1.実質的支配者に関する申告
(1)条文
公証人法施行規則(昭和二十四年法務府令第九号)
第十三条の四
公証人は、会社法(平成十七年法律第八十六号)第三十条第一項並びに一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第十三条及び第百五十五条の規定による定款の認証を行う場合には、嘱託人に、次の各号に掲げる事項を申告させるものとする。
一 法人の成立の時にその実質的支配者(犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成十九年法律第二十二号)第四条第一項第四号に規定する者をいう。)となるべき者の氏名、住居及び生年月日
二 前号に規定する実質的支配者となるべき者が暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団員(次項において「暴力団員」という。)又は国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十四号)第三条第一項の規定により公告されている者(現に同項に規定する名簿に記載されている者に限る。)若しくは同法第四条第一項の規定による指定を受けている者(次項において「国際テロリスト」という。)に該当するか否か
2 公証人は、前項の定款の認証を行う場合において、同項第一号に規定する実質的支配者となるべき者が、暴力団員又は国際テロリストに該当し、又は該当するおそれがあると認めるときは、嘱託人又は当該実質的支配者となるべき者に必要な説明をさせなければならない。
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(定款の認証)
第三十条
第二十六条第一項の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない。
2 前項の公証人の認証を受けた定款は、株式会社の成立前は、第三十三条第七項若しくは第九項又は第三十七条第一項若しくは第二項の規定による場合を除き、これを変更することができない。
(2)フォーマット
実質的支配者に関する申告については、日本公証人連合会のHPにおいて、申告書のフォーマットを確認することができる。
下のほうに「実質的支配者となるべき者の申告書」が掲載されています。
このうち、実質的支配者となるべき者の「暴力団員等該当性」については「※4」が付されている。
※4 実質的支配者となるべき者が暴力団員(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号)、国際テロリスト(国際連合安全保障理事会決議第 1267号等を踏まえ我が国が実施する財産の凍結等に関する特別措置法第3条第1項の規定により公告されている者若しくは同法第4条第1項の規定による指定を受けている者)又は大量破壊兵器関連計画等関係者(国際連合安全保障理事会決議第 1267 号等を踏まえ我が国が実施する財産の凍結等に関する特別措置法第3条第2項の規定により公告されている者)のいずれにも該当しない場合には、「暴力団員等該当性」欄の「非該当」を○で囲み、いずれかに該当する場合には、「該当」を○で囲む。なお、該当する選択肢を○で囲むことに代えて、実質的支配者となるべき者が作成したその旨の表明保証書を提出することも可能である。
上記の日本公証人連合会HPに掲載された「実質的支配者となるべき者の申告書(株式会社用)」より
申告をなすべきは「嘱託人」である。
嘱託人と「実質的支配者となるべき者」が異なる場合においては、嘱託人が「実質的支配者となるべき者」の暴力団員等該当性を該当又は非該当で回答する必要があった(令和3年7月7日付の下記通達の前まで)。
そんなことしなくても、「実質的支配者となるべき者」自身が暴力団員等に該当するか否かを表明保証書として提出したほうが「直接的かつ証拠価値が高い資料であるから」という理由で、上記引用において太字とした取扱いが認められている。
2.実質的支配者による表明保証
(1)表明保証の内容
表明保証の内容についても、上記日本公証人連合会HPにおいて、フォーマットが公開されている。
私は、公証人法施行規則第13条の4第1項第2号に規定する暴力団員、国際テロリスト又は大量破壊兵器関連計画等関係者のいずれにも該当しないことを、ここに表明し、保証します。
上記の日本公証人連合会HPに掲載された「実質的支配者となるべき者の表明保証書の例」より
https://www.koshonin.gr.jp/pdf/Representation2023.pdf
(2)表明保証でも良いとされる根拠
以上の取扱いの根拠は、日本公証人連合会からの照会に対する法務省回答に基づく。
(法務省民総第496号令和3年7月6日回答)