目次
1.仮差押え決定
(1)民事保全法の条文の確認
民事保全法(平成元年法律第九十一号)
(民事保全の機関及び保全執行裁判所)
第二条
民事保全の命令(以下「保全命令」という。)は、申立てにより、裁判所が行う。
2 民事保全の執行(以下「保全執行」という。)は、申立てにより、裁判所又は執行官が行う。
3 (・・・)
(仮差押命令の必要性)
第二十条
仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
2 仮差押命令は、前項の債権が条件付又は期限付である場合においても、これを発することができる。
保全命令:申立てにより、裁判所が行う。
保全執行:申立てにより、裁判所又は執行官が行う。
いずれも申立てが必要となる。
(2)保全執行の要件
(保全執行の要件)
第四十三条
保全執行は、保全命令の正本に基づいて実施する。ただし、保全命令に表示された当事者以外の者に対し、又はその者のためにする保全執行は、執行文の付された保全命令の正本に基づいて実施する。
2 保全執行は、債権者に対して保全命令が送達された日から二週間を経過したときは、これをしてはならない。
3 保全執行は、保全命令が債務者に送達される前であっても、これをすることができる。
ポイントとして、保全執行は、債権者に対する保全命令の送達から「2週間以内」に行わなければいけないという点。
2.仮差押えの執行
(1)不動産に対する仮差押えの執行(=登記)
(不動産に対する仮差押えの執行)
第四十七条
民事執行法第四十三条第一項に規定する不動産(同条第二項の規定により不動産とみなされるものを含む。)に対する仮差押えの執行は、仮差押えの登記をする方法又は強制管理の方法により行う。これらの方法は、併用することができる。
2 仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行については、仮差押命令を発した裁判所が、保全執行裁判所として管轄する。
3 仮差押えの登記は、裁判所書記官が嘱託する。
4 強制管理の方法による仮差押えの執行においては、管理人は、次項において準用する民事執行法第百七条第一項の規定により計算した配当等に充てるべき金銭を供託し、その事情を保全執行裁判所に届け出なければならない。
5 民事執行法第四十六条第二項、第四十七条第一項、第四十八条第二項、第五十三条及び第五十四条の規定は仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行について、同法第四十四条、第四十六条第一項、第四十七条第二項、第六項本文及び第七項、第四十八条、第五十三条、第五十四条、第九十三条から第九十三条の三まで、第九十四条から第百四条まで、第百六条並びに第百七条第一項の規定は強制管理の方法による仮差押えの執行について準用する。
不動産に対する仮差押えの執行は、仮差押えの登記をする方法又は強制管理の方法により行う。
また、仮差押えの登記は、裁判所書記官が嘱託により行う。
(2)前提登記は自ら申請する必要がある
たとえば、債務者A所有の不動産に対して債権者が仮差押えをかける場合に、すでにAが死亡しているケースでは、仮差押え登記の前提として、相続登記がなされていることが必要となる。
仮差押命令に記載された債務者と登記義務者が一致しない。
かつ、登記官が処分制限の登記のために職権により所有権移転登記をすることはできない。
なお、仮差押命令の申立てに先立ち、相続登記等を行う必要性はない。
3.執行に先立つ代位登記の代表例
(1)登記名義人表示変更
登記名義人の住所や氏名が、仮差押命令と相違している場合に必要となる。
(2)相続登記
登記名義人は既に死亡しており、登記名義人の共同相続人全員に対して仮差押命令が出されている場合