医療法人の理事会議事録(理事長変更登記と署名押印)

2018年8月17日

1.医療法の条文を確認

参照条文

医療法(昭和二十三年法律第二百五号)

第四十六条の七の二 
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第九十一条から第九十八条まで(第九十一条第一項各号及び第九十二条第一項を除く。)の規定は、社団たる医療法人及び財団たる医療法人の理事会について準用する。この場合において、当該理事会について準用する同法第九十一条第一項中「次に掲げる理事」とあり、及び同条第二項中「前項各号に掲げる理事」とあるのは「理事長」と、同法第九十五条第三項及び第四項並びに第九十七条第二項第二号中「法務省令」とあるのは「厚生労働省令」と読み替えるものとし、財団たる医療法人の理事会について準用する同法第九十一条第二項、第九十三条第一項、第九十四条第一項、第九十五条第一項及び第三項並びに第九十六条中「定款」とあるのは「寄附行為」と、同法第九十七条第二項中「社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て」とあるのは「評議員は、財団たる医療法人の業務時間内は、いつでも」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

参照条文

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)

第九十五条
(・・・)
3 理事会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した理事(定款で議事録に署名し、又は記名押印しなければならない者を当該理事会に出席した代表理事とする旨の定めがある場合にあっては、当該代表理事)及び監事は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。

というわけで、医療法が準用する一般社団法人法95条により、つぎのような規定となる。

  • 【原則】出席した理事及び監事
  • 【例外】定款で、署名者等を「当該理事会に出席した代表理事とする」旨の定めがある場合には当該代表理事
    (※医療法では、代表理事ではなく「理事長」)

なお、モデル定款では、つぎのような規定になっている。

第 39 条
理事会の議事については、法令で定めるところにより、議事録を作成する。
2 理事会に出席した理事及び監事は、前項の議事録に署名し、又は記名押印する。

(備考欄において「署名し、又は記名押印する者を、理事会に出席した理事長及び監事とすることも可。」と記載されている。

社団医療法人定款例及び財団医療法人寄附行為例(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000135131.html)

2.医療法人の理事長変更登記の際には?

(1)各種法人等登記規則

参照条文

各種法人等登記規則(昭和三十九年法務省令第四十六号)

(商業登記規則等の準用)
第五条 
商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)第一条の二第一項、第二条から第六条まで、第九条から第十一条まで、第十三条から第二十二条まで、第二十七条から第四十五条まで、第四十八条から第五十条まで、第五十三条第二項、第五十八条から第六十条まで、第七十五条、第九十八条から第百四条まで、第百六条から第百九条まで、第百十一条、第百十二条及び第百十四条から第百十八条までの規定は各種法人等の登記について、商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第四十六条第一項並びに同規則第一条の二第二項、第六十一条第一項、第六項及び第八項、第六十五条から第六十八条まで、第七十条から第七十四条まで、第七十六条から第七十八条まで、第八十条から第八十一条の二まで、第百十条並びに第百十三条の規定は各種法人の登記について、同規則第一条の二第三項、第九十三条、第九十四条第二項、第九十五条、第九十六条第一項(第三号から第六号までを除く。)及び第二項並びに第九十七条の規定は各種外国法人の登記について準用する。この場合において、同規則第一条の二第一項中「登記所及び次の各号に掲げる区分」とあるのは「登記所」と、同条第二項中「法第七十九条に規定する新設合併」とあるのは「新設合併」と、同規則第九十六条第一項第二号中「登記所の管轄区域内に日本における代表者の住所地がある場合(すべての日本における営業所を閉鎖した場合に限る。)」とあるのは「清算の開始の命令がある場合」と読み替えるものとする。

(2)商業登記規則

参照条文

商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)

(添付書面)
第六十一条 
定款の定め又は裁判所の許可がなければ登記すべき事項につき無効又は取消しの原因が存することとなる申請については、申請書に、定款又は裁判所の許可書を添付しなければならない。
(・・・)
6 代表取締役又は代表執行役の就任による変更の登記の申請書には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
一 株主総会又は種類株主総会の決議によつて代表取締役を定めた場合 議長及び出席した取締役が株主総会又は種類株主総会の議事録に押印した印鑑
二 取締役の互選によつて代表取締役を定めた場合 取締役がその互選を証する書面に押印した印鑑
三 取締役会の決議によつて代表取締役又は代表執行役を選定した場合 出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑
(・・・)
8 代表取締役若しくは代表執行役又は取締役若しくは執行役(登記所に印鑑を提出した者がある場合にあつては当該印鑑を提出した者に限り、登記所に印鑑を提出した者がない場合にあつては会社の代表者に限る。以下この項において「代表取締役等」という。)の辞任による変更の登記の申請書には、当該代表取締役等(その者の成年後見人又は保佐人が本人に代わつて行う場合にあつては、当該成年後見人又は保佐人)が辞任を証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、登記所に印鑑を提出した者がある場合であつて、当該書面に押印した印鑑と当該代表取締役等が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
(・・・)

理事長の変更に際しては、株式会社同様、商業登記規則61条6項の規定が適用となる。

  • 【原則】
    理事会議事録に出席した理事及び監事が、市町村にて印鑑登録した印鑑で押印し、市町村長の作成した証明書を添付する。
  • 【例外】
    定款において、理事会議事録に押印する者を「理事会に出席した理事長及び監事」に限定している場合には、これらの者が市町村にて印鑑登録した印鑑で押印し、市町村長の作成した証明書を添付する。
    (この場合、変更登記申請にあたり、定款添付が必要となる。)
  • 【さらに例外】
    上記のいずれにおいても、前理事長が登記所届出印にて理事会議事録に押印をしていれば、市町村長の作成した証明書の添付は不要。
    (この点については、一般的な規則61条6項の論点に留意。)
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