医療法人の役員と営利法人の役員の兼務について

2023年8月8日

1.営利法人の役員の兼務との関係

(1)医療法

参照条文

医療法(昭和二十三年法律第二百五号)

第五十四条 
医療法人は、剰余金の配当をしてはならない。

医療法人を運営することで生じた利益を、医療法人は社員に分配することはできない。

(2)医療法に係る通達

平成24年3月30日医政総発0330第4号/医政指発0330第4号による改正。

『医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について』より引用

第一 開設許可の審査に当たっての確認事項

(・・・)

1 医療機関の開設者に関する確認事項

(1) 医療法第7条に定める開設者とは、医療機関の開設・経営の責任主体であり、原則として営利を目的としない法人又は医師(歯科医業にあっては歯科医師。以下同じ。)である個人であること。

(2) 開設・経営の責任主体とは次の内容を包括的に具備するものであること。

(・・・)

③ 開設者である個人及び当該医療機関の管理者については、原則として当該医療機関の開設・経営上利害関係にある営利法人等の役職員を兼務していないこと。
 ただし、次の場合であって、かつ医療機関の非営利性に影響を与えることがないものであるときは、例外として取り扱うことができることとする。また、営利法人等との取引額が少額である場合も同様とする。
・営利法人等から医療機関が必要とする土地又は建物を賃借する商取引がある場合であって、営利法人等の規模が小さいことにより役職員を第三者に変更することが直ちには困難であること、契約の内容が妥当であると認められることのいずれも満たす場合

開設者である法人の役員については、原則として当該医療機関の開設・経営上利害関係にある営利法人等の役職員を兼務していないこと。
 ただし、次の場合(開設者である法人の役員(監事を除く。)の過半数を超える場合を除く。)であって、かつ医療機関の非営利性に影響を与えることがないものであるときは、例外として取り扱うことができることとする。また、営利法人等との取引額が少額である場合も同様とする。
 ア 営利法人等から物品の購入若しくは賃貸又は役務の提供の商取引がある場合であって、開設者である法人の代表者でないこと、営利法人等の規模が小さいことにより役職員を第三者に変更することが直ちには困難であること、契約の内容が妥当であると認められることのいずれも満たす場合
 イ 営利法人等から法人が必要とする土地又は建物を賃借する商取引がある場合であって、営利法人等の規模が小さいことにより役職員を第三者に変更することが直ちには困難であること、契約の内容が妥当であると認められることのいずれも満たす場合
 ウ 株式会社企業再生支援機構法又は株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法に基づき支援を受ける場合であって、両機構等から事業の再生に関する専門家の派遣を受ける場合(ただし、開設者である法人の代表者とならないこと。)

参考記事(外部リンク)
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/igyoukeiei/tuchi/050203.pdf

厚労省HPよりH24改正後通達の全文

2.通達改正の流れ

もともと「『医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について』(平成5年総第5号・指第9号厚生省健康政策局総務・指導課長連名通知)」という通知があったものの、そこでは、つぎのように規定されていた。

「開設者である個人及び当該医療機関の管理者については、当該医療機関の開設・経営上利害関係にある営利法人等の役職員と兼務している場合は、医療機関の開設・経営に影響を与えることがないものであること。」

これでは規制範囲が不明確であるとして上記H24通達により改正がなされたもの。

3.原則と例外の整理

(1)原則

  • 開設者である個人及び当該医療機関の管理者については、原則として当該医療機関の開設・経営上利害関係にある営利法人等の役職員を兼務していないこと。
  • 開設者である法人の役員については、原則として当該医療機関の開設・経営上利害関係にある営利法人等の役職員を兼務していないこと。

原則は「役職員の兼務」は禁止されている。

(2)例外【医療機関の管理者】

「医療機関の非営利性に影響を与えることがない」という大前提のうえで、つぎの条件を満たすこと。

  • 営利法人等から医療機関が必要とする土地又は建物を賃借する商取引がある場合
  • 営利法人等の規模が小さいことにより役職員を第三者に変更することが直ちには困難
  • 契約の内容が妥当であると認められること

「営利法人等との取引額が少額である場合」も例外となるが、少額がいくらかについては明示されていない。
この点は、医療機関の規模等によって個別に判断(各都道府県において)されるものと考えられる。

(3)例外【開設者法人の役員】

「医療機関の非営利性に影響を与えることがない」「開設者である法人の役員(監事を除く。)の過半数を超える場合でない」という大前提のうえで、つぎの条件を満たすこと。

  • 営利法人等から物品の購入若しくは賃貸又は役務の提供の商取引がある場合であって、
    • 開設者である法人の代表者でないこと、
    • 営利法人等の規模が小さいことにより役職員を第三者に変更することが直ちには困難であること、
    • 契約の内容が妥当であると認められることのいずれも満たす場合
  • 営利法人等から法人が必要とする土地又は建物を賃借する商取引がある場合であって、
    • 営利法人等の規模が小さいことにより役職員を第三者に変更することが直ちには困難であること、
    • 契約の内容が妥当であると認められることのいずれも満たす場合
  • 株式会社企業再生支援機構法又は株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法に基づき支援を受ける場合であって、両機構等から事業の再生に関する専門家の派遣を受ける場合(ただし、開設者である法人の代表者とならないこと。)

「営利法人等との取引額が少額である場合」も例外となるが、少額がいくらかについては明示されていない。
この点は、医療機関の規模等によって個別に判断(各都道府県において)されるものと考えられる。

また3点目(株式会社企業再生支援機構法うんぬん)は、どういうケースか筆者の勉強不足で理解できず。

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