医療法人における事業報告書等の様式について

2023年8月8日

1.医療法人に事業報告の届出

(1)医療法

条文引用について、一部規定を省略しているので、参照時には注意!

参照条文

医療法(昭和二十三年法律第二百五号)

第五十一条 
医療法人は、毎会計年度終了後二月以内に、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、関係事業者(理事長の配偶者がその代表者であることその他の当該医療法人又はその役員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者をいう。)との取引の状況に関する報告書その他厚生労働省令で定める書類(以下「事業報告書等」という。)を作成しなければならない。
2 医療法人(その事業活動の規模その他の事情を勘案して厚生労働省令で定める基準に該当する者に限る。)は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の貸借対照表及び損益計算書を作成しなければならない。
3 医療法人は、貸借対照表及び損益計算書を作成した時から十年間、当該貸借対照表及び損益計算書を保存しなければならない。
4 医療法人は、事業報告書等について、厚生労働省令で定めるところにより、監事の監査を受けなければならない。
5 第二項の医療法人は、財産目録、貸借対照表及び損益計算書について、厚生労働省令で定めるところにより、公認会計士又は監査法人の監査を受けなければならない。
6 医療法人は、前二項の監事又は公認会計士若しくは監査法人の監査を受けた事業報告書等について、理事会の承認を受けなければならない。

第五十一条の二 
社団たる医療法人の理事は、前条第六項の承認を受けた事業報告書等を社員総会に提出しなければならない。
2 理事は、前項の社員総会の招集の通知に際して、厚生労働省令で定めるところにより、社員に対し、前条第六項の承認を受けた事業報告書等を提供しなければならない。
3 第一項の規定により提出された事業報告書等(貸借対照表及び損益計算書に限る。)は、社員総会の承認を受けなければならない。
4 理事は、第一項の規定により提出された事業報告書等(貸借対照表及び損益計算書を除く。)の内容を社員総会に報告しなければならない。
5 前各項の規定は、財団たる医療法人について準用する。この場合において、前各項中「社員総会」とあるのは「評議員会」と、第二項中「社員」とあるのは「評議員」と読み替えるものとする。

第五十一条の三 
医療法人(その事業活動の規模その他の事情を勘案して厚生労働省令で定める基準に該当する者に限る。次項において同じ。)は、厚生労働省令で定めるところにより、前条第三項の承認をした社員総会又は同条第五項において読み替えて準用する同条第三項の承認をした評議員会の終結後遅滞なく、同項(同条第五項において読み替えて準用する場合を含む。)の承認を受けた事業報告書等(貸借対照表及び損益計算書に限る。)を公告しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、その公告方法が厚生労働省令で定める方法である医療法人は、同項に規定する事業報告書等の要旨を公告することで足りる。

第五十一条の四 
医療法人(次項に規定する者を除く。)は、次に掲げる書類をその主たる事務所に備えて置き、その社員若しくは評議員又は債権者から請求があつた場合には、正当な理由がある場合を除いて、厚生労働省令で定めるところにより、これを閲覧に供しなければならない。
一 事業報告書等
二 第四十六条の八第三号の監査報告書(以下「監事の監査報告書」という。)
三 定款又は寄附行為
(・・・)
3 医療法人は、第五十一条の二第一項の社員総会の日(財団たる医療法人にあつては、同条第五項において読み替えて準用する同条第一項の評議員会の日)の一週間前の日から五年間、事業報告書等、監事の監査報告書及び公認会計士等の監査報告書をその主たる事務所に備え置かなければならない。
(・・・)

第五十二条 
医療法人は、厚生労働省令で定めるところにより、毎会計年度終了後三月以内に、次に掲げる書類を都道府県知事に届け出なければならない。
一 事業報告書等
二 監事の監査報告書
三 第五十一条第二項の医療法人にあつては、公認会計士等の監査報告書
2 都道府県知事は、定款若しくは寄附行為又は前項の届出に係る書類について請求があつた場合には、厚生労働省令で定めるところにより、これを閲覧に供しなければならない。

参照条文

医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)

(法第五十一条第二項の厚生労働省令で定める基準に該当する者)
第三十三条の二 
法第五十一条第二項の厚生労働省令で定める基準に該当する者は、次の各号のいずれかに該当する者とする。
一 最終会計年度(事業報告書等につき法第五十一条第六項の承認を受けた直近の会計年度をいう。以下この号及び次号において同じ。)に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が五十億円以上又は最終会計年度に係る損益計算書の事業収益の部に計上した額の合計額が七十億円以上である医療法人
二 最終会計年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二十億円以上又は最終会計年度に係る損益計算書の事業収益の部に計上した額の合計額が十億円以上である社会医療法人
三 社会医療法人債発行法人である社会医療法人

(法第五十一条の三第一項の厚生労働省令で定める基準に該当する者)
第三十三条の二の八 
法第五十一条の三第一項の厚生労働省令で定める基準に該当する者は、次に掲げる者とする。
一 第三十三条の二第一号に規定する医療法人
二 社会医療法人

(2)整理

上記規則において例外扱いされる法人を除いて、事業報告書等にかかる一連のプロセスは次のとおり。

  1. 作成
  2. 保存
  3. 監事の監査
  4. 理事会の承認
  5. 社員総会への提出(社員に対する提供)
  6. 社員総会での報告(貸借対照表及び損益計算書を除く。)
  7. 社員総会での承認(貸借対照表及び損益計算書に限る。)
  8. 閲覧・備置
  9. 都道府県知事への届出

以下では「都道府県知事への届出」について

2.通達における様式の指定

(1)経緯

「平成19年3月30日医政指発第0330003号(厚生労働省医政局指導課長)」において様式が指定されている。

ここ数年は改正が連続(平成30・令和2年・令和4年)しており、令和5年7月31日付でも改正がなされている。

(2)定められた様式

  • 【様式1】事業報告書
  • 【様式2】財産目録
  • 【様式3ー1】貸借対照表(病院、介護老人保健施設又は介護医療院を開設する医療法人)
  • 【様式3ー2】貸借対照表(診療所のみを開設する医療法人)
  • 【様式4ー1】損益計算書(病院、介護老人保健施設又は介護医療院を開設する医療法人)
  • 【様式4ー2】損益計算書(診療所のみを開設する医療法人)
  • 【様式5】関係事業者との取引の状況に関する報告書
  • 【様式6】監事監査報告書

なお、医療機関等情報支援システム(G-MIS)を利用する場合には様式が異なるので注意!

参照条文

医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)

(事業報告書等の届出等)
第三十三条の二の十二 
法第五十二条第一項の規定による届出は、次に掲げる方法のいずれかにより行わなければならない。
一 電磁的方法を利用して自ら及び当該届出を受けるべき都道府県知事が同一の情報を閲覧することができる状態に置く措置を講ずる方法
二 書面の提出

2.関連事業者との取引の状況に関する報告書

(1)関連事業者とは

関連する箇所のみの条文抜粋

参照条文

医療法(昭和二十三年法律第二百五号)

第五十一条 
医療法人は、毎会計年度終了後二月以内に、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、関係事業者(理事長の配偶者がその代表者であることその他の当該医療法人又はその役員と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者をいう。)との取引の状況に関する報告書その他厚生労働省令で定める書類(以下「事業報告書等」という。)を作成しなければならない。
(・・・)

より詳しくは医療法施行規則に定めがある。

参照条文

医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)

(法第五十一条第一項の厚生労働省令で定める特殊の関係)
第三十二条の六 
法第五十一条第一項の厚生労働省令で定める特殊の関係は、第一号に掲げる者が当該医療法人と第二号に掲げる取引を行う場合における当該関係とする。
一 次のいずれかに該当する者
イ 当該医療法人の役員又はその近親者(配偶者又は二親等内の親族をいう。ロ及びハにおいて同じ。)
ロ 当該医療法人の役員又はその近親者が代表者である法人
ハ 当該医療法人の役員又はその近親者が株主総会若しくは社員総会若しくは評議員会又は取締役会若しくは理事会の議決権の過半数を占めている法人
ニ 他の法人の役員が当該医療法人の社員総会若しくは評議員会又は理事会の議決権の過半数を占めている場合における当該他の法人
ホ ハの法人の役員が他の法人(当該医療法人を除く。)の株主総会若しくは社員総会若しくは評議員会又は取締役会若しくは理事会の議決権の過半数を占めている場合における他の法人
二 次のいずれかに該当する取引
イ 事業収益又は事業費用の額が、一千万円以上であり、かつ当該医療法人の当該会計年度における本来業務事業収益、附帯業務事業収益及び収益業務事業収益の総額又は本来業務事業費用、附帯業務事業費用及び収益業務事業費用の総額の十パーセント以上を占める取引
ロ 事業外収益又は事業外費用の額が、一千万円以上であり、かつ当該医療法人の当該会計年度における事業外収益又は事業外費用の総額の十パーセント以上を占める取引
ハ 特別利益又は特別損失の額が一千万円以上である取引
ニ 資産又は負債の総額が、当該医療法人の当該会計年度の末日における総資産の一パーセント以上を占め、かつ一千万円を超える残高になる取引
ホ 資金貸借並びに有形固定資産及び有価証券の売買その他の取引の総額が、一千万円以上であり、かつ当該医療法人の当該会計年度の末日における総資産の一パーセント以上を占める取引
ヘ 事業の譲受又は譲渡の場合にあつては、資産又は負債の総額のいずれか大きい額が、一千万円以上であり、かつ当該医療法人の当該会計年度の末日における総資産の一パーセント以上を占める取引

(2)「特殊の関係」とは

「者」要件と「取引」要件の2つを満たした場合に「特殊の関係」があるとされる。

「者」要件で注目すべきは、「近親者」とは「配偶者又は二親等内の親族」と定義されていること。

とても細かく規定されている。

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