医療法人の登記(設立登記)

2023年3月22日

1.医療法人の登記

以下、「社会医療法人」などの特別な医療法人や「財団」については言及しない。

(1)医療法

参照条文

医療法(昭和二十三年法律第二百五号)

第三十九条 
病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を開設しようとする社団又は財団は、この法律の規定により、これを法人とすることができる。
2 前項の規定による法人は、医療法人と称する。

第四十三条 
医療法人は、政令で定めるところにより、その設立、従たる事務所の新設、事務所の移転、その他登記事項の変更、解散、合併、分割、清算人の就任又はその変更及び清算の結了の各場合に、登記をしなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することはできない。

医療法人については、政令で定めるところにより、登記をする必要がある。

この「政令」は、組合等登記令となる。

(2)組合等登記令

参照条文

組合等登記令(昭和三十九年政令第二十九号)

(適用範囲)
第一条 
別表の名称の欄に掲げる法人(以下「組合等」という。)の登記については、他の法令に別段の定めがある場合を除くほか、この政令の定めるところによる。

別表(第一条、第二条、第六条、第七条の二、第八条、第十四条、第十七条、第二十条、第二十一条の三関係)

名称根拠法登記事項
・・・・・・・・・
医療法人医療法(昭和二十三年法律第二百五号)資産の総額
医療法第四十六条の三の六において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第四十七条の二に規定する電子提供措置をとる旨の定めがあるときは、その定め

組合等登記令を確認すると、医療法人は、組合等登記令の適用のある法人であることが確認できる。

2.医療法人の設立

(1)医療法

参照条文

医療法(昭和二十三年法律第二百五号)

第四十四条 
医療法人は、その主たる事務所の所在地の都道府県知事(以下この章(第三項及び第六十六条の三を除く。)において単に「都道府県知事」という。)の認可を受けなければ、これを設立することができない。
2 医療法人を設立しようとする者は、定款又は寄附行為をもつて、少なくとも次に掲げる事項を定めなければならない。
一 目的
二 名称
三 その開設しようとする病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院(地方自治法第二百四十四条の二第三項に規定する指定管理者として管理しようとする公の施設である病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を含む。)の名称及び開設場所
四 事務所の所在地
五 資産及び会計に関する規定
六 役員に関する規定
七 理事会に関する規定
八 社団たる医療法人にあつては、社員総会及び社員たる資格の得喪に関する規定
九 財団たる医療法人にあつては、評議員会及び評議員に関する規定
十 解散に関する規定
十一 定款又は寄附行為の変更に関する規定
十二 公告の方法
3 (・・・)
4 医療法人の設立当初の役員は、定款又は寄附行為をもつて定めなければならない。
5 第二項第十号に掲げる事項中に、残余財産の帰属すべき者に関する規定を設ける場合には、その者は、国若しくは地方公共団体又は医療法人その他の医療を提供する者であつて厚生労働省令で定めるもののうちから選定されるようにしなければならない。
6 この節に定めるもののほか、医療法人の設立認可の申請に関して必要な事項は、厚生労働省令で定める

医療法人の設立にあたっては、「主たる事務所の所在地の都道府県知事」の認可を受けなければならない。

認可に関して必要な事項は、医療法施行規則において定められている。

(2)医療法施行規則

参照条文

医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)

(設立の認可の申請)
第三十一条 
法第四十四条第一項の規定により、医療法人設立の認可を受けようとする者は、申請書に次の書類を添付して、その主たる事務所の所在地の都道府県知事(以下単に「都道府県知事」という。)に提出しなければならない。
一 定款又は寄附行為
二 設立当初において当該医療法人に所属すべき財産の財産目録
三 設立決議録
四 不動産その他の重要な財産の権利の所属についての登記所、銀行等の証明書類
五 当該医療法人の開設しようとする病院、法第三十九条第一項に規定する診療所、介護老人保健施設又は介護医療院の診療科目、従業者の定員並びに敷地及び建物の構造設備の概要を記載した書類
六 法第四十二条第四号又は第五号に掲げる業務を行おうとする医療法人にあつては、当該業務に係る施設の職員、敷地及び建物の構造設備の概要並びに運営方法を記載した書類
七 設立後二年間の事業計画及びこれに伴う予算書
八 設立者の履歴書
九 設立代表者を定めたときは、適法に選任されたこと並びにその権限を証する書類
十 役員の就任承諾書及び履歴書
十一 開設しようとする病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院の管理者となるべき者の氏名を記載した書面

(残余財産の帰属すべき者となることができる者)
第三十一条の二 
法第四十四条第五項に規定する厚生労働省令で定めるものは、次のとおりとする。
一 公的医療機関の開設者又はこれに準ずる者として厚生労働大臣が認めるもの
二 財団である医療法人又は社団である医療法人であつて持分の定めのないもの

医療法人の設立認可を受けるにあたっては、下記のとおり、書類を提出する必要がある。

  • 申請書
  • 定款
  • 財産目録
  • 設立決議録
  • 不動産などの重要な財産の権利の所属についての証明書類
  • 開設しようとする診療所等の診療科目、従業者の定員並びに敷地及び建物の構造設備の概要を記載した書類
  • 設立後2年間の事業計画及び予算書
  • 設立者の履歴書
  • 設立代表者の選任を証する書面
  • 役員の就任承諾書と履歴書
  • 開設しようとする診療所等の管理者となるべき者の氏名を記載した書面

また、定款において定める「残余財産の帰属すべき者に関する規定」については、「帰属すべき者」となりうるのは、つぎの者に限られる。

  • 地方公共団体
  • 公的医療機関の開設者又はこれに準ずる者として厚生労働大臣が認めるもの
  • 財団である医療法人又は社団である医療法人であつて持分の定めのないもの

3.医療法人の設立の登記

(1)医療法

参照条文

医療法(昭和二十三年法律第二百五号)

第四十六条 
医療法人は、その主たる事務所の所在地において政令の定めるところにより設立の登記をすることによつて、成立する。
2 医療法人は、成立の時に財産目録を作成し、常にこれをその主たる事務所に備え置かなければならない。

医療法人は、政令(組合等登記令)で定めるところにより「設立の登記」をすることによって、成立する。

(2)組合等登記令

参照条文

組合等登記令(昭和三十九年政令第二十九号)

(設立の登記)
第二条 
組合等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から二週間以内にしなければならない。
2 前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 目的及び業務
二 名称
三 事務所の所在場所
四 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
五 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
六 別表の登記事項の欄に掲げる事項

別表(第一条、第二条、第六条、第七条の二、第八条、第十四条、第十七条、第二十条、第二十一条の三関係)

名称根拠法登記事項
・・・・・・・・・
医療法人医療法(昭和二十三年法律第二百五号)資産の総額
医療法第四十六条の三の六において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第四十七条の二【理事が社員総会の招集の手続を行う際の資料の電子提供】に規定する電子提供措置をとる旨の定めがあるときは、その定め

医療法人の設立登記にあたっては、つぎの事項を登記しなければならない。

  • 目的及び業務
  • 名称
  • 事務所の所在場所
  • 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
  • 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
  • 資産の総額
  • 電子提供措置をとる旨の定めがあるときは、その定め

医療法人においては「設立の認可」が設立の要件であるため、設立の認可手続が終了した日から二週間以内に設立登記を申請しなければならない。

資格名称は「理事長」となる。
(参照:昭和62年3月11日民四第1085号通知)

参照条文

医療法(昭和二十三年法律第二百五号)

第四十六条の六 
医療法人(次項に規定する医療法人を除く。)の理事のうち一人は、理事長とし、医師又は歯科医師である理事のうちから選出する。ただし、都道府県知事の認可を受けた場合は、医師又は歯科医師でない理事のうちから選出することができる。

4.医療法人の設立の登記の添付書類

(1)医療法

規定なし。
組合等登記令による。

(2)組合等登記令

参照条文

組合等登記令(昭和三十九年政令第二十九号)

(設立の登記の申請)
第十六条 
設立の登記は、組合等を代表すべき者の申請によつてする。
2 設立の登記の申請書には、定款又は寄附行為及び組合等を代表すべき者の資格を証する書面を添付しなければならない。
3 第二条第二項第六号に掲げる事項を登記すべき組合等の設立の登記の申請書には、その事項を証する書面を添付しなければならない。

(商業登記法の準用)
第二十五条 
商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第一条の三から第五条まで、第七条から第十五条まで、第十七条から第十九条の三まで、第二十一条から第二十三条の二まで、第二十四条(第十五号を除く。)、第二十五条から第二十七条まで、第五十一条から第五十三条まで、第七十一条第一項、第八十四条、第八十七条、第八十八条、第百三十二条から第百三十七条まで及び第百三十九条から第百四十八条までの規定は組合等の登記について、同法第七十九条、第八十二条及び第八十三条の規定は組合等の登記(第二十八条第六項の登記を除く。)について、それぞれ準用する。この場合において、同法第二十五条中「訴え」とあるのは「訴え又は官庁に対する請求」と、同条第三項中「その本店の所在地を管轄する地方裁判所」とあるのは「その主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所又は官庁」と、同法第七十九条中「吸収合併による」とあるのは「吸収合併若しくは組合等登記令第八条第二項に規定する承継(以下「承継」という。)による」と、「合併を」とあるのは「合併又は承継を」と、「吸収合併により」とあるのは「吸収合併若しくは承継により」と、同法第八十二条第一項中「合併による」とあるのは「合併又は承継による」と、「吸収合併後」とあるのは「吸収合併若しくは承継後」と、同法第八十三条第二項中「吸収合併に」とあるのは「吸収合併若しくは承継に」と読み替えるものとする。

箇条書きで整理すると、つぎのとおり。

  • 定款
  • 代表すべき者の資格を証する書面
    • 設立当初の理事及び理事長を定めた定款が該当する。
    • くわえて、理事長が、理事及び理事長への就任について承諾をしたことを証する書面。
      (就任承諾書について、押印規定の適用はない?)
  • 資産の総額を証する書面
    医療法46条2項に定める「財産目録」が該当する。

そのほかにも印鑑証明との関係で、つぎの書類。

  • 印鑑届書
  • 理事長の個人の印鑑証明書
  • 印鑑カード交付申請書

(3)商業登記法の準用

さあ、準用だ!!

参照条文

商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)

第十九条 
官庁の許可を要する事項の登記を申請するには、申請書に官庁の許可書又はその認証がある謄本を添附しなければならない。

(登記申請の方式)
第十七条 
登記の申請は、書面でしなければならない。
2 申請書には、次の事項を記載し、申請人又はその代表者(当該代表者が法人である場合にあつては、その職務を行うべき者)若しくは代理人が記名押印しなければならない。
一 申請人の氏名及び住所、申請人が会社であるときは、その商号及び本店並びに代表者の氏名又は名称及び住所(当該代表者が法人である場合にあつては、その職務を行うべき者の氏名及び住所を含む。)
二 代理人によつて申請するときは、その氏名及び住所
三 登記の事由
四 登記すべき事項
五 登記すべき事項につき官庁の許可を要するときは、許可書の到達した年月日
六 登録免許税の額及びこれにつき課税標準の金額があるときは、その金額
七 年月日
八 登記所の表示
3 前項第四号に掲げる事項を記録した電磁的記録が法務省令で定める方法により提供されたときは、同項の規定にかかわらず、申請書には、当該電磁的記録に記録された事項を記載することを要しない。

というわけで、認可書も必要となる。

なお、認可書到達の年月日が設立の日となるため「認可書到達の年月日」の記載が必要となる。

(4)商業登記規則61条は?

参照条文

各種法人等登記規則(昭和三十九年法務省令第四十六号)

(趣旨)
第一条 
会社、一般社団法人及び一般財団法人、投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第十二項に規定する投資法人並びに資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第二条第三項に規定する特定目的会社を除くその他の法人(以下「各種法人」という。)並びに外国会社を除くその他の外国法人(以下「各種外国法人」という。)の登記の取扱手続は、この省令の定めるところによる。

(商業登記規則等の準用)
第五条 
商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)第一条の二第一項、第二条から第六条まで、第九条から第十一条まで、第十三条から第二十二条まで、第二十七条から第四十五条まで、第四十八条から第五十条まで、第五十三条第二項、第五十八条から第六十条まで、第七十五条、第九十八条から第百四条まで、第百六条から第百九条まで、第百十一条、第百十二条及び第百十四条から第百十八条までの規定は各種法人等の登記について、商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第四十六条第一項並びに同規則第一条の二第二項、第六十一条第一項、第六項及び第八項、第六十五条から第六十八条まで、第七十条から第七十四条まで、第七十六条から第七十八条まで、第八十条から第八十一条の二まで、第百十条並びに第百十三条の規定は各種法人の登記について、同規則第一条の二第三項、第九十三条、第九十四条第二項、第九十五条、第九十六条第一項(第三号から第六号までを除く。)及び第二項並びに第九十七条の規定は各種外国法人の登記について準用する。この場合において、同規則第一条の二第一項中「登記所及び次の各号に掲げる区分」とあるのは「登記所」と、同条第二項中「法第七十九条に規定する新設合併」とあるのは「新設合併」と、同規則第九十六条第一項第二号中「登記所の管轄区域内に日本における代表者の住所地がある場合(すべての日本における営業所を閉鎖した場合に限る。)」とあるのは「清算の開始の命令がある場合」と読み替えるものとする。

まずは、各種法人等登記規則を確認する。
各種法人等登記規則の適用対象となる法人は、つぎの法人以外の法人である。

  • 会社
  • 一般社団法人及び一般財団法人
  • 投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第十二項に規定する投資法人
  • 資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第二条第三項に規定する特定目的会社
参照条文

商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)

(添付書面)
第六十一条 
定款の定め又は裁判所の許可がなければ登記すべき事項につき無効又は取消しの原因が存することとなる申請については、申請書に、定款又は裁判所の許可書を添付しなければならない。
2 (・・・株主リスト(全員同意)・・・)
3 (・・・株主リスト(決議)・・・)
4 (・・・取締役の就任承諾書への押印・・・)
5 (・・・取締役会設置会社における代表取締役の就任承諾書への押印・・・)
6 代表取締役又は代表執行役の就任による変更の登記の申請書には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
一 株主総会又は種類株主総会の決議によつて代表取締役を定めた場合 議長及び出席した取締役が株主総会又は種類株主総会の議事録に押印した印鑑
二 取締役の互選によつて代表取締役を定めた場合 取締役がその互選を証する書面に押印した印鑑
三 取締役会の決議によつて代表取締役又は代表執行役を選定した場合 出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑
7 (・・・いわゆる「本人確認書類」の添付・・・)
8 代表取締役若しくは代表執行役又は取締役若しくは執行役(登記所に印鑑を提出した者がある場合にあつては当該印鑑を提出した者に限り、登記所に印鑑を提出した者がない場合にあつては会社の代表者に限る。以下この項において「代表取締役等」という。)の辞任による変更の登記の申請書には、当該代表取締役等(その者の成年後見人又は保佐人が本人に代わつて行う場合にあつては、当該成年後見人又は保佐人)が辞任を証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、登記所に印鑑を提出した者がある場合であつて、当該書面に押印した印鑑と当該代表取締役等が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
(・・・)

医療法人との関係で、準用される商業登記規則61条の規定は、つぎのとおり。

  • 61条1項:
    定款や認可証の添付
  • 61条6項:
    理事長の変更登記申請における印鑑証明書の添付
  • 61条8項:
    理事長の辞任による変更登記申請における印鑑証明書の添付

というわけで、設立登記申請に際しては、印鑑証明書の添付は要求されない(ただし印鑑届に添付する印鑑証明書は必要となってくる。)。

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