印鑑提出の任意化(令和3年2月15日施行)

1.これまでは商業登記法において「義務」

(1)改正前の条文

参照条文

商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)

(旧)第二十条  
登記の申請書に押印すべき者は、あらかじめ、その印鑑を登記所に提出しなければならない。改印したときも、同様とする。

3  前二項の規定は、会社の支店の所在地においてする登記の申請については、適用しない。

現在は削除されている。

令和3年2月15日施行の改正法令によるもの。

(2)印鑑提出は「任意化」された

従来は、印鑑提出は義務であった。
そのため、完全オンライン申請を利用する場合であっても、紙の印鑑届を法務局に提出しなければならなかった。
印鑑提出を任意化することで、オンラインで手続きを完了させることができる。

(3)任意化された印鑑届の提出方法

  • 従来通り、紙で申請する方法。
  • オンラインで、印鑑届を提出することもできる

詳しくは次項の条文を参照。

2.印鑑の提出に関する規定

(1)印鑑の提出に関する商業登記規則

従来と大きな変更はないと思われる。

参照条文

商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)

(印鑑の提出等)
第九条 

印鑑の提出は、当該印鑑を明らかにした書面をもつてしなければならない。この場合においては、次の各号に掲げる印鑑を提出する者は、その書面にそれぞれ当該各号に定める事項(以下「被証明事項」という。)のほか、氏名、住所、年月日及び登記所の表示を記載し、押印(第五項第二号イ、第四号イ及び第六号イの場合において、当該各号の印鑑を提出する者が押印するときは、当該登記所に提出している印鑑に係るものに限る。)しなければならない。
(・・・)
四 会社の代表者(当該代表者が法人である場合にあつては、当該会社の代表者の職務を行うべき者)
商号、本店、資格、氏名及び出生の年月日(当該代表者が法人である場合にあつては、氏名に代え、当該法人の商号又は名称及び本店又は主たる事務所並びに当該会社の代表者の職務を行うべき者の氏名)
(・・・)
3 印鑑の大きさは、辺の長さが一センチメートルの正方形に収まるもの又は辺の長さが三センチメートルの正方形に収まらないものであつてはならない。
4 印鑑は、照合に適するものでなければならない。
5 第一項の書面には、次の各号に掲げる印鑑を提出する者の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める書面を添付しなければならない。ただし、同項の書面の提出を受ける登記所において登記がされている法人又は同項の書面に会社法人等番号を記載した法人の代表者の資格を証する書面については、この限りでない。
一 商号使用者、未成年者、後見人(法人である場合を除く。)、支配人を選任した商人(会社である場合を除く。)、会社の代表者(法人である場合を除く。)又は管財人等(法人である場合を除く。) 第一項後段の規定により同項の書面に押印した印鑑につき市町村長(・・・)の作成した証明書で作成後三月以内のもの
(・・・)
四 会社の代表者が法人である場合における当該会社の代表者の職務を行うべき者(当該法人の代表者(当該代表者である法人の代表者が法人である場合にあつては、当該代表者である法人の代表者の職務を行うべき者。以下この号において同じ。)に限る。) 次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、当該イ又はロに定める書面
イ 当該法人の代表者が登記所に印鑑を提出している場合 登記所の作成した当該法人の代表者の資格を証する書面で作成後三月以内のもの
ロ 当該法人の代表者が登記所に印鑑を提出していない場合 イに定める書面及び第一項後段の規定により同項の書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書で作成後三月以内のもの
五 会社の代表者が法人である場合における当該会社の代表者の職務を行うべき者(前号に掲げる者を除く。) 次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、当該イ又はロに定める書面
イ 当該法人の代表者(当該代表者が法人である場合にあつては、当該代表者の職務を行うべき者。以下この号において同じ。)が登記所に印鑑を提出している場合 登記所の作成した当該法人の代表者の資格を証する書面で作成後三月以内のもの及び当該法人の代表者が当該会社の代表者の職務を行うべき者の印鑑に相違ないことを保証した書面で当該登記所に提出している印鑑を押印したもの
ロ 当該法人の代表者が登記所に印鑑を提出していない場合 登記所の作成した当該法人の代表者の資格を証する書面で作成後三月以内のもの、当該法人の代表者が当該会社の代表者の職務を行うべき者の印鑑に相違ないことを保証した書面及び当該書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書で作成後三月以内のもの
(・・・)
6 提出のあつた印鑑及び被証明事項は、磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録することのできる物を含む。以下同じ。)に記録する。
7 印鑑の提出をした者は、被証明事項のほか、氏名、住所、年月日及び登記所の表示を記載し、当該印鑑を押印した書面で印鑑の廃止の届出をすることができる。この場合において、印鑑カードを提示するときは、押印を要しない。
(・・・)
11 法第五十一条第一項【管轄区域外への本店移転】の登記を申請する場合の新所在地を管轄する登記所にする印鑑の提出は、旧所在地を管轄する登記所を経由してしなければならない。
12 旧所在地を管轄する登記所においては、法第五十二条第一項に規定する場合を除き、遅滞なく、前項の印鑑を新所在地を管轄する登記所に送付しなければならない。

(2)オンラインによる印鑑届の申請について

オンライン提出にあたっては、前出の第9条に定める事項を記載又は明らかにした情報に、電子署名して送信する。

印影のサイズ確認のため、所定の様式を利用して提出する必要がある。
下記ページの「第2ー1ー(2)」に様式が掲載されている。

また、適正な印鑑登録を行うために、登記官が必要と認めた場合には印鑑届書の原本を確認することができるとされている。

参照条文

商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)

(電子情報処理組織による登記の申請等)
第百一条 
次に掲げる申請、申出、提出、届出又は請求(以下「申請等」という。)は、情報通信技術活用法第六条第一項の規定により、同項に規定する電子情報処理組織を使用する方法によつてすることができる。ただし、当該申請等は、法務大臣が定める条件に適合するものでなければならない。
一 登記の申請(これと同時にする受領証の交付の請求を含む。以下同じ。)
(・・・)
二 印鑑の提出又は廃止の届出(第一号の登記の申請と同時にする場合に限る。)
(・・・)
2 前項第八号の規定は、後見人である法人の代表者(当該代表者が法人である場合にあつては、当該代表者の職務を行うべき者)又は管財人等の職務を行うべき者として指名された者が提出した印鑑の証明書については、適用しない。
3 情報通信技術活用法第六条第一項に規定する主務省令で定める電子情報処理組織は、登記所の使用に係る電子計算機と第一項に規定する申請等をする者の使用に係る電子計算機であつて法務大臣の定める技術的基準に適合するものとを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。
4 情報通信技術活用法第六条第六項に規定する主務省令で定める場合は、申請等に係る書面等のうちにその原本を確認する必要があると登記官が認める場合とする。

(印鑑の提出又は廃止の届出の方法)
第百六条 
第百一条第一項第二号の規定により印鑑の提出又は廃止の届出をするには、印鑑の提出若しくは廃止の届出をする者又はその代理人(次項において「印鑑提出者等」という。)は、法務大臣の定めるところに従い、第九条第一項の書面に記載し若しくは明らかにすべき事項又は同条第七項の書面に記載すべき事項に係る情報に印鑑の提出又は廃止の届出をする者が第三十三条の四に定める措置を講じたものを送信(第三項において「提出等情報の送信」という。)しなければならない。
2 印鑑提出者等は、第九条第一項又は第七項の書面に添付すべき書面があるときは、法務大臣の定めるところに従い、当該書面に代わるべき情報にその作成者が前項に規定する措置を講じたものを送信(次項において「印鑑の提出又は廃止の届出に係る添付書面情報の送信」という。)しなければならない。
3 第百二条第三項の規定は提出等情報の送信について、同条第五項の規定は印鑑の提出又は廃止の届出に係る添付書面情報の送信について準用する。

(電子署名の方法)
第三十三条の四 
法第十二条の二第一項第一号のデジタル庁令・法務省令で定める措置は、電磁的記録に記録することができる情報に、産業標準化法(昭和二十四年法律第百八十五号)に基づく日本産業規格(以下「日本産業規格」という。)X五七三一―八の附属書Dに適合する方法であつて同附属書に定めるnの長さの値が二千四十八ビットであるものを講ずる措置とする。

(登記申請の方法)
第百二条
(・・・)
3 申請人等(委任による代理人を除く。)が登記の申請をする場合において、申請書情報を送信するときは、当該申請人等が第一項に規定する措置を講じたものであることを確認するために必要な事項を証する情報であつて次のいずれかに該当するものを併せて送信しなければならない。
一 第三十三条の八第二項(他の省令において準用する場合を含む。)に規定する電子証明書
二 電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律第三条第一項の規定により作成された署名用電子証明書
三 電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)第八条に規定する認定認証事業者が作成した電子証明書(電子署名及び認証業務に関する法律施行規則(平成十三年総務省・法務省・経済産業省令第二号)第四条第一号に規定する電子証明書をいう。)その他の電子証明書であつて、氏名、住所、出生の年月日その他の事項により当該措置を講じた者を確認することができるものとして法務大臣の定めるもの
四 官庁が嘱託する場合にあつては、官庁が作成した電子証明書であつて、登記官が当該措置を講じた者を確認することができるものとして法務大臣の定めるもの
(・・・)
5 申請人等が添付書面情報を送信するときは、次の各号に掲げる情報の区分に応じ、それぞれ当該情報の作成者が第一項に規定する措置を講じたものであることを確認するために必要な事項を証する情報であつて当該各号に定めるものを併せて送信しなければならない。
一 委任による代理人の権限を証する情報 第三項各号に掲げる電子証明書
二 前号に規定する情報以外の情報 前項各号に掲げる電子証明書又は指定公証人の行う電磁的記録に関する事務に関する省令第三条第一項に規定する指定公証人電子証明書

3.登記所届出印を押印しなければならない書面

(1)申請書と代理権限証書

「書面による申請(オンラインによる申請において代理権限証書を書面により作成し,登記所に提出又は送付した場合を含む。)」に注意。

参照条文

商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)

(申請書等への押印)
第三十五条の二 
申請人又はその代表者が申請書に押印する場合には、登記所に提出している印鑑を押印しなければならない。
2 委任による代理人の権限を証する書面には、前項の印鑑を押印しなければならない。

(2)代表取締役の変更の登記

代表取締役の就任による変更の登記の申請書には、市町村長の作成した証明書を添付するのが原則であるが、代表取締役を定めたことを証する書面に押印された印鑑が、変更前の代表取締役が登記所に提出している印鑑と同一であるときは、例外的に市町村長の作成した証明書の添付が不要に。

参照条文

商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)

(添付書面)
第六十一条
(・・・)
6 代表取締役又は代表執行役の就任による変更の登記の申請書には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
一 株主総会又は種類株主総会の決議によつて代表取締役を定めた場合 議長及び出席した取締役が株主総会又は種類株主総会の議事録に押印した印鑑
二 取締役の互選によつて代表取締役を定めた場合 取締役がその互選を証する書面に押印した印鑑
三 取締役会の決議によつて代表取締役又は代表執行役を選定した場合 出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑

(3)代表取締役の辞任の登記

代表取締役(登記所に印鑑を提出した者がある場合にあつては当該印鑑を提出した者に限り、登記所に印鑑を提出した者がない場合にあつては会社の代表者に限る。)の辞任の登記に際しては、辞任を証する書面に押印した印鑑について「市町村長の作成した印鑑証明書の添付」または「登記所に提出している印鑑とが同一」である必要がある。

参照条文

商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)

(添付書面)
第六十一条
(・・・)
8 代表取締役若しくは代表執行役又は取締役若しくは執行役(登記所に印鑑を提出した者がある場合にあつては当該印鑑を提出した者に限り、登記所に印鑑を提出した者がない場合にあつては会社の代表者に限る。以下この項において「代表取締役等」という。)の辞任による変更の登記の申請書には、当該代表取締役等(その者の成年後見人又は保佐人が本人に代わつて行う場合にあつては、当該成年後見人又は保佐人)が辞任を証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、登記所に印鑑を提出した者がある場合であつて、当該書面に押印した印鑑と当該代表取締役等が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。