目次
1.相続財産と遺産分割の関係
(1)遺産分割の対象になるもの
実務上、分割の対象となる「遺産」とは、①被相続人が相続時に所有し、②かつ分割時にも存在し、③現在まで未分割である、④積極財産、のみである。
「梶村太市・石井久美子・貴島慶四郎・芝口典男 編『相続・遺言・遺産分割 最新裁判書式体系シリーズ』(青林書院、2022年)373頁」より引用。
(以下では上記①・②は満たしているという前提で検討している。)
不動産、現金、株式は遺産分割の対象となる。
預貯金についても、判例変更により、遺産分割の対象となった(最判平成28年12月19日・民集第70巻8号2121頁)。
株式については、下記判例も参照。
最判平成26年2月25日・民集第68巻2号173頁
株式は、株主たる資格において会社に対して有する法律上の地位を意味し、株主は、株主たる地位に基づいて、剰余金の配当を受ける権利(会社法105条1項1号)、残余財産の分配を受ける権利(同項2号)などのいわゆる自益権と、株主総会における議決権(同項3号)などのいわゆる共益権とを有するのであ
って(最高裁昭和42年(オ)第1466号同45年7月15日大法廷判決・民集24巻7号804頁参照)、このような株式に含まれる権利の内容及び性質に照らせば、共同相続された株式は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである(最高裁昭和42年(オ)第867号同45年1月22日第一小法廷判決・民集24巻1号1頁等参照)。
(2)遺産分割の対象にならないもの
帰属上の一審専属権は、遺産分割の対象にならない。
民法(明治二十九年法律第八十九号)
(期間満了等による使用貸借の終了)
第五百九十七条
当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
2 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
3 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。
第六百七十九条
前条【組合員の脱退】の場合のほか、組合員は、次に掲げる事由によって脱退する。
一 死亡
二 破産手続開始の決定を受けたこと。
三 後見開始の審判を受けたこと。
四 除名
遺言により分割方法が指定されている場合には、遺産分割の対象とならない。
遺産から生じる果実は、遺産分割の対象とならない。
最判平成17年9月8日・民集第59巻7号1931頁
遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。
(3)関係者との合意によって遺産分割の対象となるもの
相続人全員が合意すれば、相続開始前あるいは相続開始後に引き出してしまった被相続人の預貯金を、遺産分割の対象とすることができる。
2.遺産分割と債務
(1)債務は遺産分割の対象外
債務については、積極財産でなく、また各相続人に相続人に応じて承継されるため、遺産分割の対象とならない。
最判昭和34年6月19日・民集第13巻6号757頁
債務者が死亡し、相続人が数人ある場合に、被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継するものと解すべきである
(・・・)
連帯債務者の一人が死亡した場合においても、その相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解するのが相当である。
(2)あえて遺産分割の対象とすること
各相続人間での負担について、相続人間で合意ができれば、それを陰惨分割の合意内容に含めることも可能である。
ただし、債権者を拘束するものではないので、債権者とは「債務引受」などの別契約が必要。
