監査役設置会社とは(会計限定監査役との関係)

1.監査役設置会社とは

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

第二条 
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(・・・)
九 監査役設置会社 監査役を置く株式会社(その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるものを除く)又はこの法律の規定により監査役を置かなければならない株式会社をいう。
(・・・)

定款に会計限定の記載がある場合は、原則的には、その会社は「監査役設置会社」ではない。
上記のように、定義規定においては「除く」とされている。

ただし、下記で述べるように、規定によっては含めたりするケースがある点に注意が必要。

2.会計限定監査役とは

参照条文

(定款の定めによる監査範囲の限定)
第三百八十九条 
公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)は、第三百八十一条第一項の規定にかかわらず、その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができる。
2 前項の規定による定款の定めがある株式会社の監査役は、法務省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければならない。
3 前項の監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする会計に関する議案、書類その他の法務省令で定めるものを調査し、その調査の結果を株主総会に報告しなければならない。
4 第二項の監査役は、いつでも、次に掲げるものの閲覧及び謄写をし、又は取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して会計に関する報告を求めることができる。
一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面
二 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したもの
5 第二項の監査役は、その職務を行うため必要があるときは、株式会社の子会社に対して会計に関する報告を求め、又は株式会社若しくはその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。
6 前項の子会社は、正当な理由があるときは、同項の規定による報告又は調査を拒むことができる。
7 第三百八十一条から第三百八十六条までの規定は、第一項の規定による定款の定めがある株式会社については、適用しない。

適用除外される条文のタイトルは、つぎのとおり。

  • 381条:監査役の権限
  • 382条:取締役への報告義務
  • 383条:取締役会への出席義務等
  • 384条:株主総会に対する報告義務
  • 385条:監査役による取締役の行為の差止め
  • 386条:監査役設置会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表等

報告義務や出席義務も適用除外となる。
(役割は、通常の監査役と比べて、大きく異なるといえる。)

3.監査役設置会社と会計限定監査役の関係

(1)含まれるケースも

参照条文

(計算書類等の監査等)
第四百三十六条 
監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含み、会計監査人設置会社を除く。)においては、前条第二項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、法務省令で定めるところにより、監査役の監査を受けなければならない。
2 会計監査人設置会社においては、次の各号に掲げるものは、法務省令で定めるところにより、当該各号に定める者の監査を受けなければならない。
一 前条第二項の計算書類及びその附属明細書 監査役(監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会)及び会計監査人
二 前条第二項の事業報告及びその附属明細書 監査役(監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会)
3 取締役会設置会社においては、前条第二項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書(第一項又は前項の規定の適用がある場合にあっては、第一項又は前項の監査を受けたもの)は、取締役会の承認を受けなければならない。

(費用等の請求)
第三百八十八条 
監査役がその職務の執行について監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)に対して次に掲げる請求をしたときは、当該監査役設置会社は、当該請求に係る費用又は債務が当該監査役の職務の執行に必要でないことを証明した場合を除き、これを拒むことができない。
一 費用の前払の請求
二 支出した費用及び支出の日以後におけるその利息の償還の請求
三 負担した債務の債権者に対する弁済(当該債務が弁済期にない場合にあっては、相当の担保の提供)の請求

かっこ書きで含まれるケースもある。

(2)会社の登記における取扱い

参照条文

(株式会社の設立の登記)
第九百十一条 
(・・・)
3 第一項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
(・・・)
十七 監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)であるときは、その旨及び次に掲げる事項
イ 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社であるときは、その旨
ロ 監査役の氏名

商業登記においては、「監査役設置会社」として登記がなされるものの、限定がある場合には、その旨があわせて登記されることに。

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