目次
1.みなし決議(書面決議)
(1)株主総会の場合
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(株主総会の決議の省略)
第三百十九条
取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。
(・・・)
5 第一項の規定により定時株主総会の目的である事項のすべてについての提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされた場合には、その時に当該定時株主総会が終結したものとみなす。
- 取締役又は株主からの提案
- 株主の全員が書面等により同意
- 株主総会の決議があったものとみなす
会社法施行規則(平成十八年法務省令第十二号)
(議事録)
第七十二条
(・・・)
4 次の各号に掲げる場合には、株主総会の議事録は、当該各号に定める事項を内容とするものとする。
一 法第三百十九条第一項の規定により株主総会の決議があったものとみなされた場合 次に掲げる事項
イ 株主総会の決議があったものとみなされた事項の内容
ロ イの事項の提案をした者の氏名又は名称
ハ 株主総会の決議があったものとみなされた日
ニ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
二 法第三百二十条の規定により株主総会への報告があったものとみなされた場合 次に掲げる事項
イ 株主総会への報告があったものとみなされた事項の内容
ロ 株主総会への報告があったものとみなされた日
ハ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
議事録作成者(その資格)については、ハンドブック4版P.150以下を参照。
(2)取締役会の場合
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(取締役会の決議の省略)
第三百七十条
取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。
(議事録等)
第三百七十一条
取締役会設置会社は、取締役会の日(前条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた日を含む。)から十年間、第三百六十九条第三項の議事録又は前条の意思表示を記載し、若しくは記録した書面若しくは電磁的記録(以下この条において「議事録等」という。)をその本店に備え置かなければならない。
(・・・)
- (前提)定款の定め
- 取締役からの提案
- 取締役の全員が書面等により同意
(監査役設置会社にあっては、監査役が異議を述べたときは不可。) - 取締役会の決議があったものとみなす
会社法施行規則(平成十八年法務省令第十二号)
(取締役会の議事録)
第百一条
(・・・)
4 次の各号に掲げる場合には、取締役会の議事録は、当該各号に定める事項を内容とするものとする。
一 法第三百七十条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた場合 次に掲げる事項
イ 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
ロ イの事項の提案をした取締役の氏名
ハ 取締役会の決議があったものとみなされた日
ニ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
二 法第三百七十二条第一項(同条第三項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により取締役会への報告を要しないものとされた場合 次に掲げる事項
イ 取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容
ロ 取締役会への報告を要しないものとされた日
ハ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(取締役会の決議)
第三百六十九条
(・・・)
3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
(・・・)
2.商業登記規則61条6項
(1)条文
商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)
(添付書面)
第六十一条
(・・・)
6 代表取締役又は代表執行役の就任による変更の登記の申請書には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
一 株主総会又は種類株主総会の決議によつて代表取締役を定めた場合 議長及び出席した取締役が株主総会又は種類株主総会の議事録に押印した印鑑
二 取締役の互選によつて代表取締役を定めた場合 取締役がその互選を証する書面に押印した印鑑
三 取締役会の決議によつて代表取締役又は代表執行役を選定した場合 出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑
(・・・)
(2)内容の整理
代表取締役の就任による変更の登記の申請書には、代表取締役の選定方法ごとに、押印及び印鑑証明書の提出が求められる。
(ただし、押印を要する書面に、変更前の代表取締役が登記所届出印(会社代表印)を押印している場合を除く。)
選定方法 | 押印すべき人 |
株主総会の決議 | 議長及び出席した取締役 |
取締役の互選 | 取締役 |
取締役会の決議 | 出席した取締役及び監査役 |
3.非取締役会設置会社における新代表取締役の選定
(1)検討の前提と選定のプロセス
- 現代表取締役は、新代表取締役の選定前に「取締役を辞任」している。
- 現代表取締役の辞任に伴い、後任の取締役を株主総会で選任し、さらに後任の代表取締役も株主総会により定めた。
- 株主総会は書面決議(みなし決議)の方法による。
こんなケースでは、規則61条6項の規定は、どのように適用されるのか?
(2)株主総会議事録
書面決議(みなし決議)について作成される株主総会議事録については、会社法上は「押印」は必須でない。
ただし、株主総会決議により代表取締役を選定した場合には、規則61条6項1号により「議長及び出席した取締役」による押印及び印鑑証明書の提出が必要となる。
決議省略の場合には「議長」や「出席した取締役」は存在しない。
真正担保のために、取締役全員に押印させ印鑑証明書添付させる意味もない。
そこで「議長」≒「議事録作成者」として規則61条6項1号を類推適用するのが登記実務(ハンドブック4版P.406。通達等でのルール設定はなし?)となっている。
4.取締役会設置会社における新代表取締役の選定
(1)検討の前提と選定のプロセス
- 現代表取締役は、新代表取締役の選定前に「取締役を辞任」している。
- 現代表取締役の辞任に伴い、後任の取締役を株主総会で選任し、さらに後任の代表取締役を取締役会において選定した。
- 株主総会も取締役会も書面決議(みなし決議)の方法による。
こんなケースでは、規則61条6項の規定は、どのように適用されるのか?
(2)株主総会議事録
規則61条6項の規定の適用対象外となる。
(そのため押印すら・・・。)
(3)取締役会議事録
取締役会議事録については、会社法369条3項により、「出席した取締役及び監査役」に対して署名または記名押印することが義務付けられている。
一方で、書面決議(みなし決議)について作成される議事録については、取締役・監査役に押印義務はないとされている(ハンドブック4版P.177参照。(私見)監査役はともかく、取締役については同意書が提出されているはずだから不要でも問題はないように思う。)。
ただし、規則61条6項の規定の適用がある場合には、「出席した取締役及び監査役」に押印及び印鑑証明書の提出が求められることに。
そして、書面決議(みなし決議)について作成される議事録については、さきの株主総会議事録同様に規則61条6項3号を類推適用するのが登記実務(ハンドブック4版P.407。通達等でのルール設定はなし?)。
類推のされ方が少し特殊で「出席した取締役及び監査役」≒「同意した取締役」と整理されており、監査役については押印不要とされている(その理由付けについては上記ハンドブックを参照。)。
この点については、「なかなか技巧的だぁ」と感じるので、通達等で正式に整理してほしい(通達を見逃していたら申し訳ございません。)。