一般社団法人における理事・代表理事等の選任プロセスについて

2023年5月2日

1.一般社団法人における「役員」

参照条文

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)

(社員総会以外の機関の設置)
第六十条 
一般社団法人には、一人又は二人以上の理事を置かなければならない。
2 一般社団法人は、定款の定めによって、理事会、監事又は会計監査人を置くことができる。

(監事の設置義務)
第六十一条 
理事会設置一般社団法人及び会計監査人設置一般社団法人は、監事を置かなければならない。

(一般社団法人と役員等との関係)
第六十四条 
一般社団法人と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

一般社団法人の機関としては、社員総会以外につぎのものが設置できる(または、しなければならない)。

  • 理事
  • 代表理事
  • 理事会
  • 監事
  • 会計監査人

なお、「役員」とは、理事及び監事をいう(63条参照)。

2.理事や代表理事などの選任規程・任期

(1)役員の選任や任期について

参照条文

(選任)
第六十三条 
役員(理事及び監事をいう。以下この款において同じ。)及び会計監査人は、社員総会の決議によって選任する。
2 前項の決議をする場合には、法務省令で定めるところにより、役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。

(理事の任期)
第六十六条 
理事の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする。ただし、定款又は社員総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。

(監事の任期)
第六十七条 
監事の任期は、選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする。ただし、定款によって、その任期を選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとすることを限度として短縮することを妨げない
2 前項の規定は、定款によって、任期の満了前に退任した監事の補欠として選任された監事の任期を退任した監事の任期の満了する時までとすることを妨げない。
3 前二項の規定にかかわらず、監事を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、監事の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。

役員は、社員総会の決議により選任する。

理事の任期は「選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時まで」である。
短縮(定款又は社員総会の決議による)はできるが、伸長はできない。

監事の任期は「選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時まで」が原則である。
ただし、定款により(※社員総会の決議は不可)、「選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時まで」を限度として短縮可能。

ゆえに、2年に一度は、かならず登記手続きが必要となる。

(2)代表理事の選任について

参照条文

(一般社団法人の代表)
第七十七条 
理事は、一般社団法人を代表する。ただし、他に代表理事その他一般社団法人を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
2 前項本文の理事が二人以上ある場合には、理事は、各自、一般社団法人を代表する。
3 一般社団法人(理事会設置一般社団法人を除く。)は、定款、定款の定めに基づく理事の互選又は社員総会の決議によって、理事の中から代表理事を定めることができる
4 代表理事は、一般社団法人の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
5 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

(理事会の権限等)
第九十条 
理事会は、すべての理事で組織する。
2 理事会は、次に掲げる職務を行う。
一 理事会設置一般社団法人の業務執行の決定
二 理事の職務の執行の監督
三 代表理事の選定及び解職
3 理事会は、理事の中から代表理事を選定しなければならない。
(・・・)

原則として、理事は一般社団法人を代表する。

例外として、つぎの方法により、理事の中から代表理事を定めることができる。

  • 定款に直接定める。
  • 定款の定めに基づく理事の互選により定める。
  • 社員総会の決議によって定める。

なお、理事会設置一般社団法人においては、理事会により代表理事を選定する必要がある。

3.社員総会・理事会の開催について

(1)社員総会の開催

参照条文

(社員総会の招集)
第三十六条 
定時社員総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
2 社員総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。
3 社員総会は、次条第二項の規定により招集する場合を除き、理事が招集する。

(社員総会の招集の決定)
第三十八条 
理事(前条第二項の規定により社員が社員総会を招集する場合にあっては、当該社員。次条から第四十二条までにおいて同じ。)は、社員総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 社員総会の日時及び場所
二 社員総会の目的である事項があるときは、当該事項
三 社員総会に出席しない社員が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
四 社員総会に出席しない社員が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
2 理事会設置一般社団法人においては、前条第二項の規定により社員が社員総会を招集するときを除き、前項各号に掲げる事項の決定は、理事会の決議によらなければならない。

(社員総会の招集の通知)
第三十九条 
社員総会を招集するには、理事は、社員総会の日の一週間(理事会設置一般社団法人以外の一般社団法人において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、社員に対してその通知を発しなければならない。ただし、前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合には、社員総会の日の二週間前までにその通知を発しなければならない。
2 次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。
一 前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合
二 一般社団法人が理事会設置一般社団法人である場合
3 理事は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、社員の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該理事は、同項の書面による通知を発したものとみなす。
4 前二項の通知には、前条第一項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

(議決権の数)
第四十八条 
社員は、各一個の議決権を有する。ただし、定款で別段の定めをすることを妨げない。
2 前項ただし書の規定にかかわらず、社員総会において決議をする事項の全部につき社員が議決権を行使することができない旨の定款の定めは、その効力を有しない。

(社員総会の決議)
第四十九条 
社員総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の議決権の過半数を有する社員が出席し、出席した当該社員の議決権の過半数をもって行う。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる社員総会の決議は、総社員の半数以上であって、総社員の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
一 第三十条【除名】第一項の社員総会
二 第七十条【解任】第一項の社員総会(監事を解任する場合に限る。)
三 第百十三条【責任の一部免除】第一項の社員総会
四 第百四十六【定款の変更】の社員総会
五 第百四十七条【事業の譲渡】の社員総会
六 第百四十八条【解散の事由】第三号及び第百五十条【一般社団法人の継続】の社員総会
七 第二百四十七条、第二百五十一条第一項及び第二百五十七条の社員総会【合併契約の承認】
3 理事会設置一般社団法人においては、社員総会は、第三十八条第一項第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。ただし、第五十五条第一項若しくは第二項に規定する者の選任又は第百九条第二項の会計監査人の出席を求めることについては、この限りでない。

基本的なところは、株式会社と同じか?

「社員は、各一個の議決権を有する。ただし、定款で別段の定めをすることを妨げない。」には注意が必要。

なお、条文を引用していないが、つぎの条文も設けられている。

  • 招集手続の省略(40条)
  • 社員総会の決議の省略(いわゆる書面決議。58条。)
  • 社員総会への報告の省略(59条)

(2)理事会の開催

参照条文

(招集権者)
第九十三条 
理事会は、各理事が招集する。ただし、理事会を招集する理事を定款又は理事会で定めたときは、その理事が招集する。
2 前項ただし書に規定する場合には、同項ただし書の規定により定められた理事(以下この項及び第百一条第二項において「招集権者」という。)以外の理事は、招集権者に対し、理事会の目的である事項を示して、理事会の招集を請求することができる。
3 前項の規定による請求があった日から五日以内に、その請求があった日から二週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合には、その請求をした理事は、理事会を招集することができる。

(招集手続)
第九十四条 
理事会を招集する者は、理事会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各理事及び各監事に対してその通知を発しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、理事会は、理事及び監事の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。

(理事会の決議)
第九十五条 
理事会の決議は、議決に加わることができる理事の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
2 前項の決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。
3 理事会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した理事(定款で議事録に署名し、又は記名押印しなければならない者を当該理事会に出席した代表理事とする旨の定めがある場合にあっては、当該代表理事)及び監事は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
5 理事会の決議に参加した理事であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。

理事会については、なおさら株式会社の規定に似ているように感じる。

なお、条文を引用していないが、つぎの条文も設けられている。

  • 理事会の決議の省略(いわゆる書面決議。96条。「みなす旨の定款の定め」が必要。)
  • 理事会への報告の省略(98条。なお各理事の職務執行状況の報告については適用なし。)
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