相続登記における「相続の放棄があったことを証する情報」について

1.昔の質疑応答(登記研究720号205頁【質疑応答7862】)

相続放棄申述受理証明書のみがOKで、相続放棄申述受理通知書は不可としていた。

理由は記載されていないが、詳細な内容は、原典を確認のこと。

なお、比較的時期の近い「登記研究735号65頁【実務の視点】(14)」のおいては・・・。

「実務の視点」での理由付けは非常にわかりやすい。

2.新しい質疑応答(登記研究808号147頁【質疑応答7969】)

照会に対する家庭裁判所からの回答書や相続放棄申述受理通知書もOKとしている。

明確に、昔の質疑応答を上書きしている。

3.新しい質疑応答の背景には先例が

(1)震災復興事業に関連した先例

新しい質疑応答の背景には、つぎの先例がある。

平成26年4月24日民二第265号依命通知

震災復興事業に基づく用地取得において被災自治体が所有権の登記名義人等に代位して相続を原因とする所有権の移転の登記を嘱託する場合に、相続の放棄を行なった相続人がいるときは、相続の放棄があったことを証する情報として、相続放棄申述受理証明書に代え、別添文書(相続放棄等の申述有無についての照会に対する家庭裁判所からの回答)を添付することで、登記手続上差し支えないか

⇒差し支えない。

当時の状況を考えれば「回答書でも良いよね」ということだろう。

(2)相続放棄等の申述有無についての照会

静岡家庭裁判所だが「相続放棄等の申述有無についての照会」については、つぎのとおり。

参考記事(外部リンク)
裁判所のホームページです。裁判例情報、司法統計、裁判手続などに関する情報を掲載しています。

照会すると「被相続人目録」に調査結果が返ってくるが、被相続人については「本籍」「最後の住所」「氏名」「死亡年月日」での特定がされる。
一方で、相続人(照会対象者)については氏名のみが記載事項になっている。

なお、照会に際しては、添付書類として、つぎのものが列挙されている。

  • 被相続人の住民票の除票(本籍地が表示されているもの)
  • 照会者と被相続人の発行から3か月以内の戸籍謄本(照会者と被相続人との関係がわかる戸籍謄本)
  • 照会者の住民票(本籍地が表示されているもの)
  • 返信用封筒と返信用切手
  • 【任意】被相続人と相続人との関係図(※「ご協力ください」とのスタンス)

また、照会につき代理人となれるのは、弁護士だけである。