同一商号の禁止について

1.同一商号・同一本店の禁止

(1)条文

参照条文

商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)

(同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止)
第二十七条 
商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあつては、本店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない。

(2)整理

「商号が他人の既に登記した商号と同一」
かつ、
「その営業所(会社にあつては、本店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一」

の場合には登記ができない。

(3)この記事では「同一商号」について検討

以上の通り「登記ができない」のは同一商号かつ同一本店のケースですが、この記事では「同一商号」に焦点をあてて確認を進めていきます。

2.同一商号の禁止における「同一」とは

(1)趣旨

趣旨としては、登記を見た人が「会社の同一性に誤解を生じること」を回避する趣旨にある。
一方で、商号選択の自由も認められるところであり、その調整の結果として「同一商号かつ同一本店」の登記が禁止されている。
(なお、後記「4.おことわり」も参照のこと。)

なお、会社法制定に伴う商業登記法改正前の条文は、つぎのとおりだった。

参照条文

平成18年7月26日法律87号による改正がなされる前の商業登記法

第二十七条
商号の登記は、同市町村内においては、同一の営業のため他人が登記したものと判然区別することができないときは、することができない。

なので、古い先例や質疑応答を参照するときには、そもそもベースの条文が異なる点に留意すること!

(2)「同一」の定義

現在の「同一商号」の規制における「同一」の定義については、たとえばハンドブックでは次のように定義している。

会社の種類を表す部分を含め、商号全体の表記そのものが完全に一致することをいう。

松井 信憲 (著)『商業登記ハンドブック〔第4版〕』商事法務; 第4版 (2021/7/30)P.8

3.具体例

(1)会社の種類が異なるケース

上記の定義により、つぎのケースでは「登記OK」となる。

【合同会社かいばら事務所】

【株式会社かいばら事務所】

(2)フリガナが異なるケース

上記の定義により、つぎのケースでは「登記不可」となる。

【株式会社貝原事務所】(フリガナは「カイラジムショ」)

【株式会社貝原事務所】(フリガナは「カイラジムショ」

(3)同音異字のケース

上記の定義により、つぎのケースでは「登記OK」となる。

【株式会社原事務所】(フリガナは「カイバラジムショ」)

【株式会社原事務所】(フリガナは「カイバラジムショ」)

4.おことわり

なお、同一商号・同一本店の禁止の規定に加えて、商号利用にあっては会社法8条等の他の規定との関係でも留意すること。

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

第八条 
何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。
2 前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある会社は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

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