日本政策金融公庫の「支配人」

1.会社法における「支配人」

(1)条文

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

(支配人)
第十条 
会社(外国会社を含む。以下この編において同じ。)は、支配人を選任し、その本店又は支店において、その事業を行わせることができる。

(支配人の代理権)
第十一条 
支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
2 支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。
3 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

(支配人の競業の禁止)
第十二条 
支配人は、会社の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。
一 自ら営業を行うこと。
二 自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。
三 他の会社又は商人(会社を除く。第二十四条において同じ。)の使用人となること。
四 他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
2 支配人が前項の規定に違反して同項第二号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定する。

(表見支配人)
第十三条 
会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該本店又は支店の事業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

(2)整理

支配人は、使用人である。

会社法には、「会社の支配人」と「商人の支配人」とがある。
以下では「会社の支配人」について確認をしていく。

支配人は「事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限」をもつ。

2.日本政策金融公庫法における「支配人」

(1)条文

参照条文

株式会社日本政策金融公庫法(平成十九年法律第五十七号)

(目的)
第一条 
株式会社日本政策金融公庫(以下「公庫」という。)は、一般の金融機関が行う金融を補完することを旨としつつ、国民一般、中小企業者及び農林水産業者の資金調達を支援するための金融の機能を担うとともに、内外の金融秩序の混乱又は大規模な災害、テロリズム若しくは感染症等による被害に対処するために必要な金融を行うほか、当該必要な金融が銀行その他の金融機関により迅速かつ円滑に行われることを可能とし、もって国民生活の向上に寄与することを目的とする株式会社とする。

(株式の政府保有)
第三条 
政府は、常時、公庫の発行済株式の総数を保有していなければならない。

(役員等の選任及び解任等の決議)
第六条 
公庫の役員等(取締役、執行役及び監査役をいう。以下同じ。)の選任及び解任の決議は、主務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 公庫の代表取締役又は代表執行役の選定及び解職の決議は、主務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

(2)整理

日本政策金融公庫は「株式会社」である。
ただし、その株式は全て、政府が保有している。

役員等(取締役、執行役及び監査役。)の選任・解任の決議には、主務大臣の認可が必要。
(株主である政府の議決権行使は、どのように行われるのだろうか??)

支配人については特に規定がない。
会社法によるということだろうか?

3.会社法における「会社の支配人」の登記

(1)条文

参照条文

会社法(平成十七年法律第八十六号)

(支配人の登記)
第九百十八条 
会社が支配人を選任し、又はその代理権が消滅したときは、その本店の所在地において、その登記をしなければならない。

参照条文

商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)

(会社の支配人の登記)
第四十四条 
会社の支配人の登記は、会社の登記簿にする。
2 前項の登記において登記すべき事項は、次のとおりとする。
一 支配人の氏名及び住所
二 支配人を置いた営業所
3 第二十九条第二項の規定は、第一項の登記について準用する。

第四十五条 
会社の支配人の選任の登記の申請書には、支配人の選任を証する書面を添付しなければならない。
2 会社の支配人の代理権の消滅の登記の申請書には、これを証する書面を添付しなければならない。

(印鑑証明)
第十二条 
次に掲げる者でその印鑑を登記所に提出した者は、手数料を納付して、その印鑑の証明書の交付を請求することができる。
(・・・)
二 支配人
(・・・)
2 第十条【登記事項証明書の交付等】第二項の規定は、前項の証明書に準用する。

参照条文

(会社の支配人を置いた営業所の移転等の登記)
第五十八条 
会社の支配人を置いた本店又は支店について移転、変更又は廃止があつたときは、本店又は支店に関する移転、変更又は廃止の登記の申請と支配人を置いた営業所に関する移転、変更又は廃止の登記の申請とは、同時にしなければならない。

(会社の支配人の登記の抹消)
第五十九条 
会社の支配人の登記は、会社の解散の登記をしたときは、抹消する記号を記録しなければならない。

(2)整理

支配人の登記にあっては、つぎの事項を登記しなければならない。

  • 支配人の氏名
  • 支配人の住所
  • 支配人を置いた営業所

ここで日本政策金融公庫の「支配人に関する事項」欄をみると衝撃の事実が発覚する。

静岡県沼津市市場町5番7号
【支配人の氏名】
営業所 静岡県沼津市市場町5番7号 

一例として、沼津支店に置かれた支配人に関する事項を抜粋したが、「支配人の住所」と「支配人を置いた営業所」が同じになっている。
沼津支店の住所には、公庫の支店があるだけである。支配人は支店に住んでいるのだろうか?

インターネットで検索すると、適宜の住所で登記できるようになっているらしい。
(コンプラ的にどうなのだろうか??)

なお、支配人の印鑑届については、つぎのとおり。

参照条文

商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)


(印鑑の提出等)
第九条 
印鑑の提出は、当該印鑑を明らかにした書面をもつてしなければならない。この場合においては、次の各号に掲げる印鑑を提出する者は、その書面にそれぞれ当該各号に定める事項(以下「被証明事項」という。)のほか、氏名、住所、年月日及び登記所の表示を記載し、押印(第五項第二号イ、第四号イ、第六号イ及び第七号イの場合において、当該各号の印鑑を提出する者が押印するときは、当該登記所に提出している印鑑に係るものに限る。)しなければならない。
(・・・)
三 支配人
支配人である旨、氏名、出生の年月日、支配人を置いた営業所及び商人の氏名又は商号
(・・・)
5 第一項の書面には、次の各号に掲げる印鑑を提出する者の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める書面を添付しなければならない。ただし、同項の書面の提出を受ける登記所において登記がされている法人又は同項の書面に会社法人等番号を記載した法人の代表者の資格を証する書面については、この限りでない。
(・・・)
三 支配人 次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、当該イ又はロに定める書面
イ 商人(当該商人が会社である場合にあつては、当該会社の代表者(当該代表者が法人である場合にあつては、当該代表者の職務を行うべき者)。以下この号において同じ。)が登記所に印鑑を提出している場合 商人が支配人の印鑑に相違ないことを保証した書面で当該登記所に提出している印鑑を押印したもの
ロ 商人が登記所に印鑑を提出していない場合 商人が支配人の印鑑に相違ないことを保証した書面及び当該書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書で作成後三月以内のもの
(・・・)

支配人について印鑑を届け出るにあたり、支配人自身の印鑑証明書は不要である。

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