株主リストと相続

2017年1月20日

法務省のフローチャートを参考として、考えてみました。

 法務省:「株主リスト」が登記の添付書面となりました

このサイトの

「株主リストに記載すべき株主が死亡した場合の株主リストの記載については,以下を参考にしてください。」のつぎのリンクを参照。

1. いつ時点の株主の氏名等を記載するか

株主総会時(基準日)を基準として、「株主の死亡をしっていたかどうか?」が分岐点となる。
議決権行使に関するリストですので。
そのため、総会終了後に株主に相続があっても、リストの記載には影響しないことになる。

2.基準日時点で相続が開始していたことを知った場合

大きな会社だと「知らない」こともあるのでしょうが、普段関与する会社においては、当然知っている場合に該当するのでしょう。
(逆に、「知らない(わからない)」場合、決議要件を満たさない恐れを考慮しなければならない?)

相続開始を知っていた場合には、遺産共有の状態にあるか、遺産共有の状態が解消されたかどうかが、次の分岐点になる。

共有状態が解消されていない場合には、相続人全員の氏名等を記載する。

3.遺産共有の状態が解消されている場合

この場合には、株の承継者となるために必要な会社との手続きを完了させているかどうかが、次の分岐点となる。 

定款記載例

当会社は、毎事業年度末日の最終の株主名簿に記載又は記録された議決権を有する株主(以下「基準日株主」という。)をもって、その事業年度に関する定時株主総会において権利を行使することができる株主とする。ただし、当該基準日株主の権利を害しない場合には、当会社は、当該基準日後に、株式を取得した者の全部又は一部を、当該定時株主総会において権利を行使することができる株主と定めることができる。

会社が、定款規定の原則に沿って、承継人として権利行使を認めなかった場合には、死亡した株主の氏名等を記載する。この場合にも、その者の株式について議決権行使がなされないのであるから、決議要件に留意。

4.名義書換未了の承継人に権利行使をさせたが、承継人の氏名又は住所の記載が不明

(一部のみ判明)の場合?

法務局のフローチャートに記載されているのですが、具体的にどのようなケースなのか?権利行使させる以上、氏名・住所を確認するように思うのですが。

5.遺産共有状態での議決権行使

まず株主リストについては、一人の欄に、共有している相続人全員の氏名等を記載する。

では、その共有している議決権の行使はどのようになるのか?

会社法(平成十七年七月二十六日法律第八十六号)

第百六条

株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

平成27年2月19日民集69巻1号25頁

「共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま当該株式についての権利が行使された場合において,当該権利の行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは,株式会社が同条ただし書の同意をしても,当該権利の行使は,適法となるものではない」

「共有に属する株式についての議決権の行使は,当該議決権の行使をもって直ちに株式を処分し,又は株式の内容を変更することになるなど特段の事情のない限り,株式の管理に関する行為として,民法252条本文により,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決せられる」

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面