目次
1.LLP(有限責任事業組合)とは
有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)(以下単に「法」といいます。)に基づく組合契約です。
創業を促し、企業同士のジョイント・ベンチャーや専門的な能力を持つ人材の共同事業を振興するために、民法組合の特例として2005年8月に創設されました。
組合契約に基づくものであるため、たとえば株式会社のように、利益分配が出資比率に拘束されたり、期間設計に限定が設けられていたりということがありません。
民法組合とは異なり「有限責任」となっているため、組合契約について登記が必要となっています。
とはいえ「組合契約」ですので、法人格はありません。
くわしくは、こちらの記事を参照。
2.LLP(有限責任事業組合)の組合員の地位を第三者に譲渡できる?
(1)経産省QA
下記は、経済産業省の「有限責任事業組合(LLP)制度」に関するHPです。
このうちの「3.2 Q&A追加『問27(補足).組合員の地位を第三者に譲渡することは可能か。』(2011年7月)」に、組合員の地位を第三者に譲渡することの可否に関する、経済産業省の見解が掲載されています。
経済産業省の見解としては「可」であるとされています。
(2)民法の原則
民法上の組合において、組合員の地位の譲渡は、「組合契約で許容している場合」や「他の組合員の同意がある場合」において可能とされています。
有限責任事業組合についても、同様の解釈になると考えられます。
(対抗するには登記が必要)
そのため、有限責任事業組合においても、「脱退」と「加入」という手続きを経ることなく、他の組合員の持分の増減が生じない形で組合員の地位を譲渡することは可能ということになります。
そうした地位の譲渡が「可」ということになると、地位の譲渡にともなう「登記手続き」がどうなるのか、気になるところです。
3.有限責任事業組合の地位の譲渡と組合登記
以下は、参考文献が確認できなかったため、完全に筆者の私見です。
(1)申請人
組合員からの申請
(2)登記すべき事由
登記原因は不明。
結局「脱退」と「加入」になるのだろうか?
(3)添付書類
地位の譲渡を証する書面のほか、組合契約または組合員全員の同意を証する書面も必要になってくると考える。
添付書類についても、加入脱退の登記と一緒になるのだろうか?
4.有限責任事業組合の地位の譲渡と不動産登記
こちらについては、登記研究に関連記事が掲載されています。
(登記研究 762号 149頁 2011年8月30日 【カウンター相談】(226)など)
まず前提として、つぎのことを確認しておきたいです。
- 有限責任事業組合は、法人格を有しない。
- そのため、有限責任事業組合で不動産を保有(合有)する場合には、組合員全員の名義にて登記をする必要がある。
(「組合員代表」という概念は、有限責任事業組合において存在しない。) - なお、権利能力なき社団に関する取扱いと同様に、組合員である旨の肩書を付すことも認められていない。
「権利能力なき社団」と類似しますが、「委任構成」が認められず、「全員の名義」という点が特徴です。
(1)申請人
譲受人と譲渡人の共同申請。
(2)登記すべき事由
年月日「有限責任事業組合からの脱退」
(3)添付書類
つぎのような書類が考えられるのでしょうか(私見)。
- 登記原因証明情報(当事者間で地位の譲渡がなされたこと。)
- 組合契約書または組合員全員の同意書
(地位の譲渡が有効になされたことを確認するため。同意書による場合には印鑑証明書が必要になるか否か・・。) - 登記識別情報
- 譲渡人の印鑑証明書