1.任期計算の起算点は?
(1)条文
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(取締役の任期)
第三百三十二条
取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
2 前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。
(・・・)
(2)整理
役員の任期計算の起算点は、上記の通り「選任時」である。
【参考:相澤 哲 (著), 郡谷 大輔 (著), 葉玉 匡美 (著)『論点解説 新・会社法―千問の道標』商事法務 (2006/6/1)P.285】
【なお、筧 康生 (編集), 神﨑 満治郎 (編集), 土手 敏行 (編集)『詳解商業登記【全訂第3版】』きんざい; 全訂第3版 (2022/2/3)上巻P.761以下。】
【なお、松井 信憲 (著)『商業登記ハンドブック〔第3版〕』商事法務; 第3版 (2015/5/20)P.437以下。】
選任されて即時就任承諾をしたケースであれば、混乱は生じないが、つぎのようなケースでは・・・。
(※増員補欠規定の適用の有無に留意。)
6月28日開催の株主総会において、取締役Aを選任した。
取締役Aは、7月1日に就任承諾をし、取締役に就任した。
ちなみに「取締役の変更」における登記は、つぎのとおり。
商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)
(取締役等の変更の登記)
第五十四条
取締役、監査役、代表取締役又は特別取締役(監査等委員会設置会社にあつては監査等委員である取締役若しくはそれ以外の取締役、代表取締役又は特別取締役、指名委員会等設置会社にあつては取締役、委員(指名委員会、監査委員会又は報酬委員会の委員をいう。)、執行役又は代表執行役)の就任による変更の登記の申請書には、就任を承諾したことを証する書面を添付しなければならない。
(・・・)
4 第一項又は第二項に規定する者の退任による変更の登記の申請書には、これを証する書面を添付しなければならない。
これにより平成18年4月26日民商第1110号依命通知P.60以下にて「就任の日」や「退任の日」が登記事項になる。
2.設立後最初の任期の起算点は?
(1)ケース
6月28日に、発起人全員の合意により定款(商号:ぬまづ株式会社)を定め、同日公証人の認証を受け、さらに同日出資の履行がなされた。
定款において、つぎのとおり定められた。
- 設立時取締役はA。
- 事業年度は毎年7月1日から翌年6月30日。
Aは、6月29日に就任承諾をした。
ぬまづ株式会社は、7月1日に設立登記申請を行い、成立した。
(2)整理
会社法(平成十七年法律第八十六号)
(設立時役員等の選任)
第三十八条
発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役(株式会社の設立に際して取締役となる者をいう。以下同じ。)を選任しなければならない。
(・・・)
4 定款で設立時取締役(・・・)、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人として定められた者は、出資の履行が完了した時に、それぞれ設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人に選任されたものとみなす。
ここでも「選任」からなのだろうか?さすがに「設立日」からなのだろうか?
(あるいは、何か条文を見落としているのだろうか?)
3.特例有限会社の株式会社への移行
(1)条文
会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第八十七号)
(株式会社への商号変更)
第四十五条
特例有限会社は、第三条第一項の規定にかかわらず、定款を変更してその商号中に株式会社という文字を用いる商号の変更をすることができる。
2 前項の規定による定款の変更は、次条の登記(本店の所在地におけるものに限る。)をすることによって、その効力を生ずる。
(特例有限会社の通常の株式会社への移行の登記)
第四十六条
特例有限会社が前条第一項の規定による定款の変更をする株主総会の決議をしたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、当該特例有限会社については解散の登記をし、同項の商号の変更後の株式会社については設立の登記をしなければならない。この場合においては、会社法第九百十五条第一項の規定は、適用しない。
(2)整理
登記としては「解散」「設立」の登記を行うが、実体的には「定款の変更による商号の変更」(と適用される法令が完全に会社法となる)。
会社法による任期規定の適用を受けることになるが、既存の取締役については、通常の株式会社における「任期の変更」と同様の考え方となる。
移行時の取締役を「予選」した場合には、移行時の取締役の任期の起算点は、やはり「選任」時になるのだろうか?
定款附則で取締役を定めた場合には??