会社の承認のない譲渡制限株式の譲渡

2020年12月17日

1.条文

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

(株主からの承認の請求)
第百三十六条
譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く。)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。

(株式取得者からの承認の請求)
第百三十七条
譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。
2 前項の規定による請求は、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、その取得した株式の株主として株主名簿に記載され、若しくは記録された者又はその相続人その他の一般承継人と共同してしなければならない。

2.判例(相対説)

参考記事(外部リンク)

裁判要旨
一、定款をもつて株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨定められている場合に、その承認をえないで株式が譲渡されても、右株式の譲渡は、譲渡当事者間においては有効であると解すべきである。
二、株式を譲渡担保に供することは、商法二〇四条一項にいう株式の譲渡にあたると解すべきである。

このほかに最判S63.3.15判時1273.124。
要旨は、「会社の承認のない譲渡制限株式の譲渡は、会社には効力が生じないことを理由に、会社は譲渡人を株主として取り扱う義務がある。」というもの。

【参考】

裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan

参考記事(外部リンク)

 一 商法旧第二〇六条(昭和二五年法律第一六七号による改正前のもの)の施行当時、記名株式の譲渡があつたにかかわらず株主名簿の名義書換が会社の都合でおくれていても、会社が右譲渡を認め譲受人を株主として取り扱うことは妨げないと解するのが相当である。
二 (・・・)。

3.譲渡承認の請求

(1)譲渡人からの請求

譲渡人単独で、譲渡承認の請求を行うことができる。

(2)取得者からの請求

取得者からの請求も可能であるが(注:承認のない譲渡の効力については、上記判例を参照)、その際には、譲渡人(=株主名簿名義人)と共同で請求しなければならない。

例外として定める「法務省令で定める場合」は以下の通り。

参照条文

会社法施行規則(平成十八年法務省令第十二号)

(株式取得者からの承認の請求)
第二十四条
法第百三十七条第二項に規定する法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 株式取得者が、株主として株主名簿に記載若しくは記録がされた者又はその一般承継人に対して当該株式取得者の取得した株式に係る法第百三十七条第一項の規定による請求をすべきことを命ずる確定判決を得た場合において、当該確定判決の内容を証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。
二 株式取得者が前号の確定判決と同一の効力を有するものの内容を証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。
三 株式取得者が当該株式会社の株式を競売により取得した者である場合において、当該競売により取得したことを証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。
四 株式取得者が組織変更株式交換により当該株式会社の株式の全部を取得した会社である場合において、当該株式取得者が請求をしたとき。
五 株式取得者が株式移転(組織変更株式移転を含む。)により当該株式会社の発行済株式の全部を取得した株式会社である場合において、当該株式取得者が請求をしたとき。
六 株式取得者が法第百九十七条第一項の株式を取得した者である場合において、同条第二項の規定による売却に係る代金の全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。
七 株式取得者が株券喪失登録者である場合において、当該株式取得者が株券喪失登録日の翌日から起算して一年を経過した日以降に、請求をしたとき(株券喪失登録が当該日前に抹消された場合を除く。)。
八 株式取得者が法第二百三十四条第二項(法第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による売却に係る株式を取得した者である場合において、当該売却に係る代金の全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。
2 前項の規定にかかわらず、株式会社が株券発行会社である場合には、法第百三十七条第二項に規定する法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 株式取得者が株券を提示して請求をした場合
二 株式取得者が組織変更株式交換により当該株式会社の株式の全部を取得した会社である場合において、当該株式取得者が請求をしたとき。
三 株式取得者が株式移転(組織変更株式移転を含む。)により当該株式会社の発行済株式の全部を取得した株式会社である場合において、当該株式取得者が請求をしたとき。
四 株式取得者が法第百九十七条第一項の株式を取得した者である場合において、同項の規定による競売又は同条第二項の規定による売却に係る代金の全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。
五 株式取得者が法第二百三十四条第一項若しくは第二百三十五条第一項の規定による競売又は法第二百三十四条第二項(法第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による売却に係る株式を取得した者である場合において、当該競売又は当該売却に係る代金の全部を支払ったことを証する書面その他の資料を提供して請求をしたとき。

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