目次
1.相続登記の添付情報に関連する法令
(1)不動産登記法
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)
(政令への委任)
第二十六条
この章に定めるもののほか、申請情報の提供の方法並びに申請情報と併せて提供することが必要な情報及びその提供の方法その他の登記申請の手続に関し必要な事項は、政令で定める。
(登記原因証明情報の提供)
第六十一条
権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。
(判決による登記等)
第六十三条
(・・・)
2 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。
3 遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、第六十条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。
権利に関する登記を申請する場合 = 登記原因証明情報の提供が必要。
相続登記(相続を登記原因とする所有権移転登記)についても、登記原因証明情報の提供が必要となる。
なお、登記申請は共同申請が原則であるが、相続による権利の移転登記にあっては、登記権利者が単独で申請することができる。
(2)不動産登記令
不動産登記令(平成十六年政令第三百七十九号)
(添付情報)
第七条
登記の申請をする場合には、次に掲げる情報をその申請情報と併せて登記所に提供しなければならない。
(・・・)
二 代理人によって登記を申請するとき(法務省令で定める場合を除く。)は、当該代理人の権限を証する情報
三 民法第四百二十三条その他の法令の規定により他人に代わって登記を申請するときは、代位原因を証する情報
(・・・)
五 権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる情報
イ 法第六十二条の規定により登記を申請するときは、相続その他の一般承継があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)
ロ 登記原因を証する情報。ただし、次の(1)又は(2)に掲げる場合にあっては当該(1)又は(2)に定めるものに限るものとし、別表の登記欄に掲げる登記を申請する場合(次の(1)又は(2)に掲げる場合を除く。)にあっては同表の添付情報欄に規定するところによる。
(1) 法第六十三条第一項に規定する確定判決による登記を申請するとき 執行力のある確定判決の判決書の正本(執行力のある確定判決と同一の効力を有するものの正本を含む。以下同じ。)
(2) 法第百八条に規定する仮登記を命ずる処分があり、法第百七条第一項の規定による仮登記を申請するとき 当該仮登記を命ずる処分の決定書の正本
(・・・)
六 前各号に掲げるもののほか、別表の登記欄に掲げる登記を申請するときは、同表の添付情報欄に掲げる情報
別表(第三条、第七条関係)
項 | 登記 | 申請情報 | 添付情報 |
二十二 | 法第六十三条第二項に規定する相続又は法人の合併による権利の移転の登記 | 相続又は法人の合併を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)及びその他の登記原因を証する情報 | |
三十 | 所有権の移転の登記 | イ 登記原因を証する情報 ロ 法第六十三条第三項の規定により登記権利者が単独で申請するときは、相続があったことを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)及び遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)によって所有権を取得したことを証する情報 ハ 登記名義人となる者の住所を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報) |
まず、相続による権利の移転登記にあっては、相続関係を証する情報を提供しなければならない。
かつ、この情報は「市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報」でなければいけない。
基本的には、戸籍が該当し、その他には法定相続情報一覧図も挙げることができる。
さらに所有権の移転登記にあっては「所有権を取得したことを証する情報」も必要となる。
2.登記原因証明情報(遺産分割協議に基づく)
(1)相続関係を証する情報
- 登記名義人が死亡したことを証する情報
- 被相続人の相続関係を証する情報
- 相続人の資格を証する情報
(被相続人が死亡した時点において相続人が生存していたことを証明する。) - (その他、相続放棄・特別受益・相続分譲渡などがあった場合には、それらを証する情報)
戸籍一式など。
(2)所有権を取得したことを証する情報
- 遺産分割協議書
- 上記協議書に相続人が押印した印鑑について印鑑証明書
遺産分割協議書において所有権を取得したとされる相続人と、申請人の同一性については、「相続人の資格を証する情報」と「印鑑証明書」において氏名・生年月日が一致すればOKとされている。
(たとえば「本籍」=「住所」を、住民票の写しなどで繋げる必要はない。)
(参照:昭和43年3月28日民三114号課長回答)
(そう考えると、住民票の写しを添付するときに本籍に関する記載は必須でないということか?)
(3)印鑑証明書について
別記事を参照のこと。
3.住所証明情報
(1)所有権登記名義人と被相続人の同一性を証する書面
ときに悩みの種となるもの。
根拠としては、上記「ハ」よりは「ロ」なんだろか?
(2)新たに登記名義人となる相続人の住所を証する情報
相続人の住民票の写しとか。
4.相続登記と原本還付
(1)原則
不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)
(添付書面の原本の還付請求)
第五十五条
書面申請をした申請人は、申請書の添付書面(磁気ディスクを除く。)の原本の還付を請求することができる。ただし、令第十六条【申請情報を記載した書面への記名押印等】第二項、第十八条【代理人の権限を証する情報を記載した書面への記名押印等】第二項若しくは第十九条【承諾を証する情報を記載した書面への記名押印】第二項又はこの省令第四十八条【申請書に印鑑証明書の添付を要しない場合】第三号(第五十条第二項において準用する場合を含む。)若しくは第四十九条【委任状への記名押印等の特例】第二項第三号の印鑑に関する証明書及び当該申請のためにのみ作成された委任状その他の書面については、この限りでない。
2 前項本文の規定により原本の還付を請求する申請人は、原本と相違ない旨を記載した謄本を提出しなければならない。
(・・・)
(2)相続関係説明図
原則的には、原本と相違ない旨を記載した謄本を提出しなければならない。
しかし、戸籍の束を提出するときに、各戸籍の謄本を提出するのは非常に面倒。
そこで「相続関係説明図」が登場する。
第1 法の施行に伴う登記事務の取扱い
七 原本還付の取扱い
相続による権利の移転の登記等における添付書面の原本の還付を請求する場合において、いわゆる相続関係説明図が提出されたときは、登記原因証明情報のうち、戸籍謄本又は抄本及び除籍謄本に限り、当該相続関係説明図をこれらの書面の謄本として取り扱って差し支えない。
平成17年2月25日民二457号民事局長通達
「いわゆる相続関係説明図」については「昭和39年11月21日民甲3749号局長通達」を参照。
(3)法定相続情報一覧図
法定相続情報一覧図についても、原本還付の対象となる。
なお、上記の相続関係説明図が提出されたときは、当該説明図が「一覧図の写しの謄本」となる。
第2 改正省令の施行に伴う事務の取扱い
2 不動産登記の申請等における添付情報の取扱い
(・・・)
平成29年4月17日民二292号通達
なお、申請人から添付した一覧図の写しの原本還付の請求があった場合は、規則55条の規定により原本を還付することができる。この場合に、いわゆる相続関係説明図が提出されたときは、当該相続関係説明図を一覧図の写しの謄本として取り扱い、一覧図の写しについては還付することとして差し支えない。
法定相続情報一覧図と遺産分割協議書を提出するときに、相続関係説明図を提出する必要があるか否かについては、一覧図施行に伴う解説(登記研究831号25頁)に言及があった。