特別受益について

2021年5月10日

1.生命保険と特別受益について

(1)原則

判例

昭和40年2月2日 最高裁判所第三小法廷判決

要旨

一 養老保険契約において被保険者死亡の場合の保険金受取人が単に「被保険者死亡の場合はその相続人」と指定されたときは、特段の事情のないかぎり、右契約は、被保険者死亡の時における相続人たるべき者を受取人として特に指定したいわゆる「他人のための保険契約」と解するのが相当である。
二 前項の場合には、当該保険金請求権は、保険契約の効力発生と同時に、右相続人たるべき者の固有財産となり、被保険者の遺産より離脱しているものと解すべきである。

 受取人として指定された者の固有財産となるため、遺産を構成しない。

(2)例外

判例

平成16年10月29日最高裁判所第二小法廷決定

要旨

被相続人を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象となる。

 「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が(・・・)到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情」があれば、特別受益として持戻しの対象となりうる。
具体的な基準はさっぱりわからない。

2.死亡退職金と特別受益について

まずは死亡退職金が相続財産に含まれるか判断するため、支給規定の確認が必要。

規定があれば、これを確認し遺産性を判断する。
規定がなければ、支給慣行や支給内容を確認し遺産性を判断する。

なお、賃金の後払い的な性格を有すれば遺産性は肯定される方向に、残された遺族の生活保障としての性格を有すれば遺産性は否定される(受領した遺族の固有財産とされる)方向に判断される。

遺産性が否定されたとしても、上記1(2)のような考え方がとられる可能性がある。この可能性については、まさしく上記1(2)の判断基準に沿って判断されると思われる。

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