民事再生法と不動産登記(ごく初歩的に)

2017年1月12日

1.民事再生法と当事者の地位

民事再生法(平成十一年十二月二十二日法律第二百二十五号)

第三十八条

再生債務者は、再生手続が開始された後も、その業務を遂行し、又はその財産(日本国内にあるかどうかを問わない。第六十六条及び第八十一条第一項において同じ。)を管理し、若しくは処分する権利を有する。

2  再生手続が開始された場合には、再生債務者は、債権者に対し、公平かつ誠実に、前項の権利を行使し、再生手続を追行する義務を負う。

3  前二項の規定は、第六十四条第一項の規定による処分がされた場合には、適用しない。

 以下、断りのない限り条文参照は民事再生法。

破産とは異なり、財産管理権が債務者に残るのが原則。

その前提のうえで「裁判所の許可を要するケース」「監督委員の同意を要するケース」があり、例外として「管財人に管理権が移るケース」がある。

参考:

破産法(平成十六年六月二日法律第七十五号)

第七十八条

破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属する。

第三十四条

破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。

第四十一条

裁判所は、再生手続開始後において、必要があると認めるときは、再生債務者等が次に掲げる行為をするには裁判所の許可を得なければならないものとすることができる。

一  財産の処分

二  財産の譲受け

三  借財

四  第四十九条第一項の規定による契約の解除

五  訴えの提起

六  和解又は仲裁合意(仲裁法 (平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項 に規定する仲裁合意をいう。)

七  権利の放棄

八  共益債権、一般優先債権又は第五十二条に規定する取戻権の承認

九  別除権の目的である財産の受戻し

十  その他裁判所の指定する行為

2  前項の許可を得ないでした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

2.民事再生法と登記のかかわり

民事再生法(平成十一年十二月二十二日法律第二百二十五号)

第十一条

法人である再生債務者について再生手続開始の決定があったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、再生手続開始の登記を再生債務者の本店又は主たる事務所の所在地を管轄する登記所に嘱託しなければならない。ただし、(・・・)。

(・・・)

第一項の規定は、同項の再生債務者につき次に掲げる事由が生じた場合について準用する。

一  再生手続開始の決定の取消し、再生手続廃止又は再生計画認可若しくは不認可の決定の確定

二  再生計画取消しの決定の確定(再生手続終了前である場合に限る。)

三  再生手続終結の決定による再生手続の終結

第十二条

次に掲げる場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、当該保全処分の登記を嘱託しなければならない。

一  再生債務者財産(再生債務者が有する一切の財産をいう。以下同じ。)に属する権利で登記がされたものに関し第三十条第一項(第三十六条第二項において準用する場合を含む。)の規定による保全処分があったとき

二  登記のある権利に関し第百三十四条の二第一項(同条第七項において準用する場合を含む。)又は第百四十二条第一項若しくは第二項の規定による保全処分があったとき

参照:

破産法(平成十六年六月二日法律第七十五号)

第二百五十八条

個人である債務者について破産手続開始の決定があった場合において、次に掲げるときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、破産手続開始の登記を登記所に嘱託しなければならない。

一  当該破産者に関する登記があることを知ったとき。

二  破産財団に属する権利で登記がされたものがあることを知ったとき。

第四十五条

不動産又は船舶に関し再生手続開始前に生じた登記原因に基づき再生手続開始後にされた登記又は不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)第百五条第一号 の規定による仮登記は、再生手続の関係においては、その効力を主張することができない。ただし、登記権利者が再生手続開始の事実を知らないでした登記又は仮登記については、この限りでない。

第四十七条

前二条の規定の適用については、第三十五条第一項の規定による公告(以下「再生手続開始の公告」という。)前においてはその事実を知らなかったものと推定し、再生手続開始の公告後においてはその事実を知っていたものと推定する。

3.監督委員(監督命令)

第五十四条

裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、監督委員による監督を命ずる処分をすることができる。

2  裁判所は、前項の処分(以下「監督命令」という。)をする場合には、当該監督命令において、一人又は数人の監督委員を選任し、かつ、その同意を得なければ再生債務者がすることができない行為を指定しなければならない。

(・・・)

4  第二項に規定する監督委員の同意を得ないでした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

4.管財人(管理命令)

第六十四条

裁判所は、再生債務者(法人である場合に限る。以下この項において同じ。)の財産の管理又は処分が失当であるとき、その他再生債務者の事業の再生のために特に必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続の開始の決定と同時に又はその決定後、再生債務者の業務及び財産に関し、管財人による管理を命ずる処分をすることができる。

2  裁判所は、前項の処分(以下「管理命令」という。)をする場合には、当該管理命令において、一人又は数人の管財人を選任しなければならない。

第六十六条

管理命令が発せられた場合には、再生債務者の業務の遂行並びに財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した管財人に専属する。

5.再生計画認可後の手続

第百八十六条

再生計画認可の決定が確定したときは、再生債務者等は、速やかに、再生計画を遂行しなければならない。

2  前項に規定する場合において、監督委員が選任されているときは、当該監督委員は、再生債務者の再生計画の遂行を監督する。

第百八十八条

裁判所は、再生計画認可の決定が確定したときは、監督委員又は管財人が選任されている場合を除き、再生手続終結の決定をしなければならない。

2  裁判所は、監督委員が選任されている場合において、再生計画が遂行されたとき、又は再生計画認可の決定が確定した後三年を経過したときは、再生債務者若しくは監督委員の申立てにより又は職権で、再生手続終結の決定をしなければならない。

3  裁判所は、管財人が選任されている場合において、再生計画が遂行されたとき、又は再生計画が遂行されることが確実であると認めるに至ったときは、再生債務者若しくは管財人の申立てにより又は職権で、再生手続終結の決定をしなければならない。

(・・・)

4  監督命令及び管理命令は、再生手続終結の決定があったときは、その効力を失う。

第百九十四条

再生計画認可の決定が確定した後に再生計画が遂行される見込みがないことが明らかになったときは、裁判所は、再生債務者等若しくは監督委員の申立てにより又は職権で、再生手続廃止の決定をしなければならない。