目次
1.医療法の規定
(1)医療法69条の2
第十節 医療法人に関する情報の調査及び分析等
医療法(昭和二十三年法律第二百五号)
第六十九条の二
都道府県知事は、地域において必要とされる医療を確保するため、当該都道府県の区域内に主たる事務所を有する医療法人の活動の状況その他の厚生労働省令で定める事項について、調査及び分析を行い、その内容を公表するよう努めるものとする。
2 医療法人(厚生労働省令で定める者を除く。)は、厚生労働省令で定めるところにより、当該医療法人が開設する病院又は診療所ごとに、その収益及び費用その他の厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に報告しなければならない。
3 厚生労働大臣は、医療法人の活動の状況その他の厚生労働省令で定める事項に関する情報を収集し、整理し、及び当該整理した情報の分析の結果を国民にインターネットその他の高度情報通信ネットワークの利用を通じて迅速に提供することができるよう必要な施策を実施するものとする。
4 厚生労働大臣は、前項の施策を実施するため必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、当該都道府県の区域内に主たる事務所を有する医療法人の活動の状況その他の厚生労働省令で定める事項に関する情報の提供を求めることができる。
5 都道府県知事は、前項の規定による厚生労働大臣の求めに応じて情報を提供するときは、電磁的方法その他の厚生労働省令で定める方法によるものとする。
(2)規定新設の趣旨
医療法69条の2第2項において、医療法人に対して「収益及び費用その他の厚生労働省令で定める事項」を報告することが義務付けられました。
高齢者人口の増加や医療の高度化などによって国民医療費が増加しており、くわえて、生産年齢人口の急激な減少や医療資源の地域格差などの諸課題の存在が明らかとなっています。
こうした課題に対応するための政策の企画・立案に際して活用するため、また医療の実態を国民に説明するために、医療法人が開設する病院及び診療所に関わる経営等の情報を収集し整理することが、医療法69条の2の目的とするところです。
(3)報告義務の開始時期と内容
各医療法人は、令和5年8月以降に決算期を迎える法人から、所定の情報の報告が義務付けられます。
報告すべき情報の内容は、大まかに分類すれば、つぎのとおりです。
- 病院又は診療所における収益及び費用に関する情報
- 職種別の給与(給料・賞与)及び人数
(4)報告された内容は「行政庁への開示請求」の対象になるのか?
ならないとされています。
下記厚労省HPの「3 Q&A」に掲載されている「医療法人に関する情報の調査及び分析等についての疑義照会に係る回答一覧(令和5年10月2日版)」のNO.6を参照。
「経営情報等については、医療法人や当該医療法人に所属する特定の個人の権利利益や法人の競争上の利益が害されるおそれがある情報が含まれており、経営情報等が悪意をもって利用されれば、本制度に対する信頼と協力を損なう可能性がある」ことから、当該情報の秘密を保護する必要があるため不開示
2.報告対象の医療法人
(1)原則としてすべての医療法人
原則として、すべての医療法人に報告義務があります。
令和5年8月以降に決算期を迎える医療法人は、毎年、会計年度終了後に都道府県に報告しなければなりません。
これまでの事業報告と同様に、会計年度終了後「3カ月以内」に報告をしなければなりません。
(2)例外(医療法施行規則)
医療法施行規則第三十八条の四に規定がされています。
「租税特別措置法第六十七条第一項の規定(社会保険診療報酬の所得の計算の特例)を適用して最終会計年度の所得の金額を計算した医療法人」は報告対象外とされています。
3.報告書式
報告書式は、厚生労働省のHPで公開されています。
また書式のみならず、Q&Aなども公開されています。
とりわけ「『医療法人に関する情報の調査及び分析等』の取扱い(第2版)について」は、報告書の作成にあたり、非常に参考となるでしょう。
4.報告方法
(1)G-MIS
原則として、報告は「G-MIS」によることとされています。
(「ジーミス」と読むようです。)
「G-MIS」とは「Gathering Medical Information System」の略称です。
(2)郵送等による報告
上記厚労省HPにおいて公開されている書式をプリントアウトして、郵送により報告をすることも認められています。
(3)報告期限
会計年度終了後3カ月以内です。
(一部の大型医療法人では、会計年度終了後4カ月。)

