目次
1.申請人
(1)単独申請
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)
(判決による登記等)
第六十三条
第六十条【共同申請】、第六十五条又は第八十九条第一項(同条第二項(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)及び第九十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、これらの規定により申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる。
2 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。
単独申請である。
要件は、つぎのとおり。
- 申請を共同してしなければならない者の一方に
- 登記手続きをすべきことを命じる
- 確定判決
以上を満たすと、「申請を共同してしなければならない他方」が、判決に基づき、単独で申請をすることができる。
(2)登記識別情報は不要
(登記識別情報の提供)
第二十二条
登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合その他登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合には、申請人は、その申請情報と併せて登記義務者(政令で定める登記の申請にあっては、登記名義人。次条第一項、第二項及び第四項各号において同じ。)の登記識別情報を提供しなければならない。ただし、前条ただし書の規定により登記識別情報が通知されなかった場合その他の申請人が登記識別情報を提供することができないことにつき正当な理由がある場合は、この限りでない。
不動産登記令(平成十六年政令第三百七十九号)
(登記名義人が登記識別情報を提供しなければならない登記等)
第八条
法第二十二条の政令で定める登記は、次のとおりとする。ただし、確定判決による登記を除く。
一 所有権の登記がある土地の合筆の登記
二 所有権の登記がある建物の合体による登記等
三 所有権の登記がある建物の合併の登記
四 共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記
五 所有権の移転の登記がない場合における所有権の登記の抹消
六 質権又は抵当権の順位の変更の登記
七 民法第三百九十八条の十四第一項ただし書(同法第三百六十一条において準用する場合を含む。)の定めの登記
八 信託法(平成十八年法律第百八号)第三条第三号に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記
九 仮登記の登記名義人が単独で申請する仮登記の抹消
2 (・・・)
法22条により、登記識別情報の提供は不要。
2.登記原因
(1)主文・理由に記載された原因・年月日
よく問題になるところ。
主文・理由の記載は当然ながら裁判官によるものなので、なおさらコントロールが難しいように思う。
(抹消登記の主文としては、基本的に「記載しない」?参照:司法研修所編『10訂民事判決起案の手引(補訂)』法曹会14ページ)
売買を原因として所有権移転登記手続をなすべき旨を命ずる判決をなす場合、その売買の日附は必ずしも主文に表示するを要せず、理由中にこれが明示されておれば足るものと解するのが相当であり、単にその表示が主文にないだけの理由で、所論のように登記が不能となり、執行力を欠除するに至るものとは解することはできない(まして本件においては上告人から被上告人に対する所有権の移転は将来の未定の日時にかかるものであるからその日時を表示することは不能でさえある)。
最判昭和32年9月17日(民集11巻9号1555頁)
妨害排除請求権によって抵当権が除かれた場合には「原因・日付」って何になるのか?
(それこそ「年月日判決」がふさわしいような・・・。)。
(2)主文・理由に記載がない場合
よく見る先例は下記のとおり。
- 昭和29年5月8日民甲第938号回答
判決書に登記すべき権利変動の原因の記載があるときは、その原因による。
記載がないときには、「判決」とすべき! - 平成12年1月5日民三第16号民事局第三課長回答
被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の土地につき、別紙登記目録記載の抵当権設定登記の抹消登記手続きをせよ」でOKでしょうか?
⇒「被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の土地につき、別紙登記目録記載の抵当権設定登記の令和〇年〇月〇日XXを原因とする抹消登記手続きをせよ」が相当
3.登記記録と当事者の相違
(1)所有権登記名義人
こちらは変更登記が必要と思われるが、明示した文献を確認できなかった(自明?)。
(2)抵当権登記名義人
共同申請による抹消登記申請においても、抵当権の登記名義人の住所変更の省略は認められている。
抵当権(根抵当権)等の所有権以外の権利の登記の抹消を申請する場合において、当該権利の登記名義人の氏名又は住所に変更を生じたが、その名義人表示の変更の登記が未了のため、申請書に記載すべき登記義務者の表示が登記簿上の表示と符合しないときは、その変更の事実を証する書面を添付すれば、当該権利の登記名義人が個人又は一般の会社等の法人である場合でも、その名義人表示の変更の登記を省略しても差し支えない。
昭和31年10月17日民事甲第2370号通達
おって、登記名義人の表示の更正の登記をなすべき場合も、同様に取り扱って差し支えない。
同じことは判決による登記にも言えるだろう。
では、判決のおいて「登記記録上の住所と現住所とが併記されている場合」に、当該判決は「変更の事実を証する書面」に該当するか?
質疑応答では肯定されている。(参照:登記研究764・81頁以下。)