「解散」・「破産」と事業年度

1.事業年度とは

(1)会社法に定義?

会社法上、「事業年度」という言葉が多く使用されているが、その定義は存在しない。

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(・・・)
二十四 最終事業年度 各事業年度に係る第四百三十五条第二項に規定する計算書類につき第四百三十八条第二項の承認(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認)を受けた場合における当該各事業年度のうち最も遅いものをいう。

定款においても、絶対的記載事項ではない。

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

(定款の記載又は記録事項)
第二十七条 
株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店の所在地
四 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
五 発起人の氏名又は名称及び住所

(2)会社計算規則

参照条文

会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)

(各事業年度に係る計算書類)
第五十九条 
法第四百三十五条第二項に規定する法務省令で定めるものは、この編の規定に従い作成される株主資本等変動計算書及び個別注記表とする。
2 各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書の作成に係る期間は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合にあっては、成立の日)から当該事業年度の末日までの期間とする。この場合において、当該期間は、一年(事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度については、一年六箇月)を超えることができない。
3 法第四百三十五条第二項の規定により作成すべき各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書は、当該事業年度に係る会計帳簿に基づき作成しなければならない。

「各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書の作成に係る期間」についての規定なので、事業年度に関する定義ではないけれど。

(3)法人税法

参照条文

法人税法(昭和四十年法律第三十四号)

(事業年度の意義)
第十三条 
この法律において「事業年度」とは、法人の財産及び損益の計算の単位となる期間(以下この章において「会計期間」という。)で、法令で定めるもの又は法人の定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるもの(以下この章において「定款等」という。)に定めるものをいい、法令又は定款等に会計期間の定めがない場合には、次項の規定により納税地の所轄税務署長に届け出た会計期間又は第三項の規定により納税地の所轄税務署長が指定した会計期間若しくは第四項に規定する期間をいう。ただし、これらの期間が一年を超える場合は、当該期間をその開始の日以後一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、その一年未満の期間)をいう。
2 法令及び定款等に会計期間の定めがない法人は、次の各号に掲げる法人の区分に応じ当該各号に定める日以後二月以内に、会計期間を定めてこれを納税地の所轄税務署長に届け出なければならない。
一 内国法人 設立の日(公益法人等又は人格のない社団等については収益事業を開始した日とし、公益法人等(収益事業を行つていないものに限る。)に該当していた普通法人又は協同組合等については当該普通法人又は協同組合等に該当することとなつた日とする。)
二 外国法人 恒久的施設を有する外国法人になつた日又は恒久的施設を有しないで第百三十八条第一項第四号(国内源泉所得)に規定する事業を国内において開始し、若しくは第百四十一条第二号(課税標準)に定める国内源泉所得で同項第四号に掲げる対価以外のものを有することとなつた日(人格のない社団等については、同条各号に掲げる外国法人の区分に応じ当該各号に定める国内源泉所得のうち収益事業から生ずるものを有することとなつた日)
3 前項の規定による届出をすべき法人(人格のない社団等を除く。)がその届出をしない場合には、納税地の所轄税務署長は、その会計期間を指定し、当該法人に対し、書面によりその旨を通知する。
4 第二項の規定による届出をすべき人格のない社団等がその届出をしない場合には、その人格のない社団等の会計期間は、その年の一月一日(同項第一号に規定する収益事業を開始した日又は同項第二号に規定する国内源泉所得のうち収益事業から生ずるものを有することとなつた日の属する年については、これらの日)から十二月三十一日までの期間とする。

法人税法においては「事業年度」が定義されている。
ここでも「法令又は定款等に会計期間の定めがない場合」が想定されているのが興味深い。。

2.解散

(1)解散と事業年度

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

(貸借対照表等の作成及び保存)
第四百九十四条 
清算株式会社は、法務省令で定めるところにより、各清算事務年度(第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった日の翌日又はその後毎年その日に応当する日(応当する日がない場合にあっては、その前日)から始まる各一年の期間をいう。)に係る貸借対照表及び事務報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。
(・・・)

(清算の開始原因)
第四百七十五条 
株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。
一 解散した場合(第四百七十一条第四号に掲げる事由によって解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)
二 設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合
三 株式移転の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合

(解散の事由)
第四百七十一条 
株式会社は、次に掲げる事由によって解散する。
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 株主総会の決議
四 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 第八百二十四条第一項又は第八百三十三条第一項の規定による解散を命ずる裁判

解散によって清算株式会社になった場合には、解散した日から「清算事務年度」が開始する。

「事業」から「清算事務」にかわる。

そして、清算事務年度は「1年」単位である。

(2)破産した場合が除かれている

ところで、あらためて条文を見てみると、清算事務年度が開始する「解散」とは、合併して解散した場合や、破産手続開始決定により解散した場合を除くとされている。

では、破産手続開始決定により解散した場合にはどうなるのか?

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

(清算の開始原因)
第四百七十五条 
株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。
一 解散した場合(第四百七十一条第四号に掲げる事由によって解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)
二 設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合
三 株式移転の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合

3.破産手続き開始決定

(1)破産手続開始決定と事業年度

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

(解散の事由)
第四百七十一条 
株式会社は、次に掲げる事由によって解散する。
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 株主総会の決議
四 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 第八百二十四条第一項又は第八百三十三条第一項の規定による解散を命ずる裁判

破産手続開始決定は、会社の解散事由である。
けれども会社法475条に規定されているとおり、清算の開始原因ではない。

(2)またまた法人税法の規定

参照条文

法人税法(昭和四十年法律第三十四号)

(事業年度の特例)
第十四条 
次の各号に掲げる事実が生じた場合には、その事実が生じた法人の事業年度は、前条第一項の規定にかかわらず、当該各号に定める日に終了し、これに続く事業年度は、第二号又は第五号に掲げる事実が生じた場合を除き、同日の翌日から開始するものとする。
一 内国法人が事業年度の中途において解散(合併による解散を除く。)をしたこと その解散の日
二 法人が事業年度の中途において合併により解散したこと その合併の日の前日
三 内国法人である公益法人等又は人格のない社団等が事業年度の中途において新たに収益事業を開始したこと(人格のない社団等にあつては、前条第四項に規定する場合に該当する場合を除く。) その開始した日の前日
四 公益法人等が事業年度の中途において普通法人若しくは協同組合等に該当することとなつたこと又は普通法人若しくは協同組合等が事業年度の中途において公益法人等に該当することとなつたこと その事実が生じた日の前日
五 清算中の法人の残余財産が事業年度の中途において確定したこと その残余財産の確定の日
六 清算中の内国法人が事業年度の中途において継続したこと その継続の日の前日
七 恒久的施設を有しない外国法人が事業年度の中途において恒久的施設を有することとなつたこと その有することとなつた日の前日
八 恒久的施設を有する外国法人が事業年度の中途において恒久的施設を有しないこととなつたこと その有しないこととなつた日
九 恒久的施設を有しない外国法人が、事業年度の中途において、国内において新たに第百三十八条第一項第四号(国内源泉所得)に規定する事業を開始し、又は当該事業を廃止したこと 当該事業の開始の日の前日又は当該事業の廃止の日
(・・・)

法人税法においては「解散(合併による解散を除く。)」となっている。