株券発行会社の定めの設定または廃止

2018年5月31日

1.会社法の原則 

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

第二百十四条 
株式会社は、その株式(・・・)に係る株券を発行する旨を定款で定めることができる。

原則として、株券不発行になっている。

定款で定めることにより「株券発行会社」となることができる。

株券発行会社においては、つぎの条項のとおり、各手続きにおいて特別の対応が必要となる。

参照条文

第百二十八条 
株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。
2 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。

第二百十九条 
株券発行会社は、次の各号に掲げる行為をする場合には、当該行為の効力が生ずる日((・・・)以下この条において「株券提出日」という。)までに当該株券発行会社に対し当該各号に定める株式に係る株券を提出しなければならない旨を株券提出日の一箇月前までに、公告し、かつ、当該株式の株主及びその登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければならない。ただし、当該株式の全部について株券を発行していない場合は、この限りでない。
一 第百七条第一項第一号【譲渡制限株式】に掲げる事項についての定款の定めを設ける定款の変更 全部の株式(・・・)
(・・・)
六 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。) 全部の株式
七 株式交換 全部の株式
八 株式移転 全部の株式

2.整備法のはなし

参照条文

会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第八十七号)

第七十六条 
(・・・)
4 旧株式会社(・・・)の定款に株券を発行しない旨の定めがない場合における新株式会社の定款には、その株式(・・・)に係る株券を発行する旨の定めがあるものとみなす。

旧商法の原則(株券発行)と例外(定款に発行しない旨の定め)が、会社法において逆転している。 

参照条文

第百十三条
(・・・)
4 第六十六条第一項前段の規定により存続する株式会社(旧株式会社について株券を発行しない旨の登記がある場合を除く。)については、施行日に、その本店の所在地において、株券発行会社である旨の登記がされたものとみなす。

3.株券発行会社の定めの廃止

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

第二百十八条 
株券発行会社は、その株式(・・・)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしようとするときは、当該定款の変更の効力が生ずる日の二週間前までに、次に掲げる事項を公告し、かつ、株主及び登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければならない。
一 その株式(・・・)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する旨
二 定款の変更がその効力を生ずる日
三 前号の日において当該株式会社の株券は無効となる旨
2 株券発行会社の株式に係る株券は、前項第二号の日に無効となる。
3 第一項の規定にかかわらず、株式の全部について株券を発行していない株券発行会社がその株式(・・・)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしようとする場合には、同項第二号の日の二週間前までに、株主及び登録株式質権者に対し、同項第一号及び第二号に掲げる事項を通知すれば足りる。4 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
5 (・・・)

  1. 株主総会において、定款の定めを廃止(定款変更の特別決議)する旨を決議
  2. 効力発生日の2週間前までに公告および各別の通知

実際に株式の全部について株券を発行していなければ、株主及び登録株式質権者に対する通知のみでOKになる。

4.登記申請

  1. 総会議事録
  2. 公告をしたことを証する書面or株式の全部について株券を発行していないことを証する書面(株主名簿の写しを原本証明)

参照:株券不所持の申出

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

第二百十七条 
株券発行会社の株主は、当該株券発行会社に対し、当該株主の有する株式に係る株券の所持を希望しない旨を申し出ることができる。
2 前項の規定による申出は、その申出に係る株式の数(・・・)を明らかにしてしなければならない。この場合において、当該株式に係る株券が発行されているときは、当該株主は、当該株券を株券発行会社に提出しなければならない。
3 第一項の規定による申出を受けた株券発行会社は、遅滞なく、前項前段の株式に係る株券を発行しない旨を株主名簿に記載し、又は記録しなければならない。
4 株券発行会社は、前項の規定による記載又は記録をしたときは、第二項前段の株式に係る株券を発行することができない。
5 第二項後段の規定により提出された株券は、第三項の規定による記載又は記録をした時において、無効となる。
6 第一項の規定による申出をした株主は、いつでも、株券発行会社に対し、第二項前段の株式に係る株券を発行することを請求することができる。この場合において、第二項後段の規定により提出された株券があるときは、株券の発行に要する費用は、当該株主の負担とする。

参照2:株主名簿の記載事項

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

第百二十一条 
株式会社は、株主名簿を作成し、これに次に掲げる事項(以下「株主名簿記載事項」という。)を記載し、又は記録しなければならない。
一 株主の氏名又は名称及び住所
二 前号の株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
三 第一号の株主が株式を取得した日
四 株式会社が株券発行会社である場合には、第二号の株式(株券が発行されているものに限る。)に係る株券の番号