目次
1.決算公告について
(1)条文の確認
第四百四十条
株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(・・・)を公告しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、その公告方法が第九百三十九条第一項第一号又は第二号に掲げる方法である株式会社は、前項に規定する貸借対照表の要旨を公告することで足りる。
3 前項の株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、第一項に規定する貸借対照表の内容である情報を、定時株主総会の終結の日後五年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができる。この場合においては、前二項の規定は、適用しない。
4 (・・・)
(2)整理
公告方法が「官報」または「日刊新聞紙」であれば、貸借対照表の要旨を公告すればOK。
「要旨」の具体的内容については会社計算規則137条以下を参照。
この会社においては、貸借対照表の内容を「電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く」ことで決算公告を省略することができる。
ちなみに条文タイトルは「貸借対照表等の電磁的方法による公開の方法」。具体的方法は、会社計算規則および会社施行規則に規定されている。
会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)
(貸借対照表等の電磁的方法による公開の方法)
第百四十七条
法第四百四十条第三項の規定による措置は、会社法施行規則第二百二十二条第一項第一号ロに掲げる方法のうち、インターネットに接続された自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。)を使用する方法によって行わなければならない。
会社法施行規則(平成十八年法務省令第十二号)
(電磁的方法)
第二百二十二条
法第二条第三十四号に規定する電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものは、次に掲げる方法とする。
一 電子情報処理組織を使用する方法のうちイ又はロに掲げるもの
イ 送信者の使用に係る電子計算機と受信者の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法
ロ 送信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された情報の内容を電気通信回線を通じて情報の提供を受ける者の閲覧に供し、当該情報の提供を受ける者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該情報を記録する方法
二 磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに情報を記録したものを交付する方法
2 前項各号に掲げる方法は、受信者がファイルへの記録を出力することにより書面を作成することができるものでなければならない。
2.「貸借対照表等の電磁的方法による公開の方法」と登記
(1)条文の確認
「貸借対照表等の電磁的方法による公開の方法」を取る場合、つぎの事項が登記事項となる。
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(株式会社の設立の登記)
第九百十一条
(・・・)
二十六 第四百四十条第三項の規定による措置をとることとするときは、同条第一項に規定する貸借対照表の内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
二十七 第九百三十九条第一項の規定による公告方法についての定款の定めがあるときは、その定め
二十八 前号の定款の定めが電子公告を公告方法とする旨のものであるときは、次に掲げる事項
イ 電子公告により公告すべき内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
ロ 第九百三十九条第三項後段の規定による定款の定めがあるときは、その定め
二十九 第二十七号の定款の定めがないときは、第九百三十九条第四項の規定により官報に掲載する方法を公告方法とする旨
会社法施行規則(平成十八年法務省令第十二号)
第二百二十条
次の各号に掲げる規定に規定する法務省令で定めるものは、当該各号に定める行為をするために使用する自動公衆送信装置のうち当該行為をするための用に供する部分をインターネットにおいて識別するための文字、記号その他の符号又はこれらの結合であって、情報の提供を受ける者がその使用に係る電子計算機に入力することによって当該情報の内容を閲覧し、当該電子計算機に備えられたファイルに当該情報を記録することができるものとする。
一 法第九百十一条第三項第二十六号 法第四百四十条第三項の規定による措置
二 法第九百十一条第三項第二十八号イ 株式会社が行う電子公告
三 法第九百十二条第九号イ 合名会社が行う電子公告
四 法第九百十三条第十一号イ 合資会社が行う電子公告
五 法第九百十四条第十号イ 合同会社が行う電子公告
六 法第九百三十三条第二項第四号 法第八百十九条第三項に規定する措置
七 法第九百三十三条第二項第六号イ 外国会社が行う電子公告
2 法第九百十一条第三項第二十八号 に規定する場合には、同号 イに掲げる事項であって、決算公告(法第四百四十条第一項 の規定による公告をいう。以下この項において同じ。)の内容である情報の提供を受けるためのものを、当該事項であって決算公告以外の公告の内容である情報の提供を受けるためのものと別に登記することができる。
(2)整理
官報または日刊新聞紙による公告方法を選択する会社が、決算公告については例外的に電磁的方法による公開を選択する場合、貸借対照表を確認するためのURLが登記事項となる。
なお、電子公告を選択する場合には「貸借対照表等の電磁的方法による公開の方法」を選択することはできないが、決算公告を確認できるURLを、決算公告以外の公告を確認できるURLと分けて登記することができる(222条2項)。
3.電子公告の公告期間や公告調査について
(1)条文の確認
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(電子公告の公告期間等)
第九百四十条
株式会社又は持分会社が電子公告によりこの法律の規定による公告をする場合には、次の各号に掲げる公告の区分に応じ、当該各号に定める日までの間、継続して電子公告による公告をしなければならない。
一 この法律の規定により特定の日の一定の期間前に公告しなければならない場合における当該公告 当該特定の日
二 第四百四十条【計算書類の公告】第一項の規定による公告 同項の定時株主総会の終結の日後五年を経過する日
三 公告に定める期間内に異議を述べることができる旨の公告 当該期間を経過する日
四 前三号に掲げる公告以外の公告 当該公告の開始後一箇月を経過する日
2 外国会社が電子公告により第八百十九条第一項の規定による公告をする場合には、同項の手続の終結の日後五年を経過する日までの間、継続して電子公告による公告をしなければならない。
3 前二項の規定にかかわらず、これらの規定により電子公告による公告をしなければならない期間(以下この章において「公告期間」という。)中公告の中断(不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置かれた情報がその状態に置かれないこととなったこと又はその情報がその状態に置かれた後改変されたことをいう。以下この項において同じ。)が生じた場合において、次のいずれにも該当するときは、その公告の中断は、当該公告の効力に影響を及ぼさない。
一 公告の中断が生ずることにつき会社が善意でかつ重大な過失がないこと又は会社に正当な事由があること。
二 公告の中断が生じた時間の合計が公告期間の十分の一を超えないこと。
三 会社が公告の中断が生じたことを知った後速やかにその旨、公告の中断が生じた時間及び公告の中断の内容を当該公告に付して公告したこと。
(電子公告調査)
第九百四十一条
この法律又は他の法律の規定による公告(第四百四十条第一項の規定による公告を除く。以下この節において同じ。)を電子公告によりしようとする会社は、公告期間中、当該公告の内容である情報が不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置かれているかどうかについて、法務省令で定めるところにより、法務大臣の登録を受けた者(以下この節において「調査機関」という。)に対し、調査を行うことを求めなければならない。
(2)整理
もっとも頻繁に行うであろう決算公告(上記2号)においては、当該決算にかかる定時株主総会の終結の日から5年を経過する日まで継続して公告しなければいけない。
さらに、941の規定により、公告期間中、適正に公告がなさされていたか調査を受ける必要がある(当該規定において決算公告は調査不要とされている。)。