商業登記における住所の記録された役員の住所変更(省略の可否等)

2017年4月27日

検討したかったことを検討するために、思いの外、時間のかかった事例。

検討事項が多く、今後、修正・訂正の予定。

1.条文

参照条文

商業登記法(昭和三十八年七月九日法律第百二十五号)

第二十六条  

行政区画、郡、区、市町村内の町若しくは字又はそれらの名称の変更があつたときは、その変更による登記があつたものとみなす。

みなし規定の対象となるのは、

(1)行政区画、郡、区の変更

(2)市町村内の町若しくは字の変更

(3)行政区画、郡、区の名称の変更

(4)市町村内の町若しくは字の名称の変更

そのため、住居表示実施により「○○番地の△」が「○○番△号」となった場合や、上記(1)~(4)にともない地番が変更になった場合は、みずから登記申請しなければならない。

要するに、数字の変更については、みずから申請する必要があるということ。

申請しないと過料の対象になる。

(ハンドブック3版P208(2)のなお書きに留意。なぜ?) 

参照条文

第九百十五条  
会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。

第九百十一条
3  第一項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
(・・・)
三  本店及び支店の所在場所
(・・・)
十四  代表取締役の氏名及び住所(第二十三号に規定する場合を除く。)
(・・・)

2.住所変更の登記

(1)添付書類は不要

添付書類としては、変更後の住所や変更年月日を証する書面は不要とされる。

しかしながら、それらの事実を住民票等で確認することは、申請書を作成する上で必要となる(職務上請求の可否については留意。)。

なお、住居表示実施等による変更の場合、登録免許税が非課税となる証明書として、住居表示実施証明等を添付すべきケースあり。

(2)商業登記における中間省略

複数回住所移転している場合、不動産登記だと中間省略が可能であるが、商業登記の場合には不可と考えられる。変更の都度、登記義務が発生しているはずだから。

とはいえ、住所変更後に重任する際には省略可能とされる(ハンドブック3版P422。なぜ省略可とされているのかは不明。)。

ちなみに、代表取締役が、住所変更後に辞任する場合、住所変更の登記は省略できないとされる(ハンドブック3版P416注4。参照先の「しかし」以下も注目。「つなぐ書面」は不要とする旨。)。

(参照:商業法人登記360問Q24)

(以下が検討したかったこと)

3.特例有限会社における監査役の死亡と住所変更

監査役A(住所○○)が登記されている。

住所○○は昭和×年に住居表示実施により住所△△へと変更になっていた。

監査役Aは平成□年に死亡した。

(1)死亡を証する書面

死亡年月日、住居表示実施の旨を、Aの住民票の除票で確認。

住民票の除票は、死亡を証する書面として添付可(死亡の事実を議事録上で確認してもダメ。ハンドブック3版P415。)。

(2)住所変更の要否

申請内容としては、まずは住所変更、その後に死亡による退任登記をおこなう。

登録免許税は、同区分なので1万円(そもそも住所変更は、住居表示実施によるものなので証明書添付で非課税。)。

(3)職務上請求の利用の可否

職務上請求の可否については、死亡による変更登記に添付する書面として可とする旨の記載有り(手引き2版のP21)。