事業協同組合における出資金の返還について

1.事業協同組合における出資金

(1)条文

参照条文

中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)

(出資)
第十条 
組合員は、出資一口以上を有しなければならない。
2 出資一口の金額は、均一でなければならない。
3 一組合員の出資口数は、出資総口数の百分の二十五(信用協同組合にあつては、百分の十)を超えてはならない。ただし、(・・・)
4 前項の規定は、組合員の数が三人以下の組合の組合員の出資口数については、適用しない。
5 組合員の責任は、その出資額を限度とする。
6 組合員は、出資の払込みについて、相殺をもつて組合に対抗することができない。
7 企業組合の出資総口数の過半数は、組合の行う事業に従事する組合員(特定組合員を除く。)が保有しなければならない。

(加入)
第十五条 
組合に加入しようとする者は、定款の定めるところにより加入につき組合の承諾を得て、引受出資口数に応ずる金額の払込及び組合が加入金を徴収することを定めた場合にはその支払を了した時又は組合員の持分の全部又は一部を承継した時に組合員となる。

(自由脱退)
第十八条 
組合員は、九十日前までに予告し、事業年度の終において脱退することができる。
2 前項の予告期間は、定款で延長することができる。ただし、その期間は、一年を超えてはならない。

組合員は、「一口以上」の出資が求められている。

一方で、組合員には、自由脱退が認められている。

(2)モデル定款

下記の全国中小企業団体中央会のHPにおいて事業協同組合のモデル定款が公開されている。

参考記事(外部リンク)

上記HPにおける「事業協同組合定款参考例」を確認のこと。

2.「脱退」による事業協同組合における出資金の返還

(1)条文

参照条文

中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)

(脱退者の持分の払戻)
第二十条 
組合員は、第十八条又は前条第一項第一号から第四号までの規定により脱退したときは、定款の定めるところにより、その持分の全部又は一部の払戻を請求することができる。
2 前項の持分は、脱退した事業年度の終における組合財産によつて定める。
3 前項の持分を計算するにあたり、組合の財産をもつてその債務を完済するに足りないときは、組合は、定款の定めるところにより、脱退した組合員に対し、その負担に帰すべき損失額の払込を請求することができる。

(自由脱退)
第十八条 
組合員は、九十日前までに予告し、事業年度の終において脱退することができる。
2 前項の予告期間は、定款で延長することができる。ただし、その期間は、一年を超えてはならない。

(法定脱退)
第十九条 
組合員は、次の事由によつて脱退する。
一 組合員たる資格の喪失
二 死亡又は解散
三 除名
四 第百七条及び第百八条の規定による公正取引委員会の確定した排除措置命令
五 持分の全部の喪失(信用協同組合又は第九条の九第一項第一号の事業を行う協同組合連合会の組合員に限る。)
2 除名は、次に掲げる組合員につき、総会の議決によつてすることができる。この場合は、組合は、その総会の会日の十日前までに、その組合員に対しその旨を通知し、かつ、総会において、弁明する機会を与えなければならない。
一 長期間にわたつて組合の事業を利用しない組合員
二 出資の払込み、経費の支払その他組合に対する義務を怠つた組合員又は第九条の十一第六項の規定に違反した特定組合員
三 その他定款で定める事由に該当する組合員
3 除名は、除名した組合員にその旨を通知しなければ、これをもつてその組合員に対抗することができない。

(2)整理

脱退時の出資金の払戻に関する規定。

自由脱退については、事業年度末の90日前まで(予告期間)に通知することにより、当該事業年度末において脱退することができる。

この予告期間は、最長1年まで、定款で定めることにより延長することができる。

3.「出資口数の減少」による出資金の返還

(1)条文

参照条文

中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)

(出資口数の減少)
第二十三条 
組合員は、事業を休止したとき、事業の一部を廃止したとき、その他特にやむを得ない事由があると認められるときは、定款の定めるところにより、事業年度の終において、その出資口数を減少することができる。
2 前項の場合については、第二十条【脱退者の持分の払戻】及び第二十一条【時効】の規定を準用する。

(2)整理

出資口数の減少を請求できるのは、つぎの3つの場合のおいて、定款の定めに基づいて「出資口数の減少」の請求が可能である。
また、その手続きについては「脱退者の持分の払戻」に関する規定が準用される。

  • 組合員が事業を休止したとき
  • 組合員が事業の一部を廃止したとき
  • その他特にやむを得ない事由があると認められるとき

「定款の定め」に関しては、つぎのような定めをおいているところが多いのではないだろうか?

本組合は、前項の請求【組合員による出資口数の減少の請求】があったときは、理事会においてその諾否を決する

理事会において「特にやむを得ない事由がある」か否かを判断することになる。

出資口数を減少した場合には「脱退者の持分の払戻」の規定に従って、払戻しが行われる。

4.出資口数の減少にともなう登記

登記に関しては、つぎの記事を参照のこと。

【参照記事:事業協同組合における出資の総口数及び払込済出資総額の変更登記】

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