株式会社の電子公告について(その1)

2017年9月12日

1.電子公告とは

(1)公告方法として許容

参照条文

会社法(平成十七年七月二十六日法律第八十六号)

第九百三十九条  
会社は、公告方法として、次に掲げる方法のいずれかを定款で定めることができる。
一  官報に掲載する方法
二  時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
三  電子公告
2  (・・・)
3  会社又は外国会社が第一項第三号に掲げる方法を公告方法とする旨を定める場合には、電子公告を公告方法とする旨を定めれば足りる。この場合においては、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合の公告方法として、同項第一号又は第二号に掲げる方法のいずれかを定めることができる。
4  第一項又は第二項の規定による定めがない会社又は外国会社の公告方法は、第一項第一号の方法とする。

 (2)電子公告の特徴

電子公告を公告方法とする場合には、その旨を定款で定めれば足り、URLを定款で定める必要はない。

電子公告の場合には、事故等により電子公告できない場合の公告方法を定めることができる。
(ほんらいは、公告方法を「選択的に定めること」はできないとされている。)

また、具体的なURLの決定は、業務執行としておこなわれるもので、株主総会・取締役会決議は必須でない。
(登記申請に際してもURL決定にかかる書面は不要とされる。委任を受けるケースでは委任状に記載するのか?)

(3)「電子公告」の定義

参照条文

会社法(平成十七年七月二十六日法律第八十六号)

(定義)
第二条 
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(・・・)
三十四 電子公告 公告方法のうち、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により不特定多数の者が公告すべき内容である情報の提供を受けることができる状態に置く措置であって法務省令で定めるものをとる方法をいう。

参照条文

会社法施行規則(平成十八年法務省令第十二号)

(電磁的方法)
第二百二十二条 
法第二条第三十四号に規定する電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものは、次に掲げる方法とする。
一 電子情報処理組織を使用する方法のうちイ又はロに掲げるもの
イ 送信者の使用に係る電子計算機と受信者の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法
ロ 送信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された情報の内容を電気通信回線を通じて情報の提供を受ける者の閲覧に供し、当該情報の提供を受ける者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該情報を記録する方法
二 磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに情報を記録したものを交付する方法
2 前項各号に掲げる方法は、受信者がファイルへの記録を出力することにより書面を作成することができるものでなければならない。

(電子公告を行うための電磁的方法)
第二百二十三条 
法第二条第三十四号に規定する措置であって法務省令で定めるものは、前条第一項第一号ロに掲げる方法のうち、インターネットに接続された自動公衆送信装置を使用するものによる措置とする。

要するに、インターネットで誰でも閲覧できるようにすること(かつ印刷して書面にできること)が、電子公告である。

2.電子公告の登記について

(1)条文の確認

参照条文

会社法(平成十七年七月二十六日法律第八十六号)

第九百十一条  
株式会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければならない。
(・・・)
3  第一項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
(・・・)
二十七  第九百三十九条第一項の規定による公告方法についての定款の定めがあるときは、その定め
二十八  前号の定款の定めが電子公告を公告方法とする旨のものであるときは、次に掲げる事項
イ 電子公告により公告すべき内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
ロ 第九百三十九条第三項後段の規定による定款の定めがあるときは、その定め
二十九  第二十七号の定款の定めがないときは、第九百三十九条第四項の規定により官報に掲載する方法を公告方法とする旨

参照条文

会社法施行規則(平成十八年法務省令第十二号)

第二百二十条  
次の各号に掲げる規定に規定する法務省令で定めるものは、当該各号に定める行為をするために使用する自動公衆送信装置のうち当該行為をするための用に供する部分をインターネットにおいて識別するための文字、記号その他の符号又はこれらの結合であって、情報の提供を受ける者がその使用に係る電子計算機に入力することによって当該情報の内容を閲覧し、当該電子計算機に備えられたファイルに当該情報を記録することができるもの【※要するにURL】とする。
一  (・・・)
二  法第九百十一条第三項第二十八号 イ 株式会社が行う電子公告
(・・・)
2 法第九百十一条第三項第二十八号に規定する場合には、同号イに掲げる事項であって、決算公告(法第四百四十条第一項の規定による公告をいう。以下この項において同じ。)の内容である情報の提供を受けるためのものを、当該事項であって決算公告以外の公告の内容である情報の提供を受けるためのものと別に登記することができる。

(2)整理

 以上より、登記事項はつぎのとおり。

  1. 公告方法につき定款の定めがあるときには、その定め。
  2. 電子公告の場合には、上記に加え、URL(法務省令は上記規則参照)。
  3. 電子公告の場合で、代替的公告方法が定められているときには当該方法。
  4. 定款の定めがないときには、官報公告とする旨。 

(3)登記記録例から

なんとなくイメージがわかないので、記録例(平成18年4月26日民商第1110号依命通知)を参照してみる。

第4節 株式会社の登記
第2 商号, 本店, 目的, 公告方法等の変更の登記
4 公告方法を変更した場合
(2) 電子公告を公告をする方法と定めた場合
ウ 貸借対照表の公告アドレスを別に定めた場合

公告をする方法電子公告の方法により行う。
http://www.dai-ichi-d
enki.co.jp/koukoku/in
dex.html
当会社の公告は、電子公告による公告をするこ
とができない事故その他のやむを得ない事由が
生じた場合には、官報に掲載してする。
貸借対照表の公告
http://www.dai-ichi-d
enki.co.jp/kessan/ind
ex.html
平成18年4月26日民商第1110号依命通知(発出当時のもの)
また予備的公告方法の記載は筆者が追記

同通知の注として記載されているが、アルファベットは全角文字で入力される点に留意。

(4)URLをどこまで記載すればよいのか?

登記されたURLを直打ちすることで直接的に公告内容の記録にアクセスできる必要はないとされている(それが求められると、すべての公告を1つに記録しないといけない?)

さらには、HPのレイアウト変更で公告ページのアドレスも変更されることがあるから、表示されるページから検索によらずにリンク先が確認できるようであれば、たとえばトップページでも可とされる。
(なお、そもそも自社サイトでなくとも・・)

くわしくは、下記を参照。

【参照文献】ハンドブック第4版P.22
【参照文献】登記研究658号119頁「平成一四年四月・五月施行商法等改正に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて(下)」P.143以下

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