相続登記(遺産分割協議に基づく)と印鑑証明書

2023年5月13日

1.相続登記と添付書類

添付書類全般については、次の記事を参照。

【参照記事:相続登記(遺産分割協議に基づく)と添付書類】

2.印鑑証明書の添付根拠

(1)昭和30年4月23日民甲742号通達

【要約】

(1)遺産分割協議書を添付して、相続による所有権移転登記申請があった場合に、その遺産分割協議者の印鑑証明書の提出を要しますか?
⇒要する!

(2)相続分がない旨の証明書を添付して、相続による所有権移転登記申請があった場合に、その証明者の印鑑証明書の提出を要しますか?
⇒要する!

昭和30年4月23日民甲742号通達

戸籍謄本等によって確認できる法定相続分を上書きするような書面であるから、遺産分割協議書や特別受益証明書については、その押印にかかる印鑑について印鑑証明書の添付が必要とされている。

そのうち、電子証明書でも良くなるのだろうか。

(2)有効期限

上記印鑑証明書は、あくまで登記原因証明情報を構成するものにすぎない。
従って、つぎのような制限を受けない。

  • 有効期限は3カ月でなくてもOK。
    【参照:登記研究96号41頁。なお文献によっては、上記昭和30年先例を引用するものがあるが、当該先例は有効期限には言及していないように思われる・・。】
  • 原本還付も可能。

下記条文も参照のこと。

参照条文

不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)

(添付書面の原本の還付請求)
第五十五条 
書面申請をした申請人は、申請書の添付書面(磁気ディスクを除く。)の原本の還付を請求することができる。ただし、令第十六条第二項、第十八条第二項若しくは第十九条第二項又はこの省令第四十八条第三号(第五十条第二項において準用する場合を含む。)若しくは第四十九条第二項第三号の印鑑に関する証明書及び当該申請のためにのみ作成された委任状その他の書面については、この限りでない。
(・・・)

不動産登記令(平成十六年政令第三百七十九号)

(承諾を証する情報を記載した書面への記名押印等)
第十九条 
第七条第一項第五号ハ若しくは第六号の規定又はその他の法令の規定により申請情報と併せて提供しなければならない同意又は承諾を証する情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、その作成者が記名押印しなければならない。
2 前項の書面には、官庁又は公署の作成に係る場合その他法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。

3.印鑑証明書が添付できないとき

(1)印鑑証明書の交付を受ける前に相続人が死亡してしまった!

被相続人Aが死亡し、相続人はB及びCであった。

B及びCは、遺産分割協議を行い「不動産はBが取得する」旨の遺産分割協議書を作成した。
当該協議書には、B及びCが各自の実印を押印していた。

ところが、Cから印鑑証明書の交付を受ける前に、Cが死亡してしまった。

この場合、相続登記にあたり、Cの印鑑証明書を添付することができないがどうすれば良いのか?

(2)遺産分割協議者死亡後の遺産分割による登記の申請について(質疑応答)

登記研究220号72頁を参照。

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