目次
1.「資本金等の額の減少」(減資)と基本となる条文
(1)資本金等の額の減少における債権者異議手続きについて
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(債権者の異議)
第四百四十九条
株式会社が資本金又は準備金(以下この条において「資本金等」という。)の額を減少する場合(減少する準備金の額の全部を資本金とする場合を除く。)には、当該株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、資本金等の額の減少について異議を述べることができる。ただし、準備金の額のみを減少する場合であって、次のいずれにも該当するときは、この限りでない。
一 定時株主総会において前条第一項各号に掲げる事項を定めること。
二 前条第一項第一号の額が前号の定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。
2 前項の規定により株式会社の債権者が異議を述べることができる場合には、当該株式会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第三号の期間は、一箇月を下ることができない。
一 当該資本金等の額の減少の内容
二 当該株式会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
三 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
3 前項の規定にかかわらず、株式会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。
4 債権者が第二項第三号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該資本金等の額の減少について承認をしたものとみなす。
5 債権者が第二項第三号の期間内に異議を述べたときは、株式会社は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等(信託会社及び信託業務を営む金融機関(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(昭和十八年法律第四十三号)第一条第一項の認可を受けた金融機関をいう。)をいう。以下同じ。)に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該資本金等の額の減少をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。
6 次の各号に掲げるものは、当該各号に定める日にその効力を生ずる。ただし、第二項から前項までの規定による手続が終了していないときは、この限りでない。
一 資本金の額の減少 第四百四十七条第一項第三号の日
二 準備金の額の減少 前条第一項第三号の日
7 株式会社は、前項各号に定める日前は、いつでも当該日を変更することができる。
ということで2項より、つぎの事項を記載する必要があります。
- 当該資本金等の額の減少の内容
- 当該株式会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
- 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
このうち2点目については、項を改めるとして、1点目については具体的に何を記載すれば良いのか?
(2)「当該資本金等の額の減少の内容」とは?
官報販売所のひな形を見てみると、つぎのような事柄を記載している。
- 資本金(または資本準備金。)の額を〇円減少し〇円とすること
- 効力発生日は〇年〇月〇日であること
- 株主総会の決議は〇年〇月〇日に終了(または予定)していること
- 異議のある債権者は、本公告掲載の翌日から一箇月以内に申し出すべきこと
- 計算書類に関する事項
実際に掲載された公告を見てみると、減少額だけを記載していたり、効力発生日等を記載していないものもある。
一番シンプルなものだと、つぎのようなものを見つけた。
- 資本金(または資本準備金。)の額を〇円減少すること
- 異議のある債権者は、本公告掲載の翌日から一箇月以内に申し出すべきこと
- 計算書類に関する事項
悩む・・・
(ひな形の備考欄に「減少する金額の一部でも「資本準備金」とするときは、その旨及びその額を記載する必要」というのも悩む・・・)
(補足)「減少する金額の一部でも『資本準備金』とするときは、その旨及びその額を記載する必要」について
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(資本金の額の減少)
第四百四十七条
株式会社は、資本金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 減少する資本金の額
二 減少する資本金の額の全部又は一部を準備金とするときは、その旨及び準備金とする額
三 資本金の額の減少がその効力を生ずる日
(・・・)
「準備金」ってどこで定義されているのかと確認したが、つぎの条文であっているのだろうか?
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(資本金の額及び準備金の額)
第四百四十五条
株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。
2 前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。
3 前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。
4 剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に十分の一を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金(以下「準備金」と総称する。)として計上しなければならない。
ただし、資本金から利益準備金に異動はできないので「資本準備金とするときは」という読み替えをするのか?不安で仕方ないが、そんな回りくどい記載をする必要がある?
会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)
(資本準備金の額)
第二十六条
株式会社の資本準備金の額は、第一款【株式の交付等】及び第二款【剰余金の配当】並びに第四節【吸収合併等】及び第五節の二【報酬等としての株式交付】に定めるところのほか、次の各号に掲げる場合に限り、当該各号に定める額が増加するものとする。
一 法第四百四十七条の規定により資本金の額を減少する場合(同条第一項第二号に掲げる事項を定めた場合に限る。) 同号の準備金とする額に相当する額
二 法第四百五十一条の規定により剰余金の額を減少する場合 同条第一項第一号の額(その他資本剰余金に係る額に限る。)に相当する額
2 株式会社の資本準備金の額は、法第四百四十八条の規定による場合に限り、同条第一項第一号の額(資本準備金に係る額に限る。)に相当する額が減少するものとする。この場合においては、前条第二項後段の規定を準用する。(利益準備金の額)
第二十八条
株式会社の利益準備金の額は、第二款及び第四節に定めるところのほか、法第四百五十一条の規定により剰余金の額を減少する場合に限り、同条第一項第一号の額(その他利益剰余金に係る額に限る。)に相当する額が増加するものとする。
2 株式会社の利益準備金の額は、法第四百四十八条の規定による場合に限り、同条第一項第一号の額(利益準備金に係る額に限る。)に相当する額が減少するものとする。
教科書をみると「準備金(資本準備金に限る。)」って補足してある!!
(参照:田中 亘『会社法 第3版』463頁(東京大学出版2012))
2.計算書類に関する事項
(1)条文
会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)
(計算書類に関する事項)
第百五十二条
法第四百四十九条第二項第二号に規定する法務省令で定めるものは、同項の規定による公告の日又は同項の規定による催告の日のいずれか早い日における次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。
一 最終事業年度に係る貸借対照表又はその要旨につき公告対象会社(法第四百四十九条第二項第二号の株式会社をいう。以下この条において同じ。)が法第四百四十条第一項又は第二項の規定による公告をしている場合 次に掲げるもの
イ 官報で公告をしているときは、当該官報の日付及び当該公告が掲載されている頁
ロ 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙で公告をしているときは、当該日刊新聞紙の名称、日付及び当該公告が掲載されている頁
ハ 電子公告により公告をしているときは、法第九百十一条第三項第二十八号イに掲げる事項
二 最終事業年度に係る貸借対照表につき公告対象会社が法第四百四十条第三項に規定する措置をとっている場合 法第九百十一条第三項第二十六号に掲げる事項
三 公告対象会社が法第四百四十条第四項に規定する株式会社である場合において、当該株式会社が金融商品取引法第二十四条第一項の規定により最終事業年度に係る有価証券報告書を提出している場合 その旨
四 公告対象会社が会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第八十七号)第二十八条の規定により法第四百四十条の規定が適用されないものである場合 その旨
五 公告対象会社につき最終事業年度がない場合 その旨
六 前各号に掲げる場合以外の場合 前編第二章の規定による最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容
公告の日又は同項の規定による催告の日のいずれか早い日における、最終事業年度に係る貸借対照表等とういことになる。
(2)条文を分解
1号は「公告をしている場合」について。
2・3号は「公告以外の方法で開示している場合」について。
4号は、「公告等に関する規定の適用除外」を受けている特例有限会社について。
5号は、「最終事業年度がない場合」について。
6号は、それ以外の場合について。(最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容を掲載すべし!)
3.まとめ
悩ましい。