1.本店移転の手続き
(1)会社法の条文
会社法(平成十七年法律第八十六号)
第三百四十八条
3 前項の場合には、取締役は、次に掲げる事項についての決定を各取締役に委任することができない。
(・・・)
二 支店の設置、移転及び廃止
(・・・)
第三百六十二条
4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
(・・・)
四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
(・・・)
第二百九十五条
株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
2 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
(2)決定機関
上記条文のとおり「支店」の設定等に関する事項ですら、決定を個々の取締役に委任することができない。
というわけで、本店移転に関する事項は「重要な組織の変更」に該当すると考えられるので、その決定は「取締役会(又は取締役の過半数の一致)」による。
2.取締役会設置会社における手続き
例においてIRを参照する。下記企業のお知らせが見やすかったので参考とさせていただいた。
東映アニメーション株式会社における本店移転に関するお知らせ
http://corp.toei-anim.co.jp/ir/news/detail.php?id=491
(1)
平成26年5月26日開催の取締役会において、本店所在地にかかる「定款一部変更の件」を平成26年6月26日開催予定の第76期定時株主総会に付議することを決議
(2)
上記定款変更の決議は平成26年6月26日。
ただし、定款第3条(本店の所在地)の変更は、平成26年7月31日までに開催される取締役会において決定する本店移転日をもって効力を生じる。
【現行定款】
第3条 本会社は本店を東京都練馬区に置く。
【変更後定款】
第3条 本会社は本店を東京都中野区に置く。
附 則
第3条(本店の所在地)の変更は、平成26年7月31日までに開催される取締役会において決定する本店移転日をもって効力を生ずるものとする。なお、本附則は、当該効力発生日の経過によりこれを削除する。
(3)
その後に、取締役会で本店移転日を決定する。当該決定についてのお知らせはIR情報としては確認できなかった。
参考としてシャープ株式会社のお知らせ。
http://www.sharp.co.jp/corporate/ir/pdf/2016/160623-3.pdf
「定款第2条の本店所在地につきましては、本年6月23日開催の第122期定時株主総会において、「定款一部変更の件」を付議し、大阪市から堺市へ変更することにつき、決議いただいておりますが、上記のとおり平成28年7月1日をもって本店移転日とし、その変更の効力が発生いたします。」