目次
1.「関係事業者との取引の状況に関する報告書」を提出する必要性
(1)医療法の規定
医療法(昭和二十三年法律第二百五号)
第五十二条
医療法人は、厚生労働省令で定めるところにより、毎会計年度終了後三月以内に、次に掲げる書類を都道府県知事に届け出なければならない。
一 事業報告書等
二 監事の監査報告書
三 第五十一条第二項の医療法人にあつては、公認会計士等の監査報告書
2 都道府県知事は、定款若しくは寄附行為又は前項の届出に係る書類について請求があつた場合には、厚生労働省令で定めるところにより、これを閲覧に供しなければならない。
医療法人については、毎会計年度終了後三月以内に、上記書類を都道府県知事に届け出なければならない。
(なお、以下「医療法人」というときには、いわゆる医療法51条2項に該当しない「その他の医療法人」を前提とする。)
なお「事業報告書等」については、医療法51条1項に定義がなされており、つぎの書類をさす。
- 事業報告書
- 財産目録
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 関係事業者(理事長の配偶者がその代表者であることその他の当該医療法人又はその役員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者をいう。)との取引の状況に関する報告書
- その他厚生労働省令で定める書類【社会医療法人、社会医療法人債発行法人、法51条2項法人について】
「当該医療法人又はその役員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者」については、のちほど項を改めて確認する。
また「監事の監査報告書」については、医療法51条の4第1項2号において「第46条の8第3号の監査報告書」を指すものと定義されている。
(2)医療法施行規則の規定
上記と関連するところで医療法施行規則の規定をひろうと次のとおり。
医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)
(事業報告書等の届出等)
第三十三条の二の十二
法第五十二条第一項の規定による届出は、次に掲げる方法のいずれかにより行わなければならない。
一 電磁的方法を利用して自ら及び当該届出を受けるべき都道府県知事が同一の情報を閲覧することができる状態に置く措置を講ずる方法
二 書面の提出
2(・・・)
3(・・・)
4 第一項第二号に規定する方法による届出を行う場合には、法第五十二条第一項各号に掲げる書類(・・・)には、副本を添付しなければならない。
5 法第五十二条第二項の閲覧は、同条第一項の届出に係る書類(・・・)であつて過去三年間に届け出られた書類について、インターネットの利用その他適切な方法により行うものとする。
オンライン申請が原則となっている。
また、届出をされた書類については「インターネットの利用その他適切な方法」により閲覧に供されることに。
静岡県については、下記にて閲覧することができる。

2.「関係事業者との取引の状況に関する報告書」の様式について
(1)厚生労働省のHPにて様式が掲載されている
様式は、平成19年3月30日医政支発1213第3号通知により定められている。
(なお、当該通知は、令和4年3月31日医政支発0331第1号等により改正されている。)
「医療法人関係 通知」の項に掲載されている。
様式の内容を一部抜粋すると、つぎのとおり。
- 様式1:事業報告書
- 様式2:財産目録
- 様式3-2:貸借対照表(診療所のみを開設する医療法人)
- 様式4-2:損益計算書(診療所のみを開設する医療法人)
- 様式5:関係事業者との取引の状況に関する報告書
- 様式6:監事監査報告書
なおG-MISを利用する際には、G-MISからダウンロードした様式を利用すること。
(2)「関係事業者との取引の状況に関する報告書」の様式を見る
たとえば「事業報告書」の様式を見ていくと、多くの「注」がふされている。
当該注記を確認すると、いわゆる「その他医療法人」は、他の種類の医療法人に比べて記載事項が少ないことがわかる。
貸借対照表や損益計算書についても、診療所のみを開設する医療法人については非常に簡略化されている。
そのうえで「関係事業者との取引の状況に関する報告書」をみると、つぎの事項を報告することになっている。
- 法人である関係事業者との取引状況
- 個人である関係事業者との取引状況
3.「関係事業者」について
(1)関係事業者の定義
「関係事業者」とは「理事長の配偶者がその代表者であることその他の当該医療法人又はその役員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者」をいう。
そして「特殊の関係にある者」については、その定義が医療法人施行規則に記載されている。
条文は次号の通りだが、非常に分かりにくい。
まず「特殊の関係」は2つにわけて整理される。
「特殊の関係」=「第一号に掲げる者」が「第二号に掲げる取引」をすること
そして「第一号に掲げる者」は、つぎのとおり。
- 当該医療法人の役員又はその近親者(配偶者又は二親等内の親族)
- 当該医療法人の役員又はその近親者が代表者である法人
- 当該医療法人の役員又はその近親者が株主総会若しくは社員総会若しくは評議員会又は取締役会若しくは理事会の議決権の過半数を占めている法人
- 他の法人の役員が当該医療法人の社員総会若しくは評議員会又は理事会の議決権の過半数を占めている場合における当該他の法人
- 上記3の法人の役員が他の法人(当該医療法人を除く。)の株主総会若しくは社員総会若しくは評議員会又は取締役会若しくは理事会の議決権の過半数を占めている場合における他の法人
「第二号に掲げる取引」は、おおまかにまとめると、つぎのとおり。
- 事業収益又は事業費用の額が、一千万円以上であり、かつ一定割合を超える取引
- 事業外収益又は事業外費用の額が、一千万円以上であり、かつ一定割合を超える取引
- 特別利益又は特別損失の額が一千万円以上である取引
- 資産又は負債の総額が、一定割合を占め、かつ一千万円を超える残高になる取引
- 資金貸借並びに有形固定資産及び有価証券の売買その他の取引の総額が、一千万円以上であり、かつ一定割合を超える取引
- 事業の譲受又は譲渡の場合にあつては、資産又は負債の総額のいずれか大きい額が、一千万円以上であり、かつ一定割合を超える取引
(2)「特殊の関係」に関する医療法施行規則の規定
医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)
(法第五十一条第一項の厚生労働省令で定める特殊の関係)
第三十二条の六
法第五十一条第一項の厚生労働省令で定める特殊の関係は、第一号に掲げる者が当該医療法人と第二号に掲げる取引を行う場合における当該関係とする。
一 次のいずれかに該当する者
イ 当該医療法人の役員又はその近親者(配偶者又は二親等内の親族をいう。ロ及びハにおいて同じ。)
ロ 当該医療法人の役員又はその近親者が代表者である法人
ハ 当該医療法人の役員又はその近親者が株主総会若しくは社員総会若しくは評議員会又は取締役会若しくは理事会の議決権の過半数を占めている法人
ニ 他の法人の役員が当該医療法人の社員総会若しくは評議員会又は理事会の議決権の過半数を占めている場合における当該他の法人
ホ ハの法人の役員が他の法人(当該医療法人を除く。)の株主総会若しくは社員総会若しくは評議員会又は取締役会若しくは理事会の議決権の過半数を占めている場合における他の法人
二 次のいずれかに該当する取引
イ 事業収益又は事業費用の額が、一千万円以上であり、かつ当該医療法人の当該会計年度における本来業務事業収益、附帯業務事業収益及び収益業務事業収益の総額又は本来業務事業費用、附帯業務事業費用及び収益業務事業費用の総額の十パーセント以上を占める取引
ロ 事業外収益又は事業外費用の額が、一千万円以上であり、かつ当該医療法人の当該会計年度における事業外収益又は事業外費用の総額の十パーセント以上を占める取引
ハ 特別利益又は特別損失の額が一千万円以上である取引
ニ 資産又は負債の総額が、当該医療法人の当該会計年度の末日における総資産の一パーセント以上を占め、かつ一千万円を超える残高になる取引
ホ 資金貸借並びに有形固定資産及び有価証券の売買その他の取引の総額が、一千万円以上であり、かつ当該医療法人の当該会計年度の末日における総資産の一パーセント以上を占める取引
ヘ 事業の譲受又は譲渡の場合にあつては、資産又は負債の総額のいずれか大きい額が、一千万円以上であり、かつ当該医療法人の当該会計年度の末日における総資産の一パーセント以上を占める取引


