人 | 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号) | 資産の総額 |
社会福祉法人の登記については、組合等登記令が適用される。
(3)各種法人等登記規則
各種法人等登記規則(昭和三十九年法務省令第四十六号)
(趣旨)
第一条 会社、一般社団法人及び一般財団法人、投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第十二項に規定する投資法人並びに資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第二条第三項に規定する特定目的会社を除くその他の法人(以下「各種法人」という。)並びに外国会社を除くその他の外国法人(以下「各種外国法人」という。)の登記の取扱手続は、この省令の定めるところによる。
社会福祉法人の登記については、各種法人等登記規則が適用される。
2.社会福祉法人の設立
(1)社会福祉法
社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)
(申請)
第三十一条
社会福祉法人を設立しようとする者は、定款をもつて少なくとも次に掲げる事項を定め、厚生労働省令で定める手続に従い、当該定款について所轄庁の認可を受けなければならない。
一 目的
二 名称
三 社会福祉事業の種類
四 事務所の所在地
五 評議員及び評議員会に関する事項
六 役員(理事及び監事をいう。以下この条、次節第二款、第六章第八節、第九章及び第十章において同じ。)の定数その他役員に関する事項
七 理事会に関する事項
八 会計監査人を置く場合には、これに関する事項
九 資産に関する事項
十 会計に関する事項
十一 公益事業を行う場合には、その種類
十二 収益事業を行う場合には、その種類
十三 解散に関する事項
十四 定款の変更に関する事項
十五 公告の方法
2 (・・・)
3 設立当初の役員及び評議員は、定款で定めなければならない。
4 設立しようとする社会福祉法人が会計監査人設置社会福祉法人(会計監査人を置く社会福祉法人又はこの法律の規定により会計監査人を置かなければならない社会福祉法人をいう。以下同じ。)であるときは、設立当初の会計監査人は、定款で定めなければならない。
5 第一項第五号の評議員に関する事項として、理事又は理事会が評議員を選任し、又は解任する旨の定款の定めは、その効力を有しない。
6 第一項第十三号に掲げる事項中に、残余財産の帰属すべき者に関する規定を設ける場合には、その者は、社会福祉法人その他社会福祉事業を行う者のうちから選定されるようにしなければならない。
(機関の設置)
第三十六条
社会福祉法人は、評議員、評議員会、理事、理事会及び監事を置かなければならない。
2 社会福祉法人は、定款の定めによつて、会計監査人を置くことができる。
医療法と比較すると「定款について認可」という記載になっている!
(医療法44条「医療法人は、その主たる事務所の所在地の都道府県知事(・・・)の認可を受けなければ、これを設立することができない。」)
社会福祉法人における機関設計は、つぎのとおり。
- 評議員
- 評議員は、社会福祉法人の適正な運営に必要な識見を有する者のうちから、定款の定めるところにより、選任される。
- 評議員は7人以上。
- 評議員の任期は、選任後四年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時まで(ただし定款により最大6年まで伸長可能)。
- 評議員会
評議員会は全ての評議員で組織され、法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。 - 理事
- 理事長及び「理事長以外の理事であつて、理事会の決議によつて社会福祉法人の業務を執行する理事として選定されたもの」が、社会福祉法人の業務を執行する。
- 理事は6人以上。
- 任期は、選任後二年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時まで。
- 理事会
全ての理事で組織され、理事長の選定及び解職のほか、法45条の13で定められた職務を行う。 - 監事
- 理事の職務の執行を監査する。
- 2人以上。
- 任期は、選任後二年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時まで。
- 会計監査人
- 社会福祉法人の計算書類及びその附属明細書を監査する。
- 任期は、選任後一年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時まで。
なお、「役員」とは理事及び監事を指す。
また、モデル定款において、評議員の選定については、つぎのように規定されている。
(評議員の選任及び解任)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13318.html「社会福祉法人定款例」より
第六条
この法人に評議員選任・解任委員会を置き、評議員の選任及び解任は、評議員選任・解任委員会において行う。
2 評議員選任・解任委員会は、監事○名、事務局員○名、外部委員○名の合計○名で構成する。
3 選任候補者の推薦及び解任の提案は、理事会が行う。評議員選任・解任委員会の運営についての細則は、理事会において定める。
4 選任候補者の推薦及び解任の提案を行う場合には、当該者が評議員として適任及び不適任と判断した理由を委員に説明しなければならない。
5 評議員選任・解任委員会の決議は、委員の過半数が出席し、その過半数をもって行う。ただし、外部委員の○名以上が出席し、かつ、外部委員の○名以上が賛成することを要する。
(2)社会福祉法施行規則
社会福祉法施行規則(昭和二十六年厚生省令第二十八号)
(設立認可申請手続)
第二条
法第三十一条の規定により、社会福祉法人を設立しようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書及び定款を所轄庁に提出しなければならない。
一 設立者又は設立代表者の氏名及び住所
二 社会福祉法人の名称及び主たる事務所の所在地
三 設立の趣意
四 評議員となるべき者及び役員(法第三十一条第一項第六号に規定する役員をいう。以下同じ。)となるべき者の氏名
五 評議員となるべき者のうちに、他の各評議員となるべき者について、第二条の七第六号に規定する者(同号括弧書に規定する割合が三分の一を超えない場合に限る。)、同条第七号に規定する者(同号括弧書に規定する半数を超えない場合に限る。)又は同条第八号に規定する者(同号括弧書に規定する割合が三分の一を超えない場合に限る。)がいるときは、当該他の各評議員の氏名及び当該他の各評議員との関係を説明する事項
六 評議員となるべき者のうちに、他の各役員となるべき者について、第二条の八第六号に規定する者(同号括弧書に規定する割合が三分の一を超えない場合に限る。)又は同条第七号に規定する者(同号括弧書に規定する半数を超えない場合に限る。)がいるときは、当該他の各役員の氏名及び当該他の各役員との関係を説明する事項
七 理事となるべき者のうちに、他の各理事となるべき者について、第二条の十各号に規定する者(第六号又は第七号に規定する者については、これらの号に規定する割合が三分の一を超えない場合に限る。)がいるときは、当該他の各理事の氏名及び当該他の各理事との関係を説明する事項
八 監事となるべき者のうちに、他の各役員となるべき者について、第二条の十一第六号に規定する者(同号括弧書に規定する割合が三分の一を超えない場合に限る。)、同条第七号に規定する者(同号括弧書に規定する割合が三分の一を超えない場合に限る。)、同条第八号に規定する者(同号括弧書に規定する半数を超えない場合に限る。)又は同条第九号に規定する者(同号括弧書に規定する割合が三分の一を超えない場合に限る。)がいるときは、当該他の各役員の氏名及び当該他の各役員との関係を説明する事項
2 前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 設立当初において当該社会福祉法人に帰属すべき財産の財産目録及び当該財産が当該社会福祉法人に確実に帰属することを明らかにすることができる書類
二 当該社会福祉法人がその事業を行うため前号の財産目録に記載された不動産以外の不動産の使用を予定しているときは、その使用の権限が当該社会福祉法人に確実に帰属することを明らかにすることができる書類
三 設立当初の会計年度及び次の会計年度における事業計画書及びこれに伴う収支予算書
四 設立者の履歴書
五 設立代表者を定めたときは、その権限を証明する書類
六 評議員となるべき者及び役員となるべき者の履歴書及び就任承諾書
3 所轄庁は、前二項に規定するもののほか、不動産の価格評価書その他必要な書類の提出を求めることができる。
4 社会福祉法人は、その設立の認可を受けたときは、遅滞なく財産目録記載の財産の移転を受けて、その移転を終了した後一月以内にこれを証明する書類を添付して所轄庁に報告しなければならない。
5 第一項の認可申請書類には、副本一通を添付しなければならない。
規則2条1項5~8号は、それぞれ評議員・理事・監事について、「特殊な関係」の有無を確認するためのもの。
非常に要件が細かい。
3.社会福祉法人の設立の登記
(1)社会福祉法
社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)
(登記)
第二十九条
社会福祉法人は、政令の定めるところにより、その設立、従たる事務所の新設、事務所の移転その他登記事項の変更、解散、合併、清算人の就任又はその変更及び清算の結了の各場合に、登記をしなければならない。
2 前項の規定により登記をしなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(成立の時期)
第三十四条
社会福祉法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによつて成立する。
社会福祉法人は、つぎのプロセスで成立する。
- 定款の作成
- 所轄庁による設立認可
- 設立の登記
(2)組合等登記令
組合等登記令(昭和三十九年政令第二十九号)
(設立の登記)
第二条
組合等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から二週間以内にしなければならない。
2 前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 目的及び業務
二 名称
三 事務所の所在場所
四 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
五 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
六 別表の登記事項の欄に掲げる事項
(商業登記法の準用)
第二十五条
商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第一条の三から第五条まで、第七条から第十五条まで、第十七条から第十九条の三まで、第二十一条から第二十三条の二まで、第二十四条(第十五号を除く。)、第二十五条から第二十七条まで、第五十一条から第五十三条まで、第七十一条第一項、第八十四条、第八十七条、第八十八条、第百三十二条から第百三十七条まで及び第百三十九条から第百四十八条までの規定は組合等の登記について、同法第七十九条、第八十二条及び第八十三条の規定は組合等の登記(第二十八条第六項の登記を除く。)について、それぞれ準用する。この場合において、同法第二十五条中「訴え」とあるのは「訴え又は官庁に対する請求」と、同条第三項中「その本店の所在地を管轄する地方裁判所」とあるのは「その主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所又は官庁」と、同法第七十九条中「吸収合併による」とあるのは「吸収合併若しくは組合等登記令第八条第二項に規定する承継(以下「承継」という。)による」と、「合併を」とあるのは「合併又は承継を」と、「吸収合併により」とあるのは「吸収合併若しくは承継により」と、同法第八十二条第一項中「合併による」とあるのは「合併又は承継による」と、「吸収合併後」とあるのは「吸収合併若しくは承継後」と、同法第八十三条第二項中「吸収合併に」とあるのは「吸収合併若しくは承継に」と読み替えるものとする。
準用された条文の全てを確認することはできないが、添付書面等については、こちらを確認。
商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)
(申請書の添付書面)
第十八条
代理人によつて登記を申請するには、申請書(前条第三項に規定する電磁的記録を含む。以下同じ。)にその権限を証する書面を添付しなければならない。
第十九条
官庁の許可を要する事項の登記を申請するには、申請書に官庁の許可書又はその認証がある謄本を添附しなければならない。
(申請書に添付すべき電磁的記録)
第十九条の二
登記の申請書に添付すべき定款、議事録若しくは最終の貸借対照表が電磁的記録で作られているとき、又は登記の申請書に添付すべき書面につきその作成に代えて電磁的記録の作成がされているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を記録した電磁的記録(法務省令で定めるものに限る。)を当該申請書に添付しなければならない。
4.社会福祉法人の設立登記の添付書類
(1)社会福祉法
記載なし。
(2)組合等登記令
組合等登記令(昭和三十九年政令第二十九号)
(設立の登記の申請)
第十六条
設立の登記は、組合等を代表すべき者の申請によつてする。
2 設立の登記の申請書には、定款又は寄附行為及び組合等を代表すべき者の資格を証する書面を添付しなければならない。
3 第二条第二項第六号に掲げる事項を登記すべき組合等の設立の登記の申請書には、その事項を証する書面を添付しなければならない。
- 定款
- 設立認可書
- 組合等を代表すべき者の資格を証する書面
- 定款(参照:法31条3項「設立当初の役員及び評議員は、定款で定める。」)
- 就任承諾を証する書面
- 第二条第二項第六号に掲げる事項を証する書面
- 資産の総額を証する書面
以上の添付が必要。
このほかに上記3(2)で確認した、代理権限証明情報や認可書も添付書類となる。
また、印鑑届書の提出も忘れずに(これに理事長個人の印鑑証明書の添付が必要。)。
(3)各種法人等登記規則
各種法人等登記規則(昭和三十九年法務省令第四十六号)
(商業登記規則等の準用)
第五条
商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)第一条の二第一項、第二条から第六条まで、第九条から第十一条まで、第十三条から第二十二条まで、第二十七条から第四十五条まで、第四十八条から第五十条まで、第五十三条第二項、第五十八条から第六十条まで、第七十五条、第九十八条から第百四条まで、第百六条から第百九条まで、第百十一条、第百十二条及び第百十四条から第百十八条までの規定は各種法人等の登記について、商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第四十六条第一項並びに同規則第一条の二第二項、第六十一条第一項、第六項及び第八項、第六十五条から第六十八条まで、第七十条から第七十四条まで、第七十六条から第七十八条まで、第八十条から第八十一条の二まで、第百十条並びに第百十三条の規定は各種法人の登記について、同規則第一条の二第三項、第九十三条、第九十四条第二項、第九十五条、第九十六条第一項(第三号から第六号までを除く。)及び第二項並びに第九十七条の規定は各種外国法人の登記について準用する。この場合において、同規則第一条の二第一項中「登記所及び次の各号に掲げる区分」とあるのは「登記所」と、同条第二項中「法第七十九条に規定する新設合併」とあるのは「新設合併」と、同規則第九十六条第一項第二号中「登記所の管轄区域内に日本における代表者の住所地がある場合(すべての日本における営業所を閉鎖した場合に限る。)」とあるのは「清算の開始の命令がある場合」と読み替えるものとする。
添付書面について定める商業登記規則61条の一部が準用されている。
商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)
第六十一条
定款の定め又は裁判所の許可がなければ登記すべき事項につき無効又は取消しの原因が存することとなる申請については、申請書に、定款又は裁判所の許可書を添付しなければならない。
(・・・)
6 代表取締役又は代表執行役の就任による変更の登記の申請書には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
一 株主総会又は種類株主総会の決議によつて代表取締役を定めた場合 議長及び出席した取締役が株主総会又は種類株主総会の議事録に押印した印鑑
二 取締役の互選によつて代表取締役を定めた場合 取締役がその互選を証する書面に押印した印鑑
三 取締役会の決議によつて代表取締役又は代表執行役を選定した場合 出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑
(・・・)
8 代表取締役若しくは代表執行役又は取締役若しくは執行役(登記所に印鑑を提出した者がある場合にあつては当該印鑑を提出した者に限り、登記所に印鑑を提出した者がない場合にあつては会社の代表者に限る。以下この項において「代表取締役等」という。)の辞任による変更の登記の申請書には、当該代表取締役等(その者の成年後見人又は保佐人が本人に代わつて行う場合にあつては、当該成年後見人又は保佐人)が辞任を証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、登記所に印鑑を提出した者がある場合であつて、当該書面に押印した印鑑と当該代表取締役等が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
(・・・)
以上から、設立登記申請においては、押印や印鑑証明書に関する規律が存在しないことに。