非営利型の一般社団法人について

1.はじめに

非営利型の一般社団法人にあっては、定款や役員構成上の配慮が必要になることに加えて、税務上の要件に合致した法人運営を行うことが重要となります。
(後記「5.うっかりで「非営利型の一般社団法人」でなくなってしまう!!」参照)

「税務上の要件に合致した法人運営」を行うにあたっては、日頃からの税務的なサポートが必要不可欠ですが、その点については「税理士」の関与が重要となります。
筆者は、司法書士・行政書士の資格しか有しておらず、税務関係については通達の引用といった一般的な仕組みの紹介にとどまります。
また、一般社団法人だけでなく、一般財団法人についても同様の仕組みが用意されていますが、特段の減給のない限り本稿では「一般社団法人」を前提としています。

以上の点にご留意いただき、本稿を参照いただければ幸いです。

2.非営利型の一般社団法人とは

(1)公益法人に類似した税務上の取扱い

公益法人の場合、公益目的事業から生じた所得は課税対象となりません。

公益法人(公益社団法人等)となるためには、法律に基づいた「認定」を受ける必要があります。
(「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」に手続きが定められています。)

この「認定」を受けるためには非常に厳しい要件をクリアする必要があります。
さらに、認定を受けた後にも、監督官庁の、これまた厳しい「監督」を受けることになります。
(例:公益財団法人日本相撲協会に対するもの)

(2)非営利型の一般社団法人には「2パターン」ある

以上のような、公益認定をうけた一般社団法人(あるいは財団法人)でなくとも、課税所得の範囲を「収益事業から生じた所得」に限定する仕組みが用意されています。

それが「非営利型法人」という仕組みです。

非営利型法人となるためには、つぎのいずれかの法人に該当する必要があります。

  • 非営利性が徹底された法人
  • 共益的活動を目的とする法人
参照条文

法人税法(昭和四十年法律第三十四号)

(定義)
第二条 
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(・・・)
九の二 非営利型法人 一般社団法人又は一般財団法人(公益社団法人又は公益財団法人を除く。)のうち、次に掲げるものをいう。
イ その行う事業により利益を得ること又はその得た利益を分配することを目的としない法人であつてその事業を運営するための組織が適正であるものとして政令で定めるもの
ロ その会員から受け入れる会費により当該会員に共通する利益を図るための事業を行う法人であつてその事業を運営するための組織が適正であるものとして政令で定めるもの

詳細は、上記のとおり法人税法施行令において規定されています。
それぞれ、項をわけて確認していきます。

3.「非営利性が徹底された法人」の要件

(1)まずは要件を列挙して確認

非営利型法人のうち「非営利性が徹底された法人」となるためには、つぎの要件を全て満たす必要があります。
(後掲「6.参照条文」の法人税法施行令3条を参照。)

  1. 定款に剰余金の分配を行わない旨の定めがあること。
  2. 定款に解散したときはその残余財産が国若しくは地方公共団体又は次に掲げる法人に帰属する旨の定めがあること。
    • 公益社団法人又は公益財団法人
    • 公益法人認定法第5条第 17 号イからトまでに掲げる法人
      (例:学校法人、社会福祉法人、国立大学法事など)
  3. 上記1・2の定款の定めに反する行為(上記1・2及び下記4に掲げる要件の全てに該当していた期間において、剰余金の分配又は残余財産の分配若しくは引渡し以外の方法(合併による資産の移転を含む。)により特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含む。)を行うことを決定し、又は行ったことがないこと。
  4. 各理事(清算人を含む。以下同じ。)について、その理事及びその理事の配偶者又は3親等以内の親族その他のその理事と一定の特殊の関係のある者である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が、3分の 1 以下であること

剰余金や残余財産の帰属については、定款に定めればよく、それほどハードルは高くないかと思います。

ただし、剰余金との関係では上記3の要件を満たすような運営をしなければなりません。
また、過去に「特別の利益」を与えたことがあると、以後上記3の要件を満たすことはないとされてしまう点にも注意が必要です。
(参考:法人税法基本通達1-1-9)

解散(具体的な残余財産の処分)のシーンでは、上記2・3の要件との関係で対応に困る場面もあるでしょう。

また、要件4についても、ふさわしい人材(理事)を見つけられるかどうかが課題となります。
くわしい要件については次号で確認していきます。

参考記事(外部リンク)

【国税庁HP:一般社団法人・一般財団法人と法人税】

上記HPの「新たな公益法人関係税制の手引(平成24年9月)(PDF/4,962KB)」P.31を参照。

(2)「その理事と一定の特殊の関係のある者」とは

「その理事と一定の特殊の関係のある者」というのは、つぎのように定義されています。
(後掲「6.参照条文」の法人税法施行規則2条の2第1項を参照。)

  1. その理事の配偶者
  2. その理事の3親等以内の親族
  3. その理事と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
  4. その理事の使用人
  5. 上記1~4以外の者でその理事から受ける金銭その他の資産によって生計を維持しているもの
  6. 上記3~5の者と生計を一にするこれらの者の配偶者又は3親等以内の親族

親族や使用人が不可とされています。
なかなかに厳しいハードルです。

くわえて、法律上の「理事」だけでなく、実体上の「理事」にまで制限が及ぶ点(施行令3条3項)にも注意が必要です。

4.「共益的活動を目的とする法人」の要件

(1)まずは要件を列挙して確認

非営利型法人のうち「共益的活動を目的とする法人」となるためには、つぎの要件を満たす必要があります。
(後掲「6.参照条文」の法人税法施行令3条を参照。)

  1. 会員の相互の支援、交流、連絡その他のその会員に共通する利益を図る活動を行うことをその主たる目的としていること。
  2. 定款(定款に基づく約款その他これに準ずるものを含む。)に、その会員が会費として負担すべき金銭の額の定め又はその金銭の額を社員総会の決議により定める旨の定めがあること。
  3. 主たる事業として収益事業を行っていないこと。
  4. 定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を受ける権利を与える旨の定めがないこと。
  5. 定款に解散したときはその残余財産が特定の個人又は団体(国若しくは地方公共団体、「公益法人認定法第5条第 17 号イからトまでに掲げる法人(例:学校法人、社会福祉法人、国立大学法事など)」若しくは「非営利性が徹底された法人」又は「その目的と類似の目的を有する他の一般社団法人若しくは一般財団法人」を除く。)に帰属する旨の定めがないこと。
  6. 上記1から5まで及び下記7に掲げる要件の全てに該当していた期間において、特定の個人又は団体に剰余金の分配その他の方法(合併による資産の移転を含む。)により特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと。
  7. 各理事について、その理事及びその理事の配偶者又は3親等以内の親族その他のその理事と一定の特殊の関係のある者である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が、3分の 1 以下であること。
参考記事(外部リンク)

【国税庁HP:一般社団法人・一般財団法人と法人税】

上記HPの「新たな公益法人関係税制の手引(平成24年9月)(PDF/4,962KB)」P.31を参照。

上記1・2・4・5については、定款等で定めをおくことでクリアできそうです。
(運営上の注意が必要な点については、「非営利性が徹底された法人」と同様。)

上記6・7についても、「非営利性が徹底された法人」と同様です。

のこる「3.主たる事業として収益事業を行っていないこと」については、次号で確認します。

(2)「主たる事業として収益事業を行っていない」こと

この点については、法人税法基本通達1-1-10と1-1-11に解説が記載されていますが、非常に難解(のように思われる。)で、筆者の能力不足により誤った解釈をする可能性が高く、本稿では言及はしません。

下記リンク先にて原文を、ご確認ください。

参考記事(外部リンク)

5.うっかりで「非営利型の一般社団法人」でなくなってしまう!!

(1)あくまで自主申告

ここまで「非営利型の一般社団法人」の要件を確認してきました。

多くの人が、非常に複雑で難解な要件と感じたのではないでしょうか?
(「主たる事業」とか「特別の利益」とか、税法上の定めで頻繁に目にする、フワッとした言葉が使われている点も、さらに要件充足性の判断を困難にさせます。)

この点については、基本通達で解説がなされていますが、読んでもスッキリしない!

参考記事(外部リンク)

さらに問題となるのは、こうした要件に該当しているかどうかは、税務署が認定してお墨付きを与えてくれるわけではなく、あくまで自主申告・自主判断によることです。

国税庁の公開しているパンフレットから、一部語句を補充・削除して、紹介します。

公益認定を受けていない一般社団法人・一般財団法人のうち、次の「非営利性が徹底された法人」又は「共益的活動を目的とする法人」に該当するもの(それぞれの要件の全てに該当する必要があります。)は、特段の手続を踏むことなく公益法人等である非営利型法人になります

なお、非営利型法人が、その要件のうち、一つでも該当しなくなったときには、特段の手続を踏むことなく普通法人となりますのでご注意ください。

「一般社団法人・一般財団法人と法人税(平成26年3月)(PDF/324KB)」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/koekihojin/pdf/01.pdf 23/09/23確認

おそろしい・・

(2)税理士さんの専門知識を活用しましょう

というわけで、長々と要件の確認を進めてきましたが、素人判断で要件充足の適否を判断するのは非常に危険と思われます。

くわえて、設立時のみならず運営上も、要件充足性に留意する必要があります。
(一つでも該当しなくなったときには、特段の手続を踏むことなく普通法人に!!)

適正な運営のためには、税理士さんとの二人三脚でやっていくことが必要不可欠でしょう。

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6.参照条文

参照条文

法人税法施行令(昭和四十年政令第九十七号)

(非営利型法人の範囲)
第三条 
法第二条第九号の二イ(定義)に規定する政令で定める法人は、次の各号に掲げる要件の全てに該当する一般社団法人又は一般財団法人(清算中に当該各号に掲げる要件の全てに該当することとなつたものを除く。)とする。
一 その定款に剰余金の分配を行わない旨の定めがあること。
二 その定款に解散したときはその残余財産が国若しくは地方公共団体又は次に掲げる法人に帰属する旨の定めがあること。
イ 公益社団法人又は公益財団法人
ロ 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成十八年法律第四十九号)第五条第十七号イからトまで(公益認定の基準)に掲げる法人
三 前二号の定款の定めに反する行為(前二号及び次号に掲げる要件の全てに該当していた期間において、剰余金の分配又は残余財産の分配若しくは引渡し以外の方法(合併による資産の移転を含む。)により特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含む。)を行うことを決定し、又は行つたことがないこと。
四 各理事(清算人を含む。以下この号及び次項第七号において同じ。)について、当該理事及び当該理事の配偶者又は三親等以内の親族その他の当該理事と財務省令で定める特殊の関係のある者である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が、三分の一以下であること。
2 法第二条第九号の二ロに規定する政令で定める法人は、次の各号に掲げる要件の全てに該当する一般社団法人又は一般財団法人(清算中に当該各号に掲げる要件の全てに該当することとなつたものを除く。)とする。
一 その会員の相互の支援、交流、連絡その他の当該会員に共通する利益を図る活動を行うことをその主たる目的としていること。
二 その定款(定款に基づく約款その他これに準ずるものを含む。)に、その会員が会費として負担すべき金銭の額の定め又は当該金銭の額を社員総会若しくは評議員会の決議により定める旨の定めがあること。
三 その主たる事業として収益事業を行つていないこと。
四 その定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を受ける権利を与える旨の定めがないこと。
五 その定款に解散したときはその残余財産が特定の個人又は団体(国若しくは地方公共団体、前項第二号イ若しくはロに掲げる法人又はその目的と類似の目的を有する他の一般社団法人若しくは一般財団法人を除く。)に帰属する旨の定めがないこと。
六 前各号及び次号に掲げる要件の全てに該当していた期間において、特定の個人又は団体に剰余金の分配その他の方法(合併による資産の移転を含む。)により特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと。
七 各理事について、当該理事及び当該理事の配偶者又は三親等以内の親族その他の当該理事と財務省令で定める特殊の関係のある者である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が、三分の一以下であること。
3 前二項の一般社団法人又は一般財団法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る。)以外の者で当該一般社団法人又は一般財団法人の経営に従事しているものは、当該一般社団法人又は一般財団法人の理事とみなして、前二項の規定を適用する。
4 第二項第三号の収益事業は、次の表の上欄に掲げる第五条(収益事業の範囲)の規定中同表の中欄に掲げる字句を同表の下欄に掲げる字句に読み替えた場合における収益事業とする。
(・・・)

参照条文

法人税法施行規則(昭和四十年大蔵省令第十二号)

(理事と特殊の関係のある者の範囲等)
第二条の二 
令第三条第一項第四号及び第二項第七号(非営利型法人の範囲)に規定する理事と財務省令で定める特殊の関係のある者は、次に掲げる者とする。
一 当該理事(清算人を含む。以下この項において同じ。)の配偶者
二 当該理事の三親等以内の親族
三 当該理事と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
四 当該理事の使用人
五 前各号に掲げる者以外の者で当該理事から受ける金銭その他の資産によつて生計を維持しているもの
六 前三号に掲げる者と生計を一にするこれらの者の配偶者又は三親等以内の親族
(・・・)

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